君の為に
第1章夫婦
清洲城 足軽兵舎
桶狭間から1年織田家は戦あり暇もありで何かと忙しい日々を送っていた。
もちろん俺も忙しくしていたが今日久々に一日暇になった。
「ねね、どっか行こうよ」
俺はねねを遊びに誘った。
ねねは
「え、でも今は明日の用意とかで忙しいし」
「良いじゃん良いじゃん、行こうよ」
「まぁ、良いよ」
ねねは渋々了承した。
実は俺たちは明日祝言をあげることになっている。
まぁ初めはこんなことになるとは思わなかったなぁ。
心の中でそんな事を思っていると
「ほら、準備出来たよ、早くっ」
とねねが言ってきた。
俺は
「あぁ、行こう」
と言って微笑んだ。
清洲城信長の部屋
「全く驚いたものだな」
信長は濃姫に言った。
「そうでございますね。ねね殿がやって来た時はあれほどまでに否定していたのに」
「あぁ、結局夫婦になってしまった」
「はい、ですが何も起こらねばよろしいのですが」
「どういう事だ?」
「お二人の御性分だと祝言前に何か起こりそうで」
「それはそうだな、まぁ見守ろう」
「はい、そうですね」
清洲城下大通り
夏の日差しはきつく歩いているだけで汗が吹き出してくる。
「でもさまさかお前と結婚するなんて想像もしなかったなぁ」
俺はねねに染々と言った。
ねねは
「それは私もよまさか藤吉郎と結婚するなんて夢にも思わなかった」
「でも今はずっと一緒にいたい」
「それは私も、藤吉郎死ぬなら私と一緒に死んでね」
「んなこと出来る分けねーだろ」
「え、出来るよ、頑張って」
そう言ってねねは微笑んだ。
俺はねねに
「善処します」
そう答えた。
その時後ろから
「おいおいお侍さんよう見せつけてくれてんじゃねーか!」
振り向くと明らかにアウトローな奴等が立っていた。
うわっすげー面倒臭そう。
俺はなるべく威嚇しないように
へらへらしながら
「何でしょう?」
と聞いた。
不良は
「てめぇらの態度が気に食わねー」
「それはどうもすみません」
「言葉だけじゃ足りないな物で払えよ」
まじで居んのかよこういう奴等。
その時ねねが
「あんた等ねさっきから言ってる事めちゃくちゃよあんたらなんかに女が寄り付くとは思わないけど!」
「何だと!てめぇ!」
俺はねねの前に立ち塞がり。
「すみません、こいつ気が強いもんでこれお詫びに受け取ってください」
そう言って銭の入った巾着を差し出した。
「ちっ、あんならさっさと出せよ」
そう言って不良達は巾着を奪い取りどこかへ行ってしまった。
ふぅ、ようやくどっか行った。
俺が安堵したその時
「信じらんなんない」
そう言ったのはねねだった。
「え?何が?」
「何で金を渡したの?あんな奴等に!」
「ああいう奴等はさっさと金渡して追っ払うのが一番なんだよ!」
「だからそれがわかんないっつってんの、あんな奴等藤吉郎なら瞬殺でしょ!」
「あんな奴等の為に無駄な体力は使いたくない」
「あぁっもう良い!奥さんやめる!さようならっ!」
ねねはそう言ってズカズカと歩きだした。
俺はそんなねねに
「こっちだって願い下げだ!」
そう言ってねねとは反対方向に歩いた。
清洲城信長の部屋
信長が濃姫と談笑していたその時
「信長様っ!大変にございます!」
一人の兵士が駆け込んでいきた。
「何だ!?」
信長は勢い良く立ち上がった。
「藤吉郎殿とねね殿との婚姻が無かったことに」
「どういう事だ!?」
「先程一悶着あったみたいで」
その会話に濃姫が
「大変にございますね」
「あぁ、ここまで来て婚約破棄等認められん」
「はい、殿は藤吉郎殿の説得に私はねね殿説得に参ります」
「分かった、だがねねの居場所が分かるのか?」
「検討はついておりまする」
「そうか頼んだ」
「はい!」
そう答えると濃姫は部屋を出ていった。
「猿、何があったんだ?」
信長も部屋を出た。
清洲城 足軽兵舎
俺は部屋の隅で縮こまっていた。
「何であんなこと言っちゃったんだろ」
俺は大きなため息をはいた。
