将軍暗殺計画!?
更新が遅れて申し訳ありませんでした。
もしかしたら暫くこのペースになるかもしれません。
それでもよろしくお願いします。
第1章会見
岐阜城 広間
信長は家臣達を広間に集めた。
信長は辺りを見回しコクりと頷くと
「皆、俺が上洛話を持ちかけて随分とだった、皆も首を長くしてその時を今か今かと待っていることと思う。そんなお前達に朗報だ!俺は遂に上洛への決心を固めた!」
『おぉーっ!』
と言う歓声の声があがる。
そこに勝家が
「して時期は?」
と厳つい声で尋ねる。
信長は
「直ぐだ、まず明日立政寺で会見を行う」
と言った。
勝家は
「承知致しました」
と言い頭を下げた。
信長は皆に向き直り
「皆、形骸化しているとは言え将軍だ、粗相の無いようしっかりと準備しろ!」
と命じた。
さらっと、とんでも無いこと言ってやがる。
俺は信長にそんな思いを抱きつつ頭を下げた。
家臣達も
『はっ!』
と言って頭を下げた。
岐阜城下 藤吉郎宅
評定が終わり俺は真っ直ぐ家に帰った。
当面は俺に仕事は無い、その為暇を持て余して
いる。
今もやることも無さげに縁側でボーッと外を見ている。
そんな俺を時折ねねは邪魔そう睨んでくるが気にしない。
その時だった。
トントン
戸を叩く音が聞こえる。
ねねが家事を中断し迷惑そうに戸を開けた。
そこには雄二が立っていた。
雄二は
「よぅっ!暇か?」
と呑気に聞いてくる。
ねねは
「何っ?」
と雄二を睨み付けている。
雄二は
「え、いや藤吉郎に仕事が…」
と怯えぎみだ。
俺は
「仕事?」
と言って立ち上がった。
雄二は
「あぁ、それも異次元のお仕事だ」
とニヤニヤしている。
俺は
「詳しく聞かせて貰いましょうか」
と言って中に入るよう促した。
雄二は部屋に入り囲炉裏の前に座った。
俺も雄二と向かい合うように座ると隣にねねが座った。
奇跡的機嫌は回復したようだ。
俺は話を切り出した。
「仕事ってどんな事だ?」
「結構ヤバイやつだ。明日信長様が立政寺で将軍と会見するだろ、そこで将軍を暗殺しようしてる輩がいるらしい」
「しょ、将軍暗殺!?」
俺は声を荒げた。
そこにねねが
「だ、誰が?」
と聞いた。
雄二は
「その人物が悪いんだ。そいつはこの時代の人間じゃない」
と言った。
俺は
「タイムトラベラーか?」
「あぁ、目的はわかんねーが止めないと一大事だ」
「わかってる、んで、どうやって?」
「生憎俺は当日、信長と将軍の掛け合わせで暇がない。だからお前にやって貰うことになる」
「嘘だろ!流石に人手が足りない」
「それは充分わかってる。俺も将軍と一緒の時はなるべく目を光らすようにする。だから頼む!」
雄二は頭を下げた。
だが俺は渋っていた。
その時だった。
「なら私もやる!」
とねねが言った。
二人は口を揃え
「はっ!?」
と言った。
ねねは
「私だって二人の力になりたいの!」
俺は
「お前遊びじゃ無いんだぞ!」
「わかってる、私真剣に言ってるんだよ!」
ねねの目は真面目だった。
私だって出来る!
