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藤吉郎におまかせあれ  作者: ヤブ医者
美濃奪取斎藤家滅亡編
13/35

お市の方、結婚

第1章秀長


清洲城足軽兵舎


辺りは異様な空気が漂っていた。

俺の目の前には俺の事を兄と呼ぶ謎の男、そして俺の隣でその男を睨み付けるねね。

気まずい…

何故こうなったかは約30分前まで遡る。


30分前


「兄上…」

男は俺に歩み寄ってくる。

俺は思わず後ずさった。

男は更に加速して俺の肩をつかみ

「兄上ですよねっ!兄上っ!」

そう叫びながら肩を揺さぶった。

俺は何が何だかわからず呆然としていた。

その状況を危険と思ったのだろう連れて来た兵士が男を引き離した。

男もそれで我に帰った。

男はもうしわけなさそうに

「申し訳ございません兄上…」

そう言って頭を下げた。

俺はそんな男に疑問をぶつけた。

「君は誰?俺の事を兄上って言ってたけどどういうこと?」

男は

「やはり覚えておりませんか…」

「いやどういう事だよ!?」

そこにねねが家から出てきた。

「どうしたの?え、誰?」

男はねねを見るや否や

「兄上の奥方様ですか!初めまして姉上!」

「姉っ、姉上!?」

あぁもう訳がわからない。

もういいや一旦部屋に入れよう。

「君とりあえず部屋に入って」

俺達は部屋に入った。

そして現在に至る。

俺は男に聞いた。

「君は誰?俺の事を兄上って言ってたけどどういうこと?」

男は

「そのままの意味です。貴方はわしの兄上です」

「そう言われても俺に弟はいない」

「やはり覚えておりませんか、まぁそれも仕方が有りません兄上が家を出た時わしはまだ物心もついていないガキでしたから」

「いやっだから俺はこの時代の…」

そこまで言った時ねねに肘で腰をつつかれた。

ねねを見るとねねは首を振っていた。

そうだ流石に初対面でタイムスリップしました何て言ってもネタ扱いされるに決まってる。

ねねに救われた。

ねねは優しい口調で

「君、詳しく教えてくれる?」

「はい、あれは遡る事13年前にございます。わしはその時齢4でした。その時兄上は突然家を飛び出してしまったのです。わしは兄上が大好きだったそれゆえ大人になり兄上を探す旅に出たのです。そしてようやく見つけた」

「藤吉郎とはどんな思い出があるの?」

「たくさんございます。例えば毎年夏にある祭りに二人で遊びに行った時わしは迷子になってしまったのですその時兄上はわしの事を血眼になって探しだしてくれたあの時涙で潤んだ目で兄上を見たときの気持ちと言ったらそれはもう言葉では言い表せぬ」

ねねは俺に向かって

「覚えてる?」

俺は

「覚えて無い…」

「え、本当に覚えて無いのですか兄上?」

男は明らかに落胆していた。

俺は男に

「ごめん、何も覚えて無いんだ。でも、会えて良かった」

「はい、わしも会えて良かったです。それではわしはこれで」

そう言うと男は立ち上がった。

俺は帰ろうとする男をひき止めた。

「ちょっと!」

男は振り返った。

「君っ俺の元で働かない?」

ねねは俺を止めようとした。

「え、ちょっ!」

でも俺はねねに構わず

「俺の配下になってよ君使えそうだし信長様には俺から言っとくから」

「本当に宜しいのですか?」

「もちろん」

「ありがとうございます。わしは一生兄上について行きまする!」

そう言って頭を下げた。

俺はそんな男に

「君何て言うの?」

男は

「はい、秀長ともうします」

豊臣秀長、秀吉の実の弟と言われている秀吉の厚い信頼を受け秀吉の右腕として働いた。

秀長は気分良さそうに部屋を出た。

秀長が出ていった後ねねは言った

「今ので分かったわ」

「え、何が?」

「貴方かタイムスリップする前にも木下藤吉郎がいたと言うこと。そしてその木下藤吉郎が貴方とそっくりだと言うこと」

「なるほどなでももしかしたら俺がこっちに来た事によって過去が歪んで元々藤吉郎が存在しない時間に藤吉郎が存在する時間が出来たという考えもできる」

「そうね、駄目だまだまだわからない」

「わかったって何かが変わる訳じゃない」

「まぁそうだけど。じゃ私用事あるから」

そう言って部屋を出た。

俺は考え巡らした。

いつか分かるときがくるのだろうか?

例えわかったとして何が変わるのだろう?