その時戸が開いた。
「猿っ入るぞ!」
それは信長だった。
「え、信長様?」
俺は立ち上がった。
「信長様何故こんなとこに?」
「聞いたぞ猿何があった?」
そうかそういやさっき連絡させたな…
「荒ぶれ者に絡まれまして」
「荒ぶれ者?」
「はい、ねねはその時の俺の対処の仕方が気に入らなかったらしくて」
「成る程なお主どんな風に対処したんだ?」
「さっさとどっか行って欲しくて言う通りに金を渡しました」
「それが気にくわなかったと」
「はい、それで言い合いになって…」
それを聞いた信長は呆れたように
「ふっ、その程度の事か…」
「その程度って…」
「猿お主はここでねねと別れたいのか別れて良いのか?お主とってねねはその程度だったのか?」
「…」
「答えろ!お主にはこの先さまざまな事があるぞもしかしたらねねを命懸けで守らなくてはいけなくなるときだってくるだろう。だから今こんな些細な事に揺らいでいて本当にねねが守れるか?お主にねねの主人になれるのか?」
「俺は、俺はねねと一緒にいたい。ねねは俺がこの戦国の世で一緒に生き抜こうと思った唯一の人間なんですそんな奴をこんな事で手放したくない…」
信長は俺の答えを聞き安堵して
「その様子なら大丈夫だな、じゃあ頑張れよ」
そう言って信長は片手を挙げ部屋を後にした。
俺は信長が出ていったのを見て呟いた。
「けじめはちゃんとつけないとな…」
そう言って部屋を出た。
清洲城下 森の中の小屋
ねねは藤吉郎と再開した小屋にいた。
ねねはうずくまりながら。
「何であんなこと…」
ねねも藤吉郎と喧嘩してしまった事を悔いていた。
その時
「やはりここでしたか」
それは濃姫だった。
ねねは顔をあげた。
「聞きましたよ藤吉郎殿と喧嘩したそうですね」
「私、藤吉郎に酷いこと、藤吉郎だって私のこと助けようとしてくれたのに…」
濃姫はねねに近づきねねの目線にしゃがんだ
「ねね殿は藤吉郎殿と一緒にいたいのですか?」
「それは…」
「ねね殿はこの先さまざま藤吉郎殿の顔を見ると思いますどんな藤吉郎殿を見ても一生添い遂げる自信はおありですか?」
ねねはうつ向いた
濃姫は
「答えなさい!貴女は藤吉郎殿を好いておられるのですか!?」
ねねは潤んだ目を濃姫に向けた。
「私はっ、私は藤吉郎が好きです…藤吉郎は私が初めてずっと一緒にいたいと思った人なんですっ!」
濃姫はその答えを聞きねねにやさしい微笑みを向けた。
「なら行きましょう貴女の主人の元へ」
ねねは涙を拭き
「はいっ」
そう力ら強く答えた。
清洲城下 中心部から離れた廃寺
日は大分傾き空が紅くなり始めたその時廃寺からは大声が響いていた。
「はははっ、そりゃいい!」
「そうだろう身寄りのねぇガキども集めて住み込みで無賃金で働かせ俺たちは甘い蜜を吸う」
「そうすりゃ大金稼ぎ放題だ!」
この廃寺は現代でいうヤクザと呼ばれる輩のアジトとなっていた。
そしてここに昼間の奴等がいる。
俺は門の前に立ち大声で
「たのもーーっ!!」
と叫んだ。
すると中から明らかに危ない奴等が武器を持って出てきた。
その数は40人程いた。
「何だ、何だ?」
「誰だてめぇ?」
「あぁ、お前!」
「何だお前知ってんのか?」
そう聞いたのは獣皮の服をきたスキンヘッドの眼帯つけたごりマッチョだった。
あいつか?大将は?
「知ってますとも俺たち昼間あいつから金せしめたんです」
「成る程その金返しに貰いにきたんだな」
俺は今まで黙って聞いていたがようやく口を開いた。
「別に金返してほしい訳じゃねぇよ、けじめだよおめぇら倒さねーとねねにあいに行けねーだよだから…」
俺は腰にさしてある刀に手を伸ばした。
「黙ってやられろくずども!」
そう言って刀を敵に向け威嚇した。
大将は
「へっ一人で何が出来る!おめぇらやっちまえ!」
『うぉーっ』
敵は刀を振り上げて俺に牙を向いた。
俺も刀を振り上げ
「やーっ」
敵に突っ込んだ。
ねね必ずあいに行く!