ねねの目からはそんな気迫が漂っている。
俺はどうにも断れなくなってしまい。
「わかったよ、でも絶対に俺から離れるなよ」
と渋々承諾した。
ねねは
「わかった!ありがとうっ!」
と言って嬉しそうに俺に飛び付いてきた。
俺は照れながら頭をポリポリと掻いた。
翌日
立政寺 広間
織田、足利両家の重臣一同が広間に集まった。
中心に信長の将軍、そしてそれを囲む形で両家の家臣が座る。
先に口を開いたのは信長だった。
「お初にお目に掛かります。織田信長と申します。これより少しばかりですが将軍様の御上洛のお手伝いをさせていただきます」
と言って頭を下げた。
俺はその信長が珍しく丁寧な言葉を使っているのに鳥肌がたったいた。
そういえば今日はいつもみたいな派手な着物や羽織を来ていない。
黒一色の正装だ、それに何か頭に得体の知れない真っ黒い冠までのせている。
やはり腐敗したとは言え将軍は将軍なのだろうか。
そんな事を思っていると将軍が口を開いた。
「よう参った。世が足利幕府15代将軍足利義昭である。ことびの従軍誠に嬉しく思うぞ!」
と上から目線だ。
こいつが足利義昭…
信長とあまり歳が変わらなそうだけど何か物凄くひ弱そう…
だが俺は知ってるこの人の最後を、いや厳密に言えば足利幕府の最後を…。
でも今それを狂わそうとしている輩がいるのか。
俺は辺りを睨んだ、だが特にあやしい所は無い。
それもそうかこんな人が沢山いるところでは殺らないか。
その時隣のねねが小声で話しかけてきた。
今回は信長に無理を言って特別にねねの同席を許して貰った。
ねねは
「あの人が将軍?」
と聞いてきた。
俺は
「らしいな」
「何か凄く頼りない…」
その時反対側の隣にいる雄二が
「ばかっ!なに言ってんだ!」
と小声で叱った。
中心では上洛の際の話をしている。
信長が
「まずは我々だけで出陣し、将軍様は我らが上洛し次第ここにお迎えにあがると言うものです」
と言った。
今、京は荒れている。
数年前、前将軍であり義昭の兄の足利義輝が大和の大名松永久秀と三好家に攻め討たれ、幕府は三好家の支配下となっている。
つまり幕府の権力は今幕府には無いのだ。
そこで立ち上がったのが仏門に入っていた義輝の弟義昭だったのだ。
義昭は諸国の大名に上洛を手伝ってくれるよう文を出しそれに応じたのが信長だったのだ。
信長は上洛と幕府権力再興を手伝う代わりに京の支配権を譲って貰うことで合意したのだ。
だがいくら織田と言えど上洛は並大抵の事
ではない。
まず京への道中には南近江一帯を支配する六角家、さらに京には大和地方を統治する三好家がいる、上洛の為には一気にその二つの大名を打ち破らなければならないのだ。
それは簡単な事ではない。
一体何人の人が京の地を踏めるのだろう?
そうこうしているうちに他人行儀な挨拶と堅苦しい軍略話が終わりひとまずこの場はお開きとなる。
これから正式な面会式、余興の両家臣団の武術対決、そして一端間を置き団結式みたいなのが
催される。
俺達が目をつけているのは武術対決と団結式の間だ、この間義昭と信長は別の部屋に入る、そして休憩時間なので護衛も一番少ないと思われる。
だがこれは誰でも思い付く敵が一体どのタイミングでどんな風に暗殺を行うのかは実際には分から
ない。
だから四六時中義昭を見張っておく必要が
あるのだ。
とりあえずこの場はお開きとなった。
両家は面会式を行う本堂へと向かった。
立政寺 本堂
面会式は厳粛な雰囲気で行われた。
まぁ目の前に仏像が有ればそうなるのも仕方がないのだが。
面会式は挨拶、決意の言葉、仏への誓いという順で進む。
挨拶は先ほど終わり今は決意の言葉が始まった
所だ。
信長が
「我ら織田家は足利将軍家の御上洛に…」
と延々と述べている。
だが俺にそんなもの聞いている暇は無いいつ何時刺客が義昭に牙を剥くか分かったもんじゃない。
俺は辺りに目を光らせていた。
まぁこんな所で騒ぎはおこさないか。
俺はふぅと息を吐いた。
それを勘違いしたのか利家が
「これ!暇そうにするでないっ!」
と小声で俺を注意した。
俺は申し訳なさそうに会釈を返した。
頼む早く終わってくれ…!
