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藤吉郎におまかせあれ  作者: ヤブ医者
上洛将軍擁立編
19/35

秀長の正体

第1章 任務


岐阜城 兵士訓練場


明智光秀が来てから信長は上洛への準備を推し進めていた。

そのせいか兵士達の訓練も激しくなっている様な気がする。

夏は過ぎたが今だ残暑だ運動をすれば汗はかく。

余談だが職業兵士を初めに採用したのは信長だと言われている。

俺は兵士達の訓練を眺めていた。

その時後ろから声が聞こえた。

「ようっ!元気か?」

それは正勝だった。

正勝はどことなくご機嫌だった、

「どうしたんですか?妙に機嫌が良さそう

ですけど?」

俺は正勝を疑わしそうに見た。

正勝は

「へっへーん、これだよこれこれ」

そう言うと正勝は懐からスマホを取りだし自慢げに見せつけてきた。

俺は

「あぁ、それ俺も持ってますよ」

と素っ気なく返した。

正勝は

「良いじゃねーかよ、俺持ったこと無かったんだから」

「そう言えばそうか正勝さんのころはまだガラケーの時代ですもんね」

「ガラケー?何だそれ?」

「二つ折り携帯の略称です。ガラパゴス見たいに独自の進化を遂げてるからそう呼ばれたんです」

「あぁ確かにそうだな、この機能いるのか!?みたいなのいっぱい有ったな、それより連絡先交換しようぜ!」

正勝はぐいっと顔を近づけてきた。

俺は

「あぁ良いですよ」

と言いながら懐からスマホを取りだし正勝のスマホに近づけた。

便利な事に近づけただけで連絡先を交換でき

るのだ。

ブーーっ

スマホが震えるのと同時に画面に正勝の連絡先が表示された。

俺はそれを承認するとスマホを懐にしまった。

その時正勝が

「よしっ!これで大丈夫だな」

「はい、じゃあ俺そろそろ行きます」

「おぅわかった。じゃあな!」

「はい!」

俺は自宅へと歩き出した。


岐阜城下 藤吉郎宅


ブーッブーッ

縁側でスマホが鳴り響く。

それも頻繁に

俺は

「正勝さんうるさいんですけどー!」

とつい声をあげてしまった。

それにねねが

「どうしたの?」

「さっき連絡先交換したらあの人会話が止まなくなった」

「あぁ、結構鬱陶しい奴だよね」

ねねは顔をしかめた。

ねねは更に

「しばらく無視したら?」

「そうだな」

その時画面に違う人の連絡先が表示された。

「雄二だ」

それは雄二だった。

俺はトークを開く。

その内容に背筋が氷った。

『お前に初任務だ木下秀長を殺せ』

俺はガバッと立ち上がると物凄い速さで

走り出した。

そんな俺をねねは心配そうに見ていた。


岐阜城下 雄二宅(光秀宅)


雄二は今足利義昭に仕えているが信長の上洛と義昭の京入りの手助けの為岐阜城下に家を構えて妻と共に暮らしている。

俺は雄二の家に飛び込んだ。

そして挨拶もせずにドカドカと中に入った。

そのただならぬ様相に危険を感じた雄二の妻は俺の腰に抱きつき俺を止めようとした。

俺がそれを降りはなそうとした時、後ろから声が聞こえた。

「止めろ煕子!」

煕子は一瞬躊躇ったが渋々俺から離れた。

俺は煕子の手が離れると同時に雄二の胸ぐらに掴みかかった。

俺は怒鳴った。

「てめぇっ!どうゆう事だっ!?」

雄二は上目遣いで俺を睨み歯を食い縛っている。

俺は更に

「秀長が俺にとってどんな存在かわかってんのかっ!?あいつは俺の弟だぞっ!」

「でも血は繋がってねぇーだろ!」

雄二も俺の胸ぐらを掴んだ。

「血は繋がって無くても兄弟は兄弟だろ!」

「うるせぇーっ!」

ばんっ!