清洲城 信長の部屋
「何?藤吉郎が居ない?」
信長の部屋にねねが血相を変えてやって来た。
「はい、ずっと待ってたけど帰って来なくて!」
「まさか猿逃げたか?」
「それは無いと思いまする」
そう答えたのは濃姫だった。
濃姫はねねに尋ねた。
ねねは二人に昼間の事を全て話した。
それを聞いて濃姫は
「まさか奴等ですか?」
それに信長が
「あぁ、そうだろうな」
ねねはきょとんとしていた。
それに気づいた信長が
「最近できた暴力的な組織だあいつらは金儲けの為なら手段を問わない武装もしていると聞く。おそらく猿はそこに乗り込んだんだろぉ」
ねねは驚き
「乗り込んだ?何で?」
その問いに濃姫が
「けじめです。貴女への自分への」
「けじめ…」
ねねは嘆いた。
信長は叫んだ。
「くっ、まぁよい早くしなければ猿が危険だ。出陣だ!集められる兵をありったけ集めろ早くしなければ猿がしぬぞっ」
その叫びにねねは
「私も連れてって!」
信長は
「無理はするなよ…」
と言って部屋を出た。
清洲城下 中心部から離れた廃寺
はぁはぁ流石に数が多すぎるか。
しかも何だこいつらどんなに斬ってもまた立ち向かってくる。
やっぱり致命傷与えないと駄目か?
さっきから俺は斬っているはいるものの致命傷にならないようにしている。
だが敵の生命力は凄まじく足や肩を斬った程度ではまた立ち向かって立ち上がり牙を向けてくる。
それに既に俺も数ヶ所斬られている。
体力ももうそんな残ってない。
万事休す、か…
いや諦めるなちゃんとけじめつけてねねにあいに行くんだ。
しかし俺は気がつかなかった。
俺は腹を蹴り飛ばされた。
転んだ俺を敵は取り囲んだ。
その輪の中に大将が入ってきた。
大将は息を荒立てながら
「てめぇ、手こずらせやがって!死ねっ!」
刀を振り上げた。
死を確信したその時
ズダァーン
辺りに凄まじい音が響いた。
気がつくと目の前の大将は血を吹き倒れていた。
何だ?何が起こったんだ?
その時
「我領内に蔓延る悪を一掃するのだ!」
辺りに信長の声が響いた。
『おぉーっ』
信長の兵が寺に次々と雪崩れ込んでいく。
信長は俺に歩み寄ってくる。
隣にはねねがいた。
信長は俺に
「助けにきたぞ猿っ」
そう言って戦線に走っていった。
ねねは俺の肩を勢い良く掴んだ。
「バカっ何やってんの?死ぬき?」
「覚悟は…」
「うるさい!」
「けじめつけたかったんだ自分にそうしないとねねに会えないと思ってさ」
そう言って微笑んだ。
ねねの目には涙が浮かんでいた。
「何で…こんなに優しいの…私酷いこと言ったんだよ…」
「好きだからだよ…ねねが好きだから…だから中途半端は嫌だからだからこうして…」
ねねは俺の言葉を遮る様に抱きついた。
「もういい…バカっ…」
俺はねねの背中に手を伸ばした。
「バカでいいよずっと一緒に居てくれれば」
俺は耳元で呟いた。
翌日
清洲城 広間
「コレヨリケッコンノギヲハジメマス」
二人の結婚式は二人のたっての願いで洋風の物になった。
その為宣教師に頼み外人の神父を連れてきたのだ。
見慣れない結婚式に家臣達は大混乱。
恒興は成政に
「何なのだこのおかしな祝言は?」
「分かりませぬ何やら南蛮式の祝言とか何とか…」
「南蛮式…」
結婚式はそんな家臣達を尻目に順調に進んだ。
「ソレデハチカイノコトバ」
神父は二人に目線を送ると
「シンロウハシンプヲツマトシイッショウアイシツヅケルトチカイマスカ?」
俺は神父の目を見て
「はいっ、誓います」
と答えた。
次に神父は
「シンプハシンロウヲオットトシイッショウササエツヅケルトチカイマスカ?」
ねねも力強い目付きで
「はい、誓います」
と答えた。
そして神父は
「ソレデハチカイノキスヲ」
俺たちは向かい合った。
俺が照れているとねねが
「何照れてんの?バカっ」
そう言って唇を近づけた。
ずっと一緒だ
俺は心の中でそう呟き
唇を近づけた。
その日俺たちは夫婦になった。