俺は心からそう願った。
立政寺 庭
ねねは流石に面会式に出席することが出来ず庭で待機していた。
回りには侍女が数人いる、一人にさせるのは怖いと藤吉郎がつけてくれた。
ねねは
「まったく、この時代は…!男女差別をするからダメなのよ!」
と言って地面を蹴った。
すると回りの侍女が不思議そうな目でこちらを見ていたのでねねは不意に大人しくなった。
それにしても暇ねこんなところじゃ何も起こらないだろうし。
早く終わらないかなー。
ねねはため息をついた。
その時、目の端に物陰からこっそりとこちらを睨む人影を見つけた。
あれは…!
ねねは一瞬目があってしまった。
するとその瞬間その人影はバッと走り出した。
「待ちなさい!」
ねねはその人影を追った。
立政寺 離れ廊下
バタバタっ
廊下では刺客とねねの鬼ごっこが続いていた。
ねねはこの事を見越し動きやすい薄くて粗末な着物を来てきている、今はそのお陰で何とか追い付いているといった所だ。
ダメっこのままじゃ…
ねねは疲れから段々失速していっているこの調子じゃ引き離されてしまう。
その時だった。
バタンっ!
刺客が勢い良く倒れた。
ねねは今がチャンスと加速し刺客を仰向けにして腹に馬乗りになった。
刺客はバタバタと暴れていたがねねがマスクを取るとふっと大人しくなった。
だがその姿にねねは驚いた。
「あ、貴女女じゃない!」
ねねは驚きのあまり叫んだ。
だが刺客はそっぽを向いて無視している。
ねねは
「何で貴女みたいな女の子がこんな事してるの!どうして人を殺すの!」
と説教をした。
実際、戦国時代にはこういう事は良くあり、クノイチとまではいかなくとも女性が刺客などになることはさほど珍しい事
ではない。
だが平成からきたねねにとってはそもそも人を殺すと言う事が認められないのだ。
ねねがその刺客に説教をしているその時
ドスッ
ねねの後頭部に衝撃が走った。
そしてねねは気絶してしまった。
立政寺本堂
「あいつどこいった?」
俺はねねを探していた。
面会式が終わりねねを迎えにきたが庭にねねの姿はなかった。
その時
「おい、藤吉郎。武術対決だぞ、さぁ移動だ」
と恒興に急かされた。
俺はまだねねを探したかったが仕方なく寺の外の演舞場に向かった。
立政寺近くの演舞場
武術対決は寺の外の演舞場で行われる、なぜなら宗教上寺での殺生は禁止だからだ。
一応寺から演舞場までの道中も警戒はしていたがやはり何も起こらなかった。
そして武術対決は予定通り執り行われた。
織田、足利両家の様々な武将達が木刀を持ち戦いあっている。
歴史マニアならば胸が弾む様な夢の対決もあるだろうが生憎歴史に疎い俺は目の前で戦っているのが誰かすら分からない。
そんなこんなでぼーっと試合眺めているといつの間にか最後の戦いになっていた。
信長は
「最後の戦いですのでこちらからは織田で一番強いものを出しましょう」
と義昭にいった。
義昭は
「うむ、良いだろう。ならばこちらも足利一の武将を出そう。光秀!来れへ!」
といった。
光秀か面白い。
雄二の実力が分かるな、この試合は楽しめそうだ。
その時信長が
「ならばこちらは、猿!」
と叫んだ。
猿、それは紛れもなく俺の事だ、信長は俺を指名したのだ。
嘘だろ、俺が雄二と…!
