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異世界で街づくり!気合でがんばるぞ!  作者: 吉田松陰(本物)
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第2話 目覚め

 光が消えた。


「…………」


 目を開ける。


 薄暗い。


 まず、それが最初の感想だった。


 白い空間にいたはずなのに、今度は石造りらしい壁が目に入る。


 天井はそれほど高くない。


 壁際には棚があり、机の上には見たことのない器具や薬瓶が置かれている。


「……ここが異世界?」


 どうやら、無事に転生したらしい。


 舞はゆっくりと身体を起こした。


 その瞬間。


「…………」


 身体に触れる。


 肩。


 腕。


 胸元。


 そして――。


「…………服は?」


 何も着ていなかった。


「…………」


 数秒、固まる。


「いや、服くらい用意しておいてよ!」


 思わず叫んだ。


 もちろん返事はない。


 女神はここにはいない。


「……本当に最後まで適当なんだから」


 ため息をつきながら立ち上がる。


 まぁ虫になるよりマシか……人間でよかった。


 ひとまず安心したそのときだった。


 すぐ近くに、人が倒れていることに気づいた。


「……え?」


 舞は慌てて近寄った。


 老人だった。


 白く長い髪。


 伸びた髭。


 身体はひどく痩せ細っている。


 立派なローブを身につけ、杖を握ったまま、魔法陣のすぐ横に倒れていた。


「大丈夫ですか?」


 声をかける。


 返事はない。


 肩を軽く揺する。


「もしもし?」


 やはり動かない。


 舞は老人の首元に手を当てた。


「…………」


 脈がない。


 呼吸もない。


「……死んでる」


 間違いなかった。


 この老人は、すでに死んでいる。


 しかも。


 身体が異様なほど干からびていた。


 まるで身体の中にあったものを、すべて吸い取られてしまったような姿だった。


 足元を見る。


 そこには大きな魔法陣が描かれている。


 舞が立っていた場所だ。


 そして、そのすぐ横で死んでいる老人。


「……私を召喚した人、なのかな」


 状況だけを考えれば、この老人が舞を召喚したのだろう。


 けれど、もう聞くことはできない。


「……とりあえず」


 舞は自分の身体を見る。


「服を探そう」


 裸のままでは何もできない。


 部屋の中を見回す。


 衣服らしきものは見当たらない。


 棚を開けても、書類や薬瓶ばかり。


 別の場所を探していると、ふと老人のローブが目に入った。


「…………」


 舞は老人を見る。


 もう亡くなっている。


 そして、舞は裸。


「……ごめんなさい」


 少しだけ申し訳なく思いながら、舞は老人のローブを借りることにした。


 身体を通してみる。


「……大きい」


 袖は余るし、裾も長い。


 それでも。


「……ないよりはマシか」


 舞は袖をまくった。


 これで何とか人前に出られる格好にはなった。


 ……人前に出る予定は、今のところないけれど。


「さて……」


 舞は部屋を見回した。


 ここは一体どこなのか。


 そして、自分は何者として転生したのか。


 それを確認しなければならない。


 そこで、部屋の隅に鏡があることに気づいた。


「鏡……」


 舞は鏡の前まで歩いていく。


 そして。


「…………え?」


 そこに映っていたのは――舞の知っている舞ではなかった。


 薄い青色の肌。


 紫色の髪。


 頭から伸びる二本の角。


 そして、黒い白目。


 その中央には、金色の瞳。


 口元には尖った歯。


「…………」


 舞は鏡に近づいた。


 鏡の中の少女も近づく。


 右手を上げる。


 鏡の中の少女も右手を上げた。


 頬を触る。


 ちゃんと感触がある。


「……魔族?」


 思わず呟いた。


 女神から聞いた話を思い出す。


 この世界には、人間以外にも様々な種族がいる。


 どうやら自分は、その中の一つになったらしい。


「……本当に魔族になったんだ」


 角に触れる。


 髪に触れる。


 自分の顔を眺める。


 姿は完全に人間ではない。


 けれど、不思議と嫌な感じはしなかった。


「……まあ、死んだんだし」


 そう呟いてから、舞は少し考えた。


「いや、よく考えたら……」


 自分は魔族になった。


 目の前には死体がある。


 服は借り物。


 そして、この世界について何も知らない。


「……前途多難だなぁ」


 舞は小さくため息をついた。


 しかし、落ち込んでいても仕方がない。


 まずはここがどこなのか調べよう。


 舞は借りたローブの裾を整えた。


 そして、部屋の奥へと歩き出した。

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