表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森の底に瀕死のダークエルフが落ちていた件  作者: 積と和〝


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/14

第5話 おじさん、英雄にされる

 王都グランベル。城壁の上。

 黒いドラゴンが遥か彼方に吹き飛ばされてから――十秒。

 完全な沈黙が支配していた。

 兵士がぽつりと言った。

「……勝った?」

 別の兵士。

「ドラゴン……消えたよな?」

 三人目。

「夢?なのか」

 俺は城壁の石を払いながら立ち上がった。

「いてて」

 リィゼが歩いてくる。

「着地、ちょっと派手だった」

「城壊してない?」

「うん、ギリギリ」

 それならいい。

 そのとき、ガクガク震えていた魔王軍の将軍バルグラが、ようやく叫んだ。

「ば、馬鹿な!!」

 俺を見る。完全に怯えている。

「黒竜グラディウスを……拳で……!?」

「いや、まあ」

 俺は頭をかく。

「ちょっと強く殴っただけ」

 将軍は顔面蒼白だった。

「こんな人間がいるはずが――」

 そのときリィゼが前に出た。

 静かな声。

「いるよ」

 銀髪が風で揺れる。

「ここに」

 将軍の顔が引きつった。

「ダークエルフ……!」

 魔力が膨れ上がる。空気が震える。

 兵士たちがざわついた。

「な、なんだこの魔力……」

「息が苦しい……!」

 リィゼは静かに言った。

「帰るなら今」

 将軍は後退った。

 完全に戦意が消えている。

 だが次の瞬間――空が歪んだ。

 黒い魔法陣。

 バルグラの背後に巨大なゲートが開く。

 将軍は笑った。

「覚えておけ、人間」

 指を差す。

「魔王様は、お前を必ず殺す」

 そう言って。

 魔法陣に飛び込んだ。

 消えた。城壁に風だけが残る。

 俺はため息をついた。

「帰ったな」

 リィゼが頷く。

「うん」

 そして兵士たちが一斉に叫んだ。

「勝ったぞ!!」

 歓声が爆発した。

「王都を守った!」

「英雄だ!!」

 ちょっと待て。

 これは嫌な流れだ。


 一時間後の王城。

 大広間は完全にイベント会場だった。

 貴族、騎士、兵士。全員集まっている。

 王様が立ち上がる。

「本日!」

 声が響く。

「王都を救った英雄を称える!」

 拍手。

 ドドドドド。

 俺はリィゼに小声で言った。

「帰りたい」

「うん、でも、もう無理」

 王様が俺を指差す。

「名を聞こう」

 全員の視線。

 俺はしぶしぶ答えた。

「佐倉潤也」

 王様は高らかに宣言した。

「今日より!」

 嫌な予感しかしない。

「サクラジュンヤを――」

 一拍。

「王国特別冒険者、Sランクに任命する!」

 会場が爆発した。

「Sランク!?」

「いきなり!?」

「伝説クラスだぞ!」

 俺は言った。

「断れる?」

 王様即答。

「無理」


 ですよねー。

 次に王様はリィゼを見る。

「そしてダークエルフの娘」

 リィゼは少し警戒した。

 だが王様は優しく言った。

「君も王国の客人として迎える」

 リィゼは目を丸くした。

「……いいの?」

「王女の命の恩人だ」

 王女エレナが笑う。

「それに友達です」

 リィゼは少し照れた。


 そのとき。

 奥からゆっくり歩いてくる人物がいた。

 白いローブ。

 長い杖。

 ギルドにいた老人。

 賢者だった。

 彼はリィゼをじっと見つめる。

「やはり……」

 震える声で言う。

「間違いない」

 周囲が静まる。

 賢者は言った。

「この娘の魔力量は――」

 杖を震わせながら。

「世界樹級」

 貴族たちが騒然となる。

「世界樹!?」

「神話クラスだぞ!」

 賢者は続けた。

「もし暴走すれば」

 王都を見回す。

「この国は消える」

 空気が凍る。

 俺はリィゼを見る。

「暴走する?」

 リィゼは首を振る。