一瞬体が宙に浮いた。

だが浮いたと思ったら今度は床に叩きつけられた。

そのあと頬に激痛が走った。

俺は呆然としていた、今まで雄二に殴られた事が無かったからだ、いやそもそも雄二が人を殴った所すら見たことがなかった。

そんな雄二が俺を殴った、その事態に俺は衝撃を受けた。

俺が呆然としていると雄二がゆっくりと

語り始めた。

「木下秀長、本名東条俊也、彼は2006年から来たタイムスリップ者だ」

「え…!?」

「俊也はこっちに来たとき15歳だった、そしてお前の母親に拾われた、まぁお前は会ったこと無いだろうがなその時既に木下藤吉郎は家出した後だ、そして木下夫妻に育てられている時この夫婦が木下藤吉郎、豊臣秀吉の両親だと知った。そして自分が木下秀長であると言う事をその時ある計画が浮かんだんだ。そしてその計画の邪魔になる両親を無惨にも斬殺した」

「…!?」

「そしてその計画とはお前を殺しお前の後継者として出世し天下を成すことだ!」

「何だと!?無理だ信長様は能力のあるものしか重宝しない、家柄や身分にとらわれる様な人じゃ

無い」

「そうだ、でも秀長は信じてる自分が天下人になれると」

俺は呆然としていた。

今までずっと一緒にいた秀長が未来からきた人間だったこと、そして秀長が今俺を本当に殺そうとしていることに俺は驚きを隠せなかった。

俺の心にふと悔しさが滲み出てくる。

俺は我慢できなくなって

「あぁっ!くそっ!」

と言いながら地団駄を踏んだ。

雄二は俺を慰める様に

「これが戦国だ、平成の常識など一切通用しない」

「分かってる!分かってるけど」

「お前が無理なら俺がやる」

「やめろ!」

俺は雄二の腕を掴んだ。

「秀長は俺がやる。あいつの命は他の誰にもやらない、俺がけじめをつける」

「そうか、わかった。無理するなよ」

「あぁ、ありがとう」

俺は雄二の家を逃げる様に後にした。


岐阜城 広間


結局あの後評定がありとりあえず出席した。

「解散っ!」

信長の声が響く。

俺はそれと同時に秀長のもとへ歩み寄った。

「秀長、お前このあと暇か?」

俺は突然切り出した。

秀長は一瞬驚いたがすぐに

「はい、暇でございます」

とハキハキとした声で返してきた。

俺は

「じゃあたまには一緒に飲まないか?」

「え、よろしいのですか!?」

「あぁ、もちろんだ」

「ならば飲みましょう!店は私が用意いたします」

「わかった、任せたぞ」

俺は右手をあげてその場から去った。

まさかあいつが俺を…

何かの間違いだそんな期待がまだ俺の心には残っていた。

だがそんな期待はすぐに打ち砕かれる事になる。


岐阜城下 秀長宅


秀長は怪しい笑みを浮かべた。

「くくく、まさか兄上の方から機会をくれるとはこれはまさに好機だ!絶対に失敗は許されない…」

秀長は箪笥を開けた。

中には高校の制服が入っていた。

「ここまで長かった…だがそんな日々ももう終わりだ…兄上、いや豊臣秀吉は今日死に…この俺が新たにこの日の本を納める!俺こそが天下人だ!」

秀長は宝かに叫んだ。

そして空に向けて高笑いを飛ばした。


老舗料理店 赤羽


赤羽は岐阜城下にある唯一の高級料理店だ豪華な門を潜ると砂利が敷き詰められた庭園に入る。

そしてその中心に渡された石を渡り玄関を潜るとそこらじゅう金や銀で装飾された広い部屋に出た。

中心に幅の広い階段がある。

「うわっ、まじかよ…」

流石の俺も呆気に取られた。

そこに一人の男が

「どうなさいました?」

と聞いてきた。

どうやらここの案内役のようだ。

俺は

「あ、木下秀長って人来てます?その人の連れなんですけど」

「秀長様ですね、いらっしゃいます。こちらへ」

そういって中心の階段を指さした。

俺は男と共に階段を登り、少し歩いた先にあった個室に入った。


