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藤吉郎におまかせあれ  作者: ヤブ医者
美濃奪取斎藤家滅亡編
11/35

約束

第1章タヌキオヤジ


1562年春

岡崎城広間


ここは三河の国、三河は小大名の松平元康が治めていた。

松平元康は桶狭間までは今川家に従属していたが桶狭間の後平和な世を造るため今川家に反旗を翻した。

そして今は織田家への接近を試みていた。

だが、織田家と松平家は今こそは和睦しているものの信秀の時代から犬猿の仲で今だ家臣達にその事が残っており反対派が多くなかなかまとまらずにいた。

今日もまた反対派と賛成派で意見が割れていた。

「やはり織田とは同盟を結ぶべきだ!」

「いやっ!織田とは先代の頃から犬猿の仲織田と共存など出来る訳がない!」

元康は家臣達のやり取りを黙って聞いていた。

その時一人の武将が

「殿っ!殿はどのようなお考えなのですか?」

元康は言葉に困った。

家臣達の視線は元康に集まっていた。

元康は静かに言い放った。

「まだ、分かりかねておる。今日はここまでだ」

そう言って部屋を出た。

残された家臣達は元康が出ていった後も言い争いを続けた。


清洲城 広間


織田家では既に松平家と同盟するという結論でまとまっていた。

そして今は松平家とどの様に同盟を結ぶかを考えていた。

一人の武将が信長に聞いた。

「殿、松平元康からの返事は来たのですか?」

その武将は丹羽長秀だった。

丹羽長秀、信長の古くからの家臣、信長の信頼も厚かったが秀吉など家臣達からの信頼も厚かった。信長没後秀吉に仕えるが

自害。

信長は長秀に

「いやまだ来ない」

と答えた。

その会話に勝家が

「今まで何度も文を送っているのに一通も返事が無いと

なるとやはり…」

信長は

「いや、悩んでいるのかもしれない…」

その答えにその場の全員は黙りこんだ。

その時信長が

「今はまだ何とも言えないとりあえず今日はここまでだ」

そう言って広間を出た。

他の家臣達もぞろぞろと出ていった。

その時恒興に話しかけられた。

「松平元康どう思う?」

俺は恒興に

「どう思うって?」

「何故何通も文を送っているのに一通も返事が無いのかという話だ」

「あぁ、やっぱりまだ決めかねているんじゃ無いですか?」

「そうだと良いがな」

そう言って恒興は広間を出ていった。

それにしても松平元康って誰だ?

俺は心の中でそんな疑問を抱きながら広間を出た。


清洲城 信長の部屋


先程の評定の後俺は信長に呼び出された。

「用って何ですか?」

俺は信長に聞いた。

信長は俺に淡々と告げた。

「猿、お前今から三河へ言って元康を説得してこい、ただし正式な使者ではないから気を付けろよ」

「え、俺に元康の説得ですか!?」

俺にどうしろって言うんだよ?相手は何通も文を送っているのに頑なに返事よこさない奴だぞ今は待つしかないだろ。

そもそも誰なんだよ松平元康って?