ふっ、面白い。
俺は前に出て雄二の隣に立った。
雄二、お手並み拝見といこうか。
「両者舞台にあがれ!」
判仕が叫んだ。
俺と雄二は舞台に上がった。
その時、
「待った!」
信長が叫んだ。
信長は
「普通にやっても面白くない、この勝負は木刀ではなく真剣を用いませんか?」
と義昭に言った。
義昭は
「それもそうだな。良しこの勝負は真剣勝負とする」
と言った。
信長は
「お聞き入れいただきありがとうございます」
と返した。
まじか!
真剣は聞いてないよ、まぁ殺される事は無いだろうからどうにかなるかな。
そんな俺と雄二に真剣が手渡された。
判仕が
「では構えよ」
と言った。
雄二と俺は刀を構えた。
ふと雄二の構えに違和感を覚えた。
見たことが無いのだ。
雄二の構えには見覚えが無いのだ。
俺は普通に上段の構えだが、雄二の構えはそれよりも上手は額の高さまで上がり剣先は下に落ちて肩甲骨の高さにある。
あんなんで戦えるのか?
その時
「両者、はじめ!」
開始の号令がかかった。
始めに仕掛けたのは俺、俺はまずセオリー通り姿勢を低くして雄二の懐に突っ込んだ。
雄二はピクリとも動かない。
何だ?
雄二は違和感を感じる程動かないのだ。
だがここで歩みを止めるわけには行かない。
俺は加速した。
そして遂に雄二の目の前に踏み込んだ。
俺はそこで急停止し刀を振り上げ雄二の首を狙った。
雄二はまだ動かない。
貰った!
その時だった。
ガキンッ!
刀が手ごと吹き飛ばされた。
雄二が攻撃をしてきたのだ、それも刀に。
雄二は降り上がってくる俺の刀に自分の刀を叩き込んだのだ。
俺はその衝撃でバランスを崩し、尻餅をつきそうになったのをギリギリの所で片足で踏み込み態勢を整えた。
そして急いで後退した。
あいつ刀に攻撃してきやがった!
普通、相手の攻撃は守る事が最優先だ、というより守る事しか出来ない。
なぜなら力が負けてしまうからだ、始めに攻撃したほうが足も踏み込みなど斬る準備をしている、それに対し守る側は斬る準備もしていない、そんな状況じゃ攻撃に攻撃を返すのは不可能に
近い。
だが雄二はそれをやってのけた、雄二も同様斬る準備等少しもしてないように見えた、だが刀にとんでもない力がかかり俺は吹き飛ばされた。
なんというか自分の力も全て雄二の攻撃に使われたという感じ
だ。
一体何がどうなったのか?
それを考える余地を雄二は俺に与えなかった。
雄二はこちらに突進してきた。
俺は身構えた。
雄二は俺の真正面に飛び出した、俺は防御の準備をした。
その時だった。
雄二は俺の脇を駆け抜けた。
ヤバイっ!
俺は急いで振り返ったが間に合わなかった。
突如背中に衝撃が走った。
俺は吹き飛ばされ倒れた。
俺は急いで起き上がろうとしたが首もとに冷気を感じそれを止めた。
雄二は俺の首に刀を突きつけていた。
俺を見下ろす雄二の目はどこか残酷で冷たかった。
その時俺はこの男が明智光秀なのだと改めて強く心に刻まれた。
「試合終了!勝者光秀殿っ!」
判事の言葉で俺は我に返った。
首もとから刀が離れた。
俺が立ち上がろうとしたとき
「ほれっ、良い試合だった」
と雄二が手を差し出した。
俺は一瞬躊躇ったが静かに微笑みその手を握り立ち上がった。
俺達は互いに礼をして各陣営に帰っていった。
帰ってきた俺に信長が
「あいつ相当腕が立つようだな」
と言った。
俺は
「はい、信長様もお気をつけ下さい」
と返した。
席につくと隣の一鉄が
「奴の動き覚えがある」
と言ってきた。
俺は
「どういう事ですか?」
「恐らく神影流、だろう」
「神影流…?」
「最近大成された流派だ。いかんせん使い手が少ないからそれを知っておる者はほとんどいない、わしとて口で聞いただけだからな。だがあの動きはその話と酷似しておる十中八九神影流と見て良いだろう」
一鉄はそれだけ言うと前に向き直った。
神影流…
あの流派をいったいどこで誰に学んだのだろうか?