赤羽 個室


戸を開けると秀長が既に座っていた。

中心に机があり、食べ物が並んでいる。

秀長は俺に気がつくと片手を上げて。

「兄上!お待ちしておりました!ささっこちらへ」

そういって自分の目の前の畳を指さした。

俺は促されるままそこに座った。

秀長は陽気に

「ささっ、早速で頂きましょう。もうお腹がペコペコでたまりませぬ」

「お、あぁそうだな」

俺は目の前の料理に箸を伸ばした。

その時秀長が

「兄上、酒をつぎましょう」

そう言って自分の傍らにある陶磁器のやかんに手をかけた。

俺は反射的に自分の湯飲みを差し出した。

その湯飲みに酒が注がれる。

俺はその酒を口元に運んだ。

だが口の前で止め飲まなかった。

秀長が首を傾げている。

「どうしたのですか?兄上」

俺は言葉に詰まった。

何て言えばいいか、いや言うべき事はわかっているでもそれをなかなか言い出せない。

ふーっ、と俺は息をはいた。

すると少しばかり気持ちが落ち着いた。

今なら言える気がする…

俺は思いきって口を開いた。

「毒でも入ってるんだろ…?」

秀長は目を見開いた。

そして必死に

「な、何を仰いますか兄上、全く兄上は面白い冗談を言うお方だ」

「もういいよ、全て知ってる…東条俊也!」

「なっ、どうしてその名を!?」

「名前だけじゃない、お前がどこから来た何者で、何をしようとしているかもな!」

「な、何故!」

「答えは簡単さ、俺もお前と同じだからだ!」

「俺と同じ?じゃあまさか!」

「あぁ!そのまさかだ」

「ははっ、はははっ、ははははははっ」

秀長は突如狂った様に笑いだした。

「何がおかしい!?」

「だ、だって兄上もタイムスリップ者だったんだ、全く愉快だ」

「ちっ!狂ったか!」

「別に狂っちゃ無いさ、俺の野望を知ってるんだろならこのあと兄上がすべきことも…分かってる

よな!」

そう叫ぶと秀長は勢い良く抜刀した。

秀長は机を足場に飛んだ。

上から秀長の刀が降ってくる。

天井に刀があたる。

俺は鞘ごと持ち上げ、秀長の刀を防いだ。

秀長は俺の目の前に着地した。

俺は秀長の刀を弾くと同時に抜刀した。

秀長は2、3歩下がった。

今度は俺から仕掛けた。

俺は一歩踏み出すと秀長の腹へと刀を突き立てた。

秀長は体を捻ってかわしたが。

俺はそれを読んでいた。

そのまま刀を横へ切り上げる。

刀が秀長の鼻先をかすめる。

秀長は驚きのけぞった。

俺はそんな秀長の腹を蹴り飛ばした。

秀長はそのまま吹き飛び真後ろの壁に寄っ

掛かった。

俺は秀長の首に刀を突きつけた。

「終わりだ!」

秀長は怯えた様子でペタンと座り込んだ。

秀長は上目遣いで俺を睨んでいる。

俺は秀長に

「お前に天下が取れるわけ無いだろ!」

「うるさい!まだわからないだろ!」

「いや、分かりきってる!例えお前が俺の後継者だとしても信長様がその程度の理由だけでお前を重宝するわけ無いだろ!」

「うるさい!うるさい!なら兄上は俺に力が無いと言うのか!」

「無いだろ!家にとらわれてる時点で結果は見えてる!」

「わからないだろ!まだその歴史を見たものは居ないんだから!もしかしたら取れるかもしれないじゃないか!」

「そ、それは…」

「ふっ、もういい!それよりお前に俺が

殺せるか?」

その言葉は俺の心に突き刺さった。

秀長は俺に追い討ちをかけるように続けた。

「人が死ぬことを何よりも嫌うお前が!弟である俺を殺せるか!?」

俺の心の中で秀長のその言葉が目まぐるしく回る。

考えるな!そう言い聞かせても心がその思いを受け付けない。

その時ふと信長が俺の心に語りかけてきた。

『例え大切なものを失ってでも護りた物があるなら、何があってもそれを護り続けろ!』

信長様…!

