↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で街づくり!気合でがんばるぞ!  作者: 吉田松陰(本物)
PR
28/30

第27話 建築ラッシュ

「……家、か」


 舞は、小屋の裏手に広がる空き地を眺めた。


 パブロのための家。


 考えてみれば、これまで作ってきたものは、道具や設備ばかりだった。


 ちゃんとした建物を、一から手がけるのは初めてだった。


「……ちょっと、燃えてきたかも」


 物を作ることが好きな性分は、対象が建物になっても変わらないらしい。


 舞は俄然、張り切り始めた。


 ◇


 まずは木材の調達から。


 周辺の森で、太くまっすぐな木を選んで伐り出す。


「……ただの木材じゃ、面白くないよね」


 舞はふと、以前の発見を思い出した。


 小屋周辺の木材が、魔素を浴び続けて変質していたこと。


「……あれ、狙ってやったら面白いんじゃない?」


 これまでは、垂れ流した魔力による、あくまで偶然の産物だった。


 それを、今度は意図的にやってみる。


 伐り出した木材に手をかざし、強めの魔素を意識して注ぎ込む。


「創造術《ガレリア》」


 木の内部で、繊維の並びがみるみる密になっていく。


 鑑定魔道具を向けると、以前見たものと似た反応が返ってきた。


「……お、強度上がってる」


 通常の木材よりも、明らかに硬く、粘りがある。


 これなら、建材として申し分ない。


「よし、この調子でどんどん作ろう」


 ◇


 骨組みの設計にも、前世の知識を活かした。


 柱をただ均等に並べるのではなく、荷重のかかり方を考えて配置する。


 筋交いを斜めに入れ、揺れに強い構造にする。


「……耐震設計、ってやつだね」


 地震があるかどうかは分からない。


 それでも、備えておくに越したことはなかった。


 窓には、これまで作ってきたガラスを使う。


 二重構造にはしなかったが、それでも十分な採光が確保できた。


 ◇


 完成までには、数日を要した。


 パブロも、大工仕事を手伝ってくれた。


 執事技能というスキルには、そういうことまで含まれているらしい。


「……できた」


 小屋よりも一回り大きな、木造の家が姿を現した。


 しっかりとした骨組み、明るい窓、丁寧に仕上げられた屋根。


「パブロ、どう?」


 舞が振り返ると。


 パブロは、その場に立ち尽くしたまま、動かなかった。


「……パブロ?」


「――申し訳ございません」


 声が、震えていた。


「あなた様が、この身のために、御自ら家を……」


「……あ、泣いてる」


 パブロの目から、大粒の涙がこぼれ落ちていた。


「こんな……こんな栄誉が、この身にあってよいものか……!」


「いや、そんな大袈裟な」


「大袈裟などではございません!」


 パブロは、家の柱に縋りつくようにして、しばらく泣き続けた。


「……情緒、本当に忙しいね、あなた」


 舞は、少し呆れながらも、悪い気はしなかった。


 ◇


 パブロの家が完成すると、舞の中で建築熱はさらに高まっていた。


「……もっと、大きいの作りたいな」


 工場棟。


 実験棟。


 これから工業化を進めるなら、まとまった作業スペースが必要になる。


「木造じゃ、そろそろ限界がありそう」


 舞は、前世の知識にある、もっと頑丈な建材を思い浮かべた。


「――鉄筋コンクリートだ」


 ◇


 材料は、これまでの探索で少しずつ蓄えてきたものが使えた。


 鉄分を含んだ岩や、崖で採れる砂鉄。


 魔物の骨から取り出したカルシウム。


 そして、森の外れで見つけていた石灰岩。


「……揃ってるじゃん、材料」


 舞は、頭の中で組み立てを整理する。


 コンクリートの主成分はセメントだ。


 セメントは、石灰岩を焼いて作る生石灰《せいせっかい》――酸化カルシウム――に、粘土などの成分を加えて作られる。


 本来なら、高温の窯で長時間焼き続ける工程が必要になる。


「でも、これも飛ばせるよね」


 石灰岩の構造。


 目指す生石灰の構造。


 どちらも分かっている。


「創造術《ガレリア》」


 舞は石灰岩の欠片に手をかざした。


 構造がじわりと組み替わり、白い粉末へと変わっていく。


「……できた」


 同じ要領で、花崗岩から得た成分を使い、セメントに必要な珪酸塩の成分も作り出す。


 粉末を混ぜ合わせ、水を加える。


「これで、コンクリートの素は完成」


 鉄筋には、これまで精錬してきた鉄を使う。


 太さや形を整え、骨組みとして組み上げていく。


 ◇


 建設には、総力戦が必要だった。


「みんな、力を貸して!」


 舞の号令に、庭の面々が一斉に応える。


 ビッグスライムたちが、大量の砂利や砂鉄を運び込む。


 ウィザードスライムが、水を運ぶ手伝いをする。


 バスタをはじめとした力自慢の面々が、型枠の設置を担う。


 パブロは、細かな調整や仕上げを一手に引き受けてくれた。


 舞自身も、ガレリアで骨組みを組み、コンクリートを流し込み、固まる工程を見守る。


 何日もかけて、少しずつ、しかし着実に形になっていった。


「……できた」


 完成したのは、想像していたよりずっと大きな、二棟の建物だった。


 一つは、工場棟。


 もう一つは、実験棟。


 鉄筋コンクリートの無骨な外観は、これまでの木造の建物とは、まるで別物の存在感を放っていた。


「……壮観だな」


 舞は、二つの建物を見上げて、思わず呟いた。


 中は、まだがらんとしていて、機械の一つもない。


「……何から入れようかな」


 真っ先に思い浮かんだのは、パブロの糸だった。


「……紡績機《ぼうせきき》、作ろうかな」


 あの糸を、機械で織り上げれば、布ができる。


 動かす人手も、スライムたちに任せればいい。


「……そのうち、ちゃんと考えよう」


 舞は、空っぽの工場棟を見渡しながら、小さく笑った。


 できることが、また一つ増えようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。