かくして武術対決は盛況の内に幕を閉じた。
立政寺離れ
ねねは薄暗い部屋で目を覚ました。
「ここは…?」
ねねは立ち上がろうとしたが手と足が縛られており上手く立てなかった。
「気がついたか…」
その時暗がりから女の声が聞こえた。
ねねは暗がりに目を凝らすと一人の少女が見えた。
「あ、貴女は…!」
それは先程までねねが追っていた人間だった。
少女は
「お前はなぜ私を追った?何か知っているのか?」
「どうしてって暗殺を止めるためよ!」
「なぜそれを知っている?」
少女は感情を乗せず淡々と放った。
ねねは
「な、なぜって…それは言えないけど…。でも将軍暗殺って大変な事なんだよ!今後の貴方の人生も狂わせちゃうんだよ!」
「そんなことはわかっている。まぁ良い、お前の処分は将軍を殺してからにしよう」
そういうと少女は部屋を出ていった。
「ちょ、ちょっと!」
ねねは一人薄暗い部屋に取り残された。
立政寺本堂
今は一時の休憩となっている。
俺と雄二は寺の中を探索してみることにした。
雄二は寺を歩き回りながら
「そういやさっきの戦い、お前強かったな」
と言った。
俺は雄二の後を追いつつ
「そんな事ねーよ、俺惨敗だったし」
「でも、俺も油断してたら負けてた。信長様がお前を指名したのもわかる気がする」
「そう言ってくれて嬉しいよ。まぁ、あれが戦場だったら俺は今ごろここにいないけどな」
俺は自嘲気味に笑った。
雄二は
「まぁな。この力信長様の為に使おう!」
と言って握り拳を俺の前に差し出した。
俺は
「あぁ、天下一緒に見よう」
と言って自分の握り拳を雄二の握り拳にコツンっとぶつけた。
今の雄二は最高の友人だった。
明智光秀なんて本当はいないのではないか、そんな甘い予感さえも今は真実として受け入れられた。
雄二、俺にお前を殺させるなよ…
その言葉を言おうとして必死にそれを飲み込んだ。
この友情を終わらせたくなかったから。
立政寺 離れ
寺探索もいよいよ終盤に差し掛かっていた。
その時俺はふと思い出した様に口を開いた。
「あ、ねね!」
その言葉に雄二が驚いた様にこちらに振り返った。
「どうした?」
雄二は怪訝そうに聞いた。
俺は
「そういやあいつ居なくなったんだよ!」
「は、それどういう事だよ?」
「面会式の時外に待たせてたら消えたんだよ。まったくなにやってんだか?」
「それちょっとヤバくないか?誘拐とかじゃないか?」
「誘拐?確かにあり得なくはないな…」
「じゃあ早く探さないと!多分隠すならここ離れだ、部屋片っ端から調べていくぞ!」
俺達は離れの部屋という部屋を片っ端から調べて言った。
離れ ねねの監禁場所
さっきから外からバタンッバタンッという戸をあける音が聞こえる。
いったい何が起こっているのだろう?
そんな疑問を抱いていると
「生きているか?」
と先程の少女が入ってきた。
少女は
「さっきからお前の仲間が片っ端から部屋を調べてるよ。まったく仲間思いな奴等だ」
と呆れがおで言った。
ねねは
「え、二人が来てくれたの!?」
と身を乗り出した。
少女は
「あぁ、まぁ奴等がお前を見つける事は無いけどな」
「どうして!?」
「もう、手を打った」
「殺すの…?」
「いいや、それはしない我々は無駄な殺しはしない」
「そう、良かった…」
ねねはうつ向いた。
少女はねねの前の木箱に腰掛けた。
よく見たら可愛らしい少女じゃないか。
歳はまだ10代であろう、華奢な体つき、初々しい童顔背中に刀さえ背負ってなければ男からモテモテだったろうに、いったいこの少女に何があったのだろう?