そうだ俺は世界を終わらせる事はできない!

「殺せるよ!だってお前がいたら世界が終わっちゃうんだ!」

俺は刀を振り上げた。

「ま、待てっく…」

ズシャッー

俺は秀長の腹に刀を突き立てた。

辺りに血が飛び散る。

「お前…やり…やがったなぁ」

秀長が弱々しい声を出してきた。

俺は身を屈める。

秀長は

「まさか…まさか!いや…当然か…」

秀長は弱々しい笑みを浮かべた。

「藤吉郎…良く聞け…。お前はもう平成の人間じゃない…戦国の将だ!だから武将らしく…潔く…生き抜け…そして平成に帰れぇ…」

その言葉を残し秀長は息絶えた。

俺は秀長の屍を見下ろしながら

「どっちなんだよ…帰るよ言われなくても…」

ガラッ

襖が開いた。

「殺ったか…」

それは雄二だった。

雄二は秀長の傍らに屈むと床を触った。

そこにはポッかりと真っ暗は穴が空いていた。

「何だよそれ?」

俺は聞いた。

雄二は

「次元断層だ時空が歪むと生じる。そしてこれが広がると次元が消滅する」

「なるほどな…」

俺はのそのそと部屋を出た。

雄二は秀長を担ぎ上げ俺の後を追った。


翌朝

藤吉郎宅


結局昨夜は一睡もしていない。

俺は脱け殻の様に縁側で空を見上げていた。

その時

「ごめんくださーい!」

ハキハキとした声が響いた。

俺はその声に聞き覚えがあった。

「秀長…!?」

俺は玄関に飛び出した。

そこには雄二ともう一人秀長が立っていた。

俺は

「秀長!秀長!秀長っ!」

と叫びながら目の前の秀長の肩を掴んだ。

そこに雄二が

「悪いがそいつはお前の知ってる秀長じゃない。そいつは監視機構が死んだ秀長の代わりとして送り込んだ影武者だ」

「え…!」

俺は驚いた。

なぜならそこにいるのは秀長そのものだからだありとあらゆる特徴が秀長と酷似している。

その時秀長擬きが

「はじめまして!これから秀長をやらせと頂きます。呼び方は何でもどうぞ!これからよろしくお願いします!」

嘘だろ!

性格も秀長じゃないか、いや少し幼いか

そんな事を想っているとふと目頭が熱くなって

きた。

俺は耐えられず地面に踞った。

そして大粒の涙を流しながら

「ごめん…ごめん…秀長ぁ…ごめん!ごめん!

アァーッアァーッアァーッ!」

と雄叫びに似た涙を流した。

俺は遂に戻れないところまで階段を登って

しまった。

果たしてこんな俺に平成へ帰る権利はあるのだろうか?

平成に戻って喜ぶ権利はあるのだろうか?

疑問は絶えず込み上げてくる。

それを振り払うように昨夜の秀長の言葉が甦る。

『平和に…帰れぇ…』

言われなくても帰るよ、帰ってやるよ…

だから今は泣かせてくれ…

俺はなりふり構わず泣いた。

涙が枯れるまで泣き続けた。

そして涙を拭った時俺の目はどんなに清々しかったことか?

まるで全ての重荷から解き放たれたような。

なってやる…天下人に…豊臣秀吉に!

そして平成に帰る!

待ってろよ!秀長!

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