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異世界で街づくり!気合でがんばるぞ!  作者: 吉田松陰(本物)
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第12話 解体と塩漬け

 小屋まで、ブラックバイソンの死体を運ぶ。


「……でかっ」


 思わず声が出た。


 人間の何倍もありそうな図体だ。


 ステータスが高いことは知っていた。


 でも、実際にこの重さのものを軽々と担げてしまうと、数字と実感がようやく繋がった気がした。


「魔族の体……伊達じゃないんだ」


 汗ひとつかかずに小屋の前まで運び終える。


 舞は自分の細い腕を見下ろして、少しだけ苦笑した。


 見た目とのギャップがすごい。


 さて。


 問題はここからだった。


「……解体、したことないんだよね」


 前世では、肉は解体済みのものを買っていた。


 牛の捌き方なんて、動画で見た記憶が薄っすらあるくらいだ。


「うろ覚えでも、やるしかないか」


 道具箱から、別の予備のナイフを取り出す。


 崖で刃こぼれさせてしまった相棒は、布に包んで机の隅に置いてある。


「……お前は、後でちゃんと直すから」


 誰に言うでもなく、そう呟いた。


 関節の位置を意識しながら、慎重に刃を入れていく。


 思ったよりも力がいる。


 しかし力なら余っている。


 問題は正確さの方だ。


 何度か刃の入れ方を間違えて、余計な場所まで切ってしまう。


「あー……もったいない」


 綺麗とは言い難い出来だった。


 それでも、時間をかけて少しずつ形を整えていく。


 肉を切り分けていく途中。


「……ん?」


 指先に硬いものが触れた。


 体内、心臓に近い場所。


 握りこぶし大の、黒っぽい石。


 わずかに、指先が痺れるような感覚がある。


「これ……」


 鑑定用の魔道具を向けてみる。


──────────────────────

《魔石《ませき》(大)》


魔物の体内に生成される、魔力の結晶。

質・大きさは個体の強さに比例する。

魔道具の素材、燃料などに利用される。

──────────────────────


「魔石って、本当にあるんだ」


 本にも、名前だけは載っていた。


 その実物と、ようやく繋がった。


 舞は小さく興奮しながら、その石を布にくるんで別に取っておいた。


 解体は続く。


 結局、あまり褒められた仕上がりにはならなかった。


 それでも肉自体はきちんと取れた。


 問題は、その量だった。


「……多すぎる」


 一人分の食事量とは、桁が違う。


 このままでは腐らせてしまう。


「保存しないと」


 舞は小屋の中を探し回った。


 物置に、大きな岩塩の塊があったのを思い出す。


 ガレリアで細かく砕き、肉にまぶしていく。


 塩漬け。


 余った分は薄く切って、軒下に吊るす。


 干し肉。


 前世の知識でも、これくらいはできる。


「塩と乾燥……基本だもんね」


 作業をしながら、舞はふと思いついた。


「そういえば、リンとかも取れたら肥料になるかな」


 骨や血液には、リンや鉄など様々な成分が含まれているはずだ。


 ガレリアで抽出できれば、色々と応用が利く。


 試してみる。


 ――何も起きない。


「……あれ?」


 もう一度試す。


 やはり反応がない。


「なんで……」


 木材や鉱物のときとは違う手応えのなさだった。


 組成は分かっているつもりだった。


 それなのに、うまく捉えられない。


「この世界の生き物だから、組成が微妙に違うのかな」


 魔素の影響で、地球の生物とは構造が少し違うのかもしれない。


 考えたところで、今の情報だけでは答えは出なかった。


「……まあ、できないものは仕方ないか」


 舞は素直に諦めることにした。


 分からないことを、無理に今すぐ解決する必要はない。


 塩漬け干し肉、それだけでも十分すぎる収穫だ。


 作業を終える頃には、日はすっかり傾いていた。


 舞は塩まみれの手を眺めながら、小さくため息をついた。


「……これ、毎回一人でやるのはきついな」


 解体も、運搬も、保存作業も。


 全部一人でこなすのは、想像以上に手間がかかる。


「……誰か、手伝ってくれる人がいたらなぁ」


 誰もいない小屋の前で、舞はそう呟いた。


 もちろん、返事をする者はいない。


 軒下に並んだ干し肉が、夕風に揺れていた。

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