「説得と言われましてもどうやって?」

「お前の疑問は分かる確かに何もなければ説得に行っても無駄だそれよりも待っていた方が良い、だがあるんだ俺と元康には昔交わしたある約束がな…」

「約束…?」

「あぁ、あれはまだ元康が竹千代と呼ばれていた頃の話だ…」

信長はそう言って青空を見上げた。


時は遡り…1549年春

信長16歳

松平元康8歳この頃はまだ幼名竹千代

那古野城下


「いやーっ良い眺めだな!」

この頃の信長はうつけ絶頂期である。

今も武術の鍛練をサボり木登りをしている。

因みに濃姫と結婚したのもこの年だ。

信長は木の上で下を見下ろした。

下では濃姫と平手政秀があわてていた。

平手政秀、信秀からの家臣。茶道など様々な文化に通じていた文化人であった。また朝廷とも親しく織田家では重要視され信長の守役等に抜擢された。1552年に没する。

政秀は

「お辞め下さい若様っ!」

信長はそんな政秀を無視し景色を眺め続けた。

ふと城の離れに人影を見つけた。

誰だ?まぁ良い行ってみよう。

信長は木から飛び降りた。

そして離れへむかった。


那古野城 離れ


「はぁー…」

竹千代は大きなため息をついた。

人質として織田家にきて既に2年今だ帰れる気配は無い。

「何故自分だけ…」

不満げに呟いたその時

「居たっ!」

誰かが叫んだ。

「信長様…」

それは信長だった。

信長はズカズカと近づくと

「お前は誰だ?何故このような所にいる?」

と聞いた。

竹千代は

「わ、わしは今川から来た…竹千代にございます」

「今川から?」

「は、はい人質として」

「人質?あぁ、そういえば居たなそんなやつお前がそうなのか?」

「は、はい」

「そうかそれは大変だなよし喜べ!この俺が直々に遊んで

やるぞ!」

「え、えぇ!」

「ほらっ!行くぞ!」

そう言うと信長は竹千代の手を鷲掴み城の外に連れ出した。


那古野城森


「あ、あのっ、何処に行くのですか?」

竹千代はあわてて信長に聞いた。

信長は

「俺の一番好きな場所だ」

「一番…好きな場所…?」

「あぁ、そろそろ着くぞ!」

その時誰かに声をかけられた。

「てめぇら金目のもん全部置いてきな!」

それは山賊だった。

山賊は6人いた。

信長は威勢良く言った。

「お前等に渡す物などない!」

山賊は

「ふん、なかなか威勢の良い奴じゃねーか!だがいつまもつかな?」

そう言うと山賊達は刀を信長達に向けた。

竹千代は怯えて木の陰に隠れている。

信長は山賊に対抗して刀を抜いた。

山賊は信長達を囲んでいた。

『やぁーっ』

山賊の一人が斬りかかってきた。

カキンッ

信長はその刀を受けると刀を後ろに下げた。

山賊は後ろに躓いた。

その瞬間信長は後ろを向き山賊の背中をきった。

今度は横から一人が斬りかかってきていた。

信長は後ろに一歩下がると刀をギリギリで避けると山賊の方を向き刀を振り上げると山賊の肩を

斬った。

肩を斬られた山賊はその場で踞った。

更に信長は刀を後ろに振り後ろにいた二人を

斬った。

残るは二人。

今度は信長から仕掛けた。

敵は前に一人後ろに一人ずついた。

信長は後ろに向くと刀を振り下げ体勢を低くして山賊に突っ込んだ山賊の前で踏切アッパーの様に刀を振り上げると山賊の胸を斬った。

あと一人

その時だった。

後ろから声が聞こえた。

「そこまでだっ!」

後ろを向くとそこには竹千代を羽交い締めにし首に刀を突きつけた山賊がいた。

山賊は高々と叫んだ。

「こいつの命が惜しけりゃ金目もん全部置けっ!」

しかし竹千代は

「信長様っわしの事は放っておいて早く逃げて下さい」

だがその目には涙が浮かんでいた。

信長は

「わかったお前達の言う通りにしよう」

そう言うと懐から金の入った巾着を取り出すと山賊に投げ捨てた。

山賊は竹千代を放り出すと。

巾着に飛び付いた。

「へへっさっさとだしゃー良いんだよ!」

山賊は倒れた仲間を起こし森の奥へ消えた。

信長は竹千代に走り寄った。

竹千代は

「何故逃げなかったのですか!?何故わしを助けたのですか?」

竹千代の肩は震えていた。

信長は竹千代を落ち着かせるため優しく語りかけた。

「竹千代、お前が何を言おうと俺はお前を助ける」

「だから何故?」

「お前はもう俺の友だ仲間だ、俺は仲間は絶対に死なせない死なせたくないんだ」

「死なせたくない?」

「あぁ、それだけが俺の矜持だ、だから例えお前が人質だろうとお前は俺の友だだから絶対に死なせない」

「信長様…」

信長はわざとらしい陽気な声で

「さっ、行くぞ!後少しだ」

そう言って竹千代を引っ張って行った。


那古野城下森奥地


草を掻き分け川を渡りハイキングと言うには少しキツイ冒険をした二人はようやく目的地にたどり着いた。

草を分けると小高い丘にたどり着いた。

「はぁーっ」

竹千代は思わず息を漏らした。

そこは城下を全て見下ろせる場所だった。

眼下には那古野城下そこを行き交う人々。

信長は竹千代に言った。

「良いだろうここはここには全てが詰まっている俺の全てが」

「全て?」

「そうだ!民は俺の全てだ俺はここにいる民を皆を守りたいだから戦える!だが俺はこのままでは終わらない」

「では何処へ?」

「天下だ!俺はいつか天下を取る必ずな…」

「信長様っ!その様な事誰かに聞かれでもしたら!」

「確かに今だ幕府は存在するだがその幕府はもう随分と前から形骸しているそのせいでこの戦乱の世が始まったのではないか!俺はいつかこの世を改めるもう誰も傷つかない世を創るんだ!」

「もう誰も傷つかない世…」

「あぁ、だから竹千代!お前も早く元服し俺の天下への道の手助けをしろそしていつか必ず二人で頂きを見よう!」

竹千代は目を見開いたその目は輝いていた。

この男はつけ等では無い演じているだけだこの男の胸には壮大な野望が秘められているこの男ならば託せるかもしれない命を命運を…

いつかまた信長がわしを必要としたとき託そうわしの命を…

竹千代は

「はい見ましょう頂きを共に…」

二人は日が暮れるまで景色を眺めた。


時は進み

1562年現在

清洲城 信長の部屋


「その後竹千代は俺の兄の信広との人質交換で三河へ帰ってしまった…」

信長はしみじみと語った。

俺は

「信長様と元康様にそんな過去があったなんて」

「あぁ、もし奴があの時の約束を覚えているならばきっと同盟を結んでくれるはずだ」

俺は決心した。

確かに元康が信長との約束を覚えているならば同盟を結ぶ確率は増えるいや結ぶ結んでやる。

「はいっ、その役目この木下藤吉郎におまかせください!」

俺は信長に頭を下げた。

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