ねねは遂に口に出した、
「ねぇ、どうして殺すの?殺すの楽しいの?」
キッと少女がこちらを睨んだ。
「殺しが楽しいだと!?そんなわけ無いだろうっ!」
「じゃあどうして止めないの!?」
「お前などにはわからない!わかってたまるか!私は我らは殺すしかなかったのだ…!人の命を奪わねば生きられなかった
のだ!」
「どういうこと…?」
「私は暗殺集団の生まれだ代々人を殺すことを家業としている。だがそのせいで母さんも父さんも死んだ!それでも私は殺しを続けた、殺さねば私が殺されるだから殺すしかなかった!殺めれば殺めるほど私の体は血の鎖で硬く縛られ身動きが取れなくなって行くそしてまた一人また一人と人を殺した。もう私の心は血で真っ赤だ…」
ねねはその少女の叫びを黙って聞いていた。
「じゃあ私が鎖をほどいてあげる…!」
ねねはボソッと呟いた。
少女は
「な、何を言っている!そんな簡単な事ではない!」
「それは分かってるよ、でも私なら貴女を守れる貴女の全てを守ってあげられる」
少女は固まった。
そのねねの真っ直ぐな瞳に見いった。
何の確証もない言葉でもねねはそれを寸分の迷いなく断言した、この人についていけば手に出来るかもしれない、私がどうしても掴めなかった物、自由が…。
『ここが最後だ!』
その時外から聞き覚えのない声が聞こえた。
それにねねが
「藤吉郎!」
と呟いた。
少女は急いでねねの口を塞いだ。
カタッ
外から戸に手をかける音が聞こえた。
そしてゆっくりと戸が開き出した。
離れ 廊下
「ここが最後だ!」
俺は叫んだ。
俺は雄二を見た。
雄二はコクりと頷き刀に手をかけた。
俺はゆっくりと戸を開けようとした。
その時
ドォーンッ!
遠くで何かが爆発した。
俺は戸から手を離し音の方を見た。
雄二が
「確かあっちは…」
と呟いた。
俺はその言葉で気がついた。
「あそこには信長様がいる!」
俺と雄二は急いでそこへ向かった。
立政寺信長の宿泊場
「信長様ーっ!!」
既に大分焦げ臭い臭いがしている。
俺は部屋の門に飛び込んだ。
「いったい誰だ、こんな事するのは?」
そこには信長が何事も無かったかのように立っていた。
信長は俺に気がつくと
「おぉーっ!猿っ来てくれたか」
と言って手をふった。
俺は急いで信長に近づくと
「大丈夫何ですか?怪我はっ!?」
と聞いた。
だが信長は
「いや特には無い、恒興の制止を降りきってまで外に出回った甲斐があったな」
と冗談を言えるほど元気だった。
「何だ良かった…」
ひとまずホッとした。
その時信長が
「そろそろ時間だ、本堂へ迎え」
と言った。
その時俺は気がついた。
はめられた、奴等はわざと爆発させて俺達を離れから話したんだ、俺達はまんまとそれにはめられたんだ。
だが今は本堂に行かざるを得ない。
頼む生きててくれよねね…。
立政寺 本堂
団結式は両家が仏に決意を誓うという形で厳粛に執り行われた。
だが俺達は違う意味で緊張していた。
結局さっきの休憩時間で将軍は襲われなかった。
俺達もねねを探すのに躍起になってたから恐らくあの時が最大のチャンスだったはずだ。
何か意味があるのだろうか。
いや今はそんな事どうでもいい将軍は生きていたそれでいい、今は将軍を殺さない様に専念しよう。
実際、式も大分終盤に差し掛かっていた。
残るは決意表明だけだ。
信長と義昭がそれぞれ仏に決意を語るのだ。
まずは義昭だ。
義昭は仏の前に座ると
「偉大なる仏よ。これよりわしの決意を聞いていただきたい。わしは織田の力を借りて京へとのぼりあしきやからに占拠された幕府を取り戻す。そして再び武家の頂点は足利幕府だと天下に号令をかける!その野望をとげるためその力しばしお貸しください」
と言って頭をさげた。
義昭は言い終わると立ち上がり席に戻った。
次は信長だ。
信長は仏の前に座ると
「俺にとっては京にのぼることも将軍の力を借りる事もその先に行く手段でしか無い!」
とたからに叫んだ。
はっ!?