戻れるのか?

いやわからないただ生きてさえいればいつか分かる時がくるだろうその時を待とう。

俺は寝転がって目を閉じた。

瞼の裏には東京の街が浮かんだ。


第2章説得


清洲城 信長の部屋


「絶対に嫌にございます!!」

部屋にバカデカイ声が響き渡る。

声の主は市だった。

「わらわは絶対に嫁ぎません!」

市は思いっきり首を振った。

清洲同盟から三年後信長は斉藤家へ進行を

開始した。

実際には同盟前から進行を開始していたのだがなかなか上手く行かなかったのだ。

1561年それまで美濃を統治していた斉藤義龍が急死し14歳の龍興が後を継いだ事をチャンスと見た信長はその2日後に出陣西美濃の森部村辺りで戦闘を開始した。

これが後に言う森部の戦いだ。

この戦いは信長の圧勝に終わった。

因みにこの戦いで利家は復帰を果たした。

森部の戦いは圧勝した物のその後はなかなか上手く行かなかったのだ。

このような状況を踏まえ家康と同盟を結んだ。

そして今安心して斉藤家を攻めるため近江の浅井家と同盟を結ぼうとしている。

その為にお市の方を近江の大名浅井長政にお市の方を嫁がせようとしているのだが。

お市の方本人が断固拒否しているのである。

「わらわは兄上の元を離れる気など有りませぬ!」

市は頬を膨らませた。

信長はアセアセしながら。

「なぁ、頼む市!お主が嫁いでくれたら天下を取れるんだ!」

信長も妹には甘い。

「兄上の傍を離れるなら天下など要りませぬ!」

「くっ、俺は天下が欲しいんだ。それに浅井長政は顔良し性格良しで完璧な男と聞くぞ」

「兄上には負けます!」

こんな感じで市は一歩も譲ろうとしないのだ。

「俺には無理だ…」

信長は小声で呟いた。


清洲城 信長の部屋


俺は信長に呼ばれた。

「俺には無理だ…あの娘の説得何て」

信長はグッタリとしていた。

市は今22歳、もう大人だから大丈夫だと信長は思っていたのだがそうは行かなかった。

市は大人になっても信長が大好きだった。

俺は信長に

「あ、あの大丈夫ですか?」

「大丈夫な訳あるか!もう心も体もクタクタだ」

「まぁ、そうですよね…」

「そこでだお前に手伝って欲しいんだ!」

信長は太股をパンっと叩いた。

俺は顔をしかめながら。

「手伝う?」

「あぁ、明日市を散歩に誘うその時に説得をしようと思うんだそれを手伝って欲しい」

「手伝うってどういう?」

「それはそんときに自分で考えろ」

「結局人任せじゃないですか!」

信長はイタズラっぽく笑った。

結局俺は説得を手伝う事になった。


翌日

清洲城下 大通り


「兄上ー楽しゅうございますなー」

市はきゃっきゃとはしゃいでいる。

日はすっかり天頂に登っていた。

俺は信長と二人で市を追った。

その後ろを数人の家臣と護衛がぞろぞろとついてくる。

信長は市に

「市、そう急ぐな、誰もついて来れないだろ」

「市は久しぶりに兄上と遊べて楽しいのです!」

「それは嬉しいが俺は城下の視察に来たんだぞ」

え、そうなの!?

まぁ確かに散歩にしては護衛が多いなーとは思ってたけど、初めから名目は城下の視察だったの?

じゃあもしかして…?

「ということで市俺は少し城下を見回ってくるその間は猿と一緒にいろ」

やっぱりだ結局俺に押し付けた。

俺は市をみた

市は頬を膨らませながら。

「嫌ですわらわも行きます!」

「駄目だ!これは仕事だ!」

市はもう泣きそうだ。

市はきっと俺を睨むとズカズカと近づいてきた。

そして俺の手を握り

「兄上の命だ!行くぞ!」

そう言って俺を引っ張っていった。


清洲城下 森


ヤバイ気まずい…

市は俺の手を引っ張って森迄連れてきたは良いもののそこから手を話トボトボと歩き出した。

横を一緒に歩いて既に15分程経ったが一言も会話を交わしてない。

ふと市を見た。

いつもガキと思っていた市の顔は昔と比べて随分大人びていた。

でもやはり綺麗というより可愛いだ。

その時頭に浮かんだ。

ギャルだな…

いやいや何考えてんだ俺!?

