2-2 ルナと覚醒の儀 いかにも呪われていそうな錆びた剣
掘り出し物を探すのは異世界もののテンプレ、それを私は否定するつもりがない。現実にもそういうのって結構あるからね。
とは言えルナがこうも簡単に変なのを見つけれたのはまさにシックスセンス、勘によるものだ。
それでは本編をどうぞ~
謎の魔物メロンパンマンの頭の丸焼きを美味く頂いたあと、どう見ても不味い紫色の変な泡がポコポコと出続ける謎のスープや謎の虫の魔物の肉といったゲテモノ料理を制覇したルナ達。
「~~~」満足気に他の店を見回すルナ
「気持ち悪い、でもお美味しい、うう、でもでも、もしかして変なのって私なの?……うっ頭が」外表やら原材料やらのことを考えてブツブツと異世界に旅立ったエル
「お美味しかった~」気にせずに食べて、空かせた腹を満たして大満足のティナ
「にゃああ~~」ちゃっかり謎の魚の揚げ物を食べてふにゃふにゃとルナの頭の上でぐにゃりと潰るように休むシロ。
こうして見るとエルのほうがおかしく見えるかもしれないが、実際のところそんな謎料理を食べるものなどカルデアであってもそういない。心配するな、可哀想なエルよ、変なのはやっぱりルナたちの方だ。君は自分まで変なやつ扱いを受けている現状を心配するか、未来の自分がほんとにルナに染まって変なやつとなるであろう事に憂慮すべきだ。……手遅れかもしれないが、ね
さて、エルが異世界に旅立った以上、やっぱり屋台巡りのリーダーはルナである。
彼女が選んだ謎料理の数々は皆、曰く付きとか変なやつとか外表がやばいやらのばっかりであるが、そのクオリティは間違いなく最高のものばかり。でも同じレベルの、変じゃないやつもちゃんといるはずなのにその選択肢である。
そこからわかるように、彼女は好奇心から変なのをわざと選んでいるのである。勿論、センスがいいので全部ちゃんとしたものだが、それでも変なのをわざと選んでいるのである。
そんな彼女がリーダーのままだという時点でエルの受難はまだまだ続くのは火を見るよりも明らか、というかそれが嫌ならさっさと立ち直るべきだといい加減気づいた方がいい。
そんなルナ達が次に訪れた屋台は意外な事にかなりボロいやつだ。貴族のメンツにも関わるはずなのに、そんなボロい店を出している、それが意味する事はまあ、お察しの通り、没落貴族の店、しかもよく見れば、その屋台が売っているのはどう見てもガラクタ
察するにオークションどころか貴族御用の店に売り出すことすらできない物を処分する気だろう。
そして以外にもその思惑はちゃんと達成されているようで、旅人によって状況の良いものは一瞬で売り切れた。今なお残っているガラクタとは詰まる所ほんとにゴミばっかり。
「ええ、ちょっとルナ、あんな店で何を買うのよ~」
迷いなくまっすぐに店に入るルナに文句を言いながらもしっかりと着いていくエル。どうせ言っても効かないのは何時も通りでしょうとすでに諦め気味なのに一応はと止めに入るあたり、エルらしい。
そんな彼女が屋台ついた時に見たのはいかにも呪われていそうな錆びた剣を手に持っているルナである。
「これ、いくら?」
店長ですらそんなもん売れないだろと思っているようなまさにいかにもの剣を躊躇いもなく手に取るルナに興味深く窺っている者どももあんぐりと開いた口が塞がらない様だ。
「え、あ、おう、そのガラクタなら、そうだな、五百カルテでどうだ?」因みに100カルテで豚のブロック肉一キロぐらい買えるので、ガラクタとしては高すぎる値段だ。
「百カルテで」
迷いなく値切りしたルナ
「おいおいおい、それだと廃鉄として売ったほうが高いじゃん
流石にそれは安すぎるぜ」
「百二十」
「ダメだ、三百」
「百八十」
「二百五十、これ以上はだめだ」