またヤバイこと言いやがった。
この発言には流石の織田家臣団も驚いた。
将軍家は既に怒り浸透と言った感じだ。
だが信長はそんな事など気にせずに続けた。
「俺の野望、それは天下!いち早くこの戦乱をおわらせ民が笑顔で暮らせる日の本を創る!その道を邪魔するものは誰であろうと容赦はしない!骨の髄まで捻り潰してくれる!故に仏よ俺の野望の手助けをせよ!さすればお前も良いおもいが出来るだろう」
そういうと信長は立ち上がった。
そして席に戻ろうとしたとき。
「ま、まて!」
義昭が信長を呼び止めた。
信長は振り返った。
義昭は
「何じゃ!?今のは!将軍のわしがおりながら天下だとふざけた事を!」
と怒鳴った。
信長は淡々と
「ふっ、お気になさらずにただの戯れにございます」
と言った。
だか義昭は納得しない
「戯れだと!?今のがお主の戯れと申すか!えぇっい、もうよいそっこくこの者ね首を跳ねよ!」
と怒鳴り散らしている。
すると信長は
「俺の首を跳ねるならば好きに致せば良い、だが俺の首はそう軽くは無いぞ。それに将軍様にも俺は必要なはずだそこをよくお考えになられてから首を跳ねることをおすすめいたそう」
信長のこの言葉に義昭は何も言い返せず顔を歪めながら席についた。
こうして何とか全行程が終わったがこの日から既に織田、足利両家の絆には深い傷が刻まれてしまうことになる。
この傷が織田家を窮地に陥れる事になるのはまだ先の話し。
本堂前庭
面会式が終わり織田家臣団は前庭に集まっていた。
おれと雄二は二人暗殺について話し合っていた。
雄二が
「おかしいまだ将軍は暗殺されてない」
「あぁ、でももう機会が無いぞ」
「もしかしたら俺達の存在に気がついて中止にしたとか」
「それさ無いだろう、それならねねが見つかっても良いはずだ」
「確かにな…」
二人は黙りこんだ。
考えろきっと奴等はまだ諦めてないじゃあどこで殺す?
どうやって?
その時だった。
「将軍家お帰りーっ!」
と言う声が響いた。
ん、まて!
まだあるじゃないか!最後のチャンスが!
それは…!
「帰る瞬間、輿の中だ!」
俺は雄二に言った。
雄二は不思議そうに
「どういう事だ?」
と聞いてきた。
俺は
「俺達は暗殺者が一人だと思い込んでいた。でもそんな証拠どこにも無かったんだ。つまり暗殺者が複数人いたのなら輿の周りの御衛兵とかを全員暗殺者で固めれば目隠しになる」
「でもそれじゃいつ逃げるんだ?」
「逃げるのなんていつでも出来る、城についた時でも良いし、道中でも人数いれば逃げられる」
「じゃあ今将軍は…!」
「急ぐぞっ!」
俺達は急いで将軍達のもとへ向かった。
離れ ねねの監禁場所
ねねは部屋でじっとしていた。
その時。
ガラッ
戸が開いた。
そこには少女がいた。
少女の手には刀が握られていた。
ねねは身構えた。
少女は
「将軍は直に殺される…」
と言った。
ねねは
「え…!ダメっ!ダメよ!あの人は殺しちゃいけない、歴史が狂っちゃう!」
と言った。
少女は
「歴史?面白い事を言うな…。でも、もう…」
それだけ言うと少女は刀を振り上げた。
ねねは
「いやっ…!」
と小さな声で叫んだ。
バスっ!
