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異世界の森にダークエルフが倒れていたから助けてみた  作者: 積と和〝


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第7話 魔王城へ向かう一行

 魔王が消えたあと、王城の大広間は、まだ静まり返っていた。

 誰も動かない。

 誰も喋らない。

 賢者がぽつりと言った。

「……本当に行くのですか」

 俺は答えた。

「行かないと王都消えるんだろ」

 賢者はうなずいた。

「ええ」

 王様も真剣な顔だった。

「本来なら、国を挙げて軍を動かす」

 だが首を振る。

「しかし魔王相手では意味がない」

 リィゼが小声で聞く。

「じゃあ、おじさん一人?」

 王様は即答した。

「いや」

 立ち上がる。

「王国としても支援する」

 騎士団長が前に出た。

 赤いマントの女性。城壁で見た人だ。

 鋭い目。背が高く、剣を背負っている。

「私は王国騎士団長、レオナ」

 俺を見る。

「あなたに同行する」

 兵士たちがざわつく。

「団長が!?」

 レオナは続けた。

「魔王城の場所は北の魔界領域」

 地図を広げる。

「途中には魔王軍の砦が三つ」

「普通なら軍隊でも突破は難しい」

 俺は言った。

「殴ればいい?」

 レオナは少し黙った。

 そして言った。

「……そうかもしれない」

 リィゼが笑った。

「簡単」

 賢者が頭を抱えた。

「簡単ではありません!」


 その日の夜。

 王城の客室。

 俺とリィゼは豪華なベッドの部屋にいた。

「落ち着かない」

 俺は言った。

「森のほうがいい」

 リィゼも同意した。

「ベッド柔らかすぎ」

 そのとき。ノック。

 コンコン。扉が開く。

 王女エレナだった。

 寝間着。

 金髪がゆるく結ばれている。

「少し話してもいいですか?」

「どうぞ」

 エレナは椅子に座った。少し真剣な顔。

「魔王城に行くんですよね」

「たぶん」

 王女は俺を見た。

「怖くないんですか」

 俺は少し考えた。

「ブラック企業の上司よりはマシ」

「?」

 説明が難しい。

 リィゼが言った。

「おじさん、たぶん世界で一番強い」

 王女が苦笑した。

「みんなそう言ってます」

 少し沈黙。そして王女は言った。

「実は……」

 声が小さくなる。

「魔王には娘がいるって噂があるんです」

「娘?」

「はい」

 王女は続けた。

「魔王軍で一番危険と言われている存在」

 賢者でも詳しく知らないらしい。

 名前だけ伝わっている。

「魔王姫」


 リィゼが言った。

「その人、強いの?」

 王女はうなずく。

「魔王より危険という話もあります」

 俺は言った。

「親より強いの?」

「わかりません」

 王女は少し笑った。

「でも」

 俺を見る。

「あなたなら大丈夫な気がします」


 翌朝。王都の北門。

 馬車と騎士団が準備していた。

 レオナ騎士団長が腕を組んでいる。

「準備はいいか」

 俺は荷物を持った。

 中身はパンと干し肉。さすがに和食は無理だ。

「遠足みたいだな」

 リィゼが言った。

「ピクニック」

 そのとき賢者が走ってきた。

「待ちなさい!」

 杖を突きながら近づく。

「これを」

 小さな水晶を渡された。

「魔王城の結界を突破する鍵です」

 俺は受け取った。

「ありがとう」

 賢者は真剣な顔で言った。

「気をつけてください」

 そして小さく呟く。

「もしあなたが負ければ」

 北の空を見る。

「この世界は終わる」

 俺は言った。

「あんまプレッシャーかけないで」


 馬車が出発する。

 王都が遠ざかっていく。

 リィゼが外を見ていた。

「おじさん」

「ん?」

「魔王、殴る?」

「たぶん」

 リィゼは頷いた。

「じゃあ大丈夫」

 その頃――遥か北の魔王城。

 巨大な黒い城の玉座の間に魔王ベルザードが座っていた。

 部下が報告する。

「人間が出発しました」

 魔王は笑った。

「来るか」

 そのとき後ろの扉が開いた。

 小さな足音。銀色の髪の少女が入ってくる。

 黒いドレス。赤い瞳。

 魔王が言った。

「来たか」

 少女はつまらなそうに言った。

「その人間」

 椅子に座る。

「私が殺していい?」

 魔王は少し考えた。そして笑う。

「好きにしろ」

 少女の名前は――魔王姫ルシア。

 魔界最強の存在だった。

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