「二百二十」
「あああ、くそ
二百四十!」
「ん」じゃらりと払うルナ、どう見ても店主の限界を見切ってやっている。実際のところ二百三十までなら抑えれたでしょうが初めてにしては上出来なんてもんじゃないでしょう。
まだ事態を飲み込めていないエルが慌てふためく隣、ルナはそのまま隣の屋台のおっさんから百カルテでそれなりに良い巻布を買って巻いた。
これでルナのお小遣いが殆ど尽きた事になる。
「ルナの馬鹿あああ~」
「うるさい」
まだまだ文句を言っているエルに顔を顰めるルナ、でもその気分はルンルンとしている。
今彼女の手には最後に残ったお小遣いで買ったリンナへのお土産がある。見た目は今日買ったものの中ではメロンパンマンの頭に次ぐまともさで、たこ焼きの姿をしている。ただしその中身はタコの代わりにマギナステンタクルというピンク色の触手の魔物でなければね。
そんなものを買ってどうすると怒っているエルはというとルナのオススメで可愛らしい銀細工を買った。どうやら他人の金を変なのに使わせる程ルナもひどくはないようだ。気づきにくいがその銀細工には加護がついており、邪なるものから身を守ってくれる優れ物。本来なら数十倍の値段がつくでしょう。
ティナはというと同じくルナのオススメで杖の代わりとして使える少し地味の髪飾りを買った。本来なら数十倍どころか数百倍以上の値段がする隠蔽杖だが、毒属性オンリーのせいで杖であることすらも殆どの者が知らないからこそ普通の髪飾りとして買えたのである。その地味さから思うにもともとは暗殺者御用のオーダーメイド品であろう。
後々試してみたティナ曰く、普通の杖の数倍も効率が良いものであり、それこそそこら辺の三等貴族家の家宝並みの効率に加えてその隠蔽性、もしかすると二等貴族の家宝レベルかもしれない。多分、もとの使い手はそれこそ王族とかすら暗殺したことのある凄腕であろう。
帰宅したルナたちを迎えたのはすでに綺麗なドレスに着替えたリンナ。その若作りの顔も相まってまるで10代後半の少女と女性の間にあるようだ。
「お母様、お土産」「ちょ!」
「あら、これは……もしかしてマギナステンタクルのたこ焼きかしら?よくこれを見つけたわね~ありがとう、ルナ」
ポカン
「あら、どうしたのエル?もしかして体の調子でも悪いのかしら?」
どうやらルナのゲテモノ好きはリンナの血によるもののようだ。
ポカンとするエルは又もや自分に聞く(もしかしておかしいのは私なの?)
「エル?うんん熱はないようだし、もしかして単に疲れただけかしら?
エル?エル!」
「はっな、なになに?」
「ああ、良かったーエル、もしかしてもう疲れたの?だったらあとちょっと時間があるから休んで見る?」
「い、いいえ、私は大丈夫です、お母様。」
「そう、もし疲れたらすぐに言ってね~」
「はぃ」
元気に応えようとしてもぐもぐとマギナステンタクルのたこ焼きを食べ始めるリンナに勢いを削がれたエルであった。このとき彼女はまだ知らない、まさか自分もこうなると言う未来を、彼女はまだ知らない。
こうしてルナがいかにも呪われていそうな錆びた剣を部屋に置いてきて、二人はこの日のために用意したドレスに着替えた。
覚醒の儀までもう少し。
その親にしてその子あり、学生時代リンナの大好物の一つがマギナステンタクルの塩焼きだったりする。
大きな触手を笑いながら捌く興奮してちょっぴり赤面の美少女、なんともあれな画面だった。
マギナステンタクルは栄養がほんとに良いよ、ナマコよりも栄養があって美味しい。
でも強い上に売れないと一般的な冒険者にとってはハズレ。
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