ねねは死んだと思った、だが斬れたのはねねでは無かった。
斬れたのはねねを縛っていた縄だった。
ねねが驚いていると少女は
「お前についていけば私は自由になれるんだな?」
と聞いてきた。
ねねは少女の目を真っ直ぐにみつめコクりと頷いた。
少女はそれを見ると満足そうに笑うとねねに手を差し出した。
少女は
「じゃあ行くぞ」
ねねはニッと笑ってその手を取った。
二人は部屋を出た。
走っている途中ねねは少女に聞いた。
「名前は何て言うの?」
少女は照れながら言った。
「桜だ…」
立政寺 正面門
「まったく何なのだあの男は…」
義昭は愚痴を言いながら輿に乗り込んだ。
義昭が輿に乗り込んだのを確認した家臣が
「出発ーっ!」
と叫んだ。
行列は進み始めた。
ちょうどその時俺と雄二がたどり着いた。
正面門は階段10段分高くなっているため輿を真上から見ることが出来た。
だが少し遅かった。
護衛に隠れ、輿を担いでいた一人が輿の簾を開けようとしていた。
そいつは刀を隙間から入れようとしている。
駄目だ…!
俺達は駆け出した。
だが到底間に合わない。
「くっそーーおっ!!」
その時だった。
俺達の真上を人影がとんだ。
えっ!
その人影は輿の上に降り立ち刀を抜いた。
将軍を刺そうとしている刺客の刀を受け止めた。
「やっちゃえっ!桜っ!」
後ろから声が聞こえた。
「ねね!」
俺達は声を揃えて叫んだ。
ねねはへへんと自慢げだ。
俺達は再び輿を見た。
突如表れた救世主は受け止めた刀を弾き飛ばし刺そうとしていた相手を逆に刺した。
その騒ぎで周りの本物の護衛兵が気がつき刺客達を取り囲んだ。
刺客達は全てを諦めて武器を捨てた。
こうして何とか将軍暗殺は食い止められた。
立政寺 本堂前庭
「本当に助かった、ありがとう」
俺は桜に頭をさげた。
桜は
「別にそんな大した事じゃ…」
と照れている。
そこにねねが
「ねぇ桜!このまま行く宛が無いならさ私たちの所に来ない?」
「え、でも…」
桜は俺の事を見た。
俺は
「別に全然良いよ!ねねとも仲良いみたいだし」
と笑って言った。
桜は
「じゃあ、お言葉に甘えて」
と恥ずかしそうに頭をさげた。
そこに兵士が
「藤吉郎様、用意が整いました」
「そうか、じゃあ行こう」
俺は寺の地下牢に向かった。
立政寺 地下牢
先程の刺客はひとまず寺の地下牢に閉じ込め勝家が事情聴取をしていた。
俺は勝家に
「どうですか?様子は」
と聞いた。
勝家は
「駄目だ何一つ口を割ろうとしない」
「そうですか…。少し席を外して頂いても良いですか?」
「良いが、何故?」
「少し知りたい事が」
「左様かならば外そう」
勝家は席を外した。
俺は企ての首謀者と二人きりになった。
俺は
「教えてくれないか?なぜこんな事をした?誰の差し金だ?タイムトラベラーさん?」
と微笑んだ。
首謀者は
「お前か…、木下藤吉郎とやらは。ふっ、これだけは言っといてやろう。余り組織に深入りしないことだ、さもなくばお前は消されるぞ…!お前の回りには沢山の目が光っているぞ」
「ご忠告ありがとう。最後に教えてくれ誰の差し金だ」
「近江の大名、『浅井長政』だ」