そんなこと考えていると市が視線に気づいた。

「何じゃ?猿?」

あ、気づかれたでも好都合かも

俺はその瞬間だけ脳ミソの回転があがり必死に考えた。

そして出した最高の返答が

「木登りません?w」

終わったつくづくめでたい脳ミソしてやがる俺

だが市は

「木かぁ、良いな木」

そう言って微笑んだ。

やっぱガキだ…


森 木上


「はぁー、良い眺めじゃなー」

市はため息を漏らした。

確かに綺麗だ

眼下には街が広がっている。

街は初夏の陽光をいっぱいに浴びて輝いていた。

「そうですね」

俺もため息を漏らした。

市はいつもどうりきゃっきゃしていたがこれが空元気だということは誰の目にも明らかだった。

さてそろそろ任務遂行しますか。

「どうしたんですか?」

俺は優しい口調で聞いた。

市はキョトンとした口調で

「何がじゃ?」

「元気ありませんよ市様」

「き、気のせいじゃ…」

市は童謡していた。

「俺にはそうは見えません。ここには俺しかいませんし話して下さい」

市は堪忍したようにうつむいた。

「わらわは男に産まれたかった」

市の目からは涙が溢れていた。

市は嗚咽を漏らしながら

「わらわは兄上の為に何にも出来ない、兄上の側にいても邪魔になるだけじゃ、わらわはお主らが羨ましい兄上ね側にいて兄上と共に一喜一憂して…お主らと兄上の間には壁が無い…」

「信長様は市様にも壁を感じてはいないと思いますよ」

「それは間違いじゃ、わらわは兄上との間に大きな壁を感じる。その証拠に兄上はわらわを遠ざけようとしてるじゃないか!」

「…」

「わらわは兄上の側を離れとうない側にいても役にたたないのに遠くに行ったらもっと役にたてないじゃないか…」

市の目からは涙がボロボロと溢れていた。

俺はそんな市を慰めるように。

「それは違うと思います」

「何が違うっ!」

市はきっとこちらを睨んだ。

俺は

「信長様は目標が欲しいんです」

「目標…?」

「はい、人は目標があれば頑張れます。あれの為に頑張ろう!あの娘の為に頑張ろう!そう思えるように慣れます」

市はこちらをじっと見ている。

俺は続けた。

「近江で市様が待っててくれてるそう思うだけできっと信長様の心が奮い立たされるんです。今もこれからも。そしてそれは信長様だけじゃありません家臣達も市様が待っていてくれると心が折れそうになったときまた立ち上がろうと思えるんです。少なくとも俺は…」

「何故じゃ?何故家臣達もがわらわの帰りを待ちわびる?」

俺は微笑んだ。

「皆好きですから市様の事…」

市は目を見開いた。

だが急いで俺から目を反らし

「帰るぞ猿…」

そう呟いた。

やべっ、まずったかな?


清洲城下 大通り


「二人ともどこいった?」

信長は市と藤吉郎の帰りが遅いことを心配

していた。

その時

「兄上ーっ!」

声の方を見ると市が走って来ていた。

その後ろを藤吉郎。

市は信長に思いっきり抱きついた。

「兄上ー、会いたかったです!」

市のテンションはすっかりもとどうりだ。

まぁそりゃそうだ。

結局、木から降りた後も色んな所を引きずり回されたのだ。

気づけばもう夕方だ。

そんな事を考えていると突然市が信長から離れ礼儀正しく信長の前に立った。

「兄上、兄上はわらわの事が好きですか?」

信長はキョトンとした顔で

「あ、あぁもちろん好きだ」

市は微笑んで

「じゃあわらわは嫁ぎます。わらわは近江に行きます」

信長は驚いた。

「ほ、本当か!?市!」

「はい、本当にございます!」

「ありがとう、ありがとう!」

市は次に俺の元にやって来た。

そしてイタズラっぽく笑うと

「猿、お主の事が好きになった」

「え、え!?」

「だから、お主がわらわの事を好きなようにわらわもお主が好きになった。だから絶対迎えにこい」

まさかこんな所でコクるとは

だが市は鼻で笑うと

「ま、兄上の次にだがな」

そう言うと城の方に走り出した。

信長は豪快に笑いながら

「なるほど俺の敵はお前が猿っ、負けないぞ!」

そう言うと城の方に歩き出した。

何かいろいろ勘違いされてるけどまぁいいや。

俺も信長の後を追った。


それから数日後市は浅井家に嫁いでいった。

見送りの時もいつもどうりはしゃいでいたがその背中は明らかに怯えていた。

俺は心の中で決心した。

絶対に迎えに行く!

歴史がどうであれ…

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