第6話 まずは自分を知る
賢者の小屋を、しばらく自分の家として使う。
そう決めた舞だったが。
「……その前に」
机の前に座り、自分の手を見つめる。
この世界に来てから、分からないことが多すぎる。
魔族になった。
魔力は無限らしい。
女神からもらった能力もある。
けれど。
「私って、結局どれくらい強いんだろう」
能力について説明は受けている。
だが、実際にどれくらいのものなのか。
それは試してみなければ分からない。
舞は立ち上がった。
日記の合間に挟まっていた、簡単な生活魔法の記述を思い出す。
「ステータスオープン!」
口にした。
瞬間。
目の前に、半透明の板のようなものが現れた。
「……おお」
舞は思わず身を乗り出した。
ゲームのような画面。
そこに、自分自身の情報が並んでいる。
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【ステータス】
名前:紅山 舞
年齢:0歳
種族:魔族
職業:賢者
レベル:1
STR:1000
VIT:12000
AGI:500
DEX:1000
INT:1000
MND:1000
MP:∞
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【固有能力】
魔力無限
創造術
魔法障壁
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【能力】
召喚魔法
炎魔法~心得~
水魔法~心得~
土魔法~心得~
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「…………」
舞は黙った。
まず目についたのは、年齢だった。
「……0歳」
まあ、そうなるか。
この身体になってから、まだほとんど時間が経っていない。
次に。
「職業……賢者?」
舞は首を傾げた。
自分が賢者と呼ばれるようなことをした覚えはない。
だが、ここまでの状況を考えると恐らく、魔族召喚で生贄となった賢者の影響だろうと考察できる。
「……まあ、そういうものなのかな」
深くは考えないことにした。
それより。
「ステータス……」
数値を見る。
STR1000。
VIT12000。
AGI500。
DEX1000。
INT1000。
MND1000。
「……いや、高いな」
一般知識の本には王国の騎士や冒険者が平均100という記述があった。
レベルは1。
まだ生まれたばかりなのだから、これは当然だろう。
「これから上がっていくのかな」
そう考えると、少し楽しみだった。
ただ。
「ステータスが高いからって、戦えるとは限らないよね」
剣を握ったこともない。
戦闘訓練を受けたこともない。
力があることと、それを上手く使えることは別だ。
「……まあ、必要になったら考えよう」
ステータスを閉じる。
次はスキルだ。
「魔法……」
炎。
水。
土。
闇。
聖。
そして召喚。
ただ、いくつかには「心得」と付いている。
「心得ってことは……」
どうやら「心得」は、その魔法に対する素質があるという意味らしい。
すぐに達人のように使えるわけではない。
「なるほど」
なら、実際に使えるようになるには練習が必要だ。
召喚魔法だけは、なぜか「心得」が付いていない。
「これは何なんだろう」
少し気にはなった。
だが。
「今は後回しでいいか」
次に固有能力を見る。
《魔力無限》。
これは名前の通りだろう。
《魔法障壁》。
「これは……」
魔力で防御膜を張る能力、という説明を女神から受けている。
舞は試しに、掌の前へ意識を集中させてみた。
――薄い光の膜のようなものが、一瞬だけ浮かぶ。
「……できた、のかな」
触れてみると、確かに何かがある。
けれど、すぐに消えてしまった。
「維持するのも、コツがいりそう」
攻撃を受けた時にどこまで防げるのか。
それは、実際に何かにぶつけてみなければ分からない。
「これも、そのうち検証だね」
最後が。
「《創造術》」
舞は机の上に木片を置いた。
まずは簡単なものから試す。
「木材なら……」
木材にはセルロースやリグニン、ヘミセルロースや水分など、様々な成分が含まれている。
どういう物質が含まれていて。
どういう形にしたいのか。
それを頭の中で組み立てる。
「ガレリア」
木片が変化した。
「……できた」
削ったわけではない。
切ったわけでもない。
木材そのものが、舞の思い描いた形へ変わっていた。
「すごい……」
次は石。
できた。
金属。
これもできる。
「じゃあ、これは?」
賢者が残した実験器具を手に取る。
見た目は分かる。
だが、内部がどうなっているのか分からない。
使われている素材も正確には分からない。
「ガレリア」
――何も起きない。
「……やっぱり」
舞は納得した。
知らないものは作れない。
見た目だけでは駄目なのだ。
構造を理解している必要がある。
「ってことは……」
逆に。
知っているものなら。
「かなり自由にできる」
舞は思わず笑った。
自分の知識が、そのまま異世界で武器になる。
「……もっと、この世界のことを知らないと」
地理の本と、一般常識の本。
手元にあるのは、それくらいしかない。
「とりあえず、これを読み終えたら――」
外に出てみよう。
そう思って、舞は本を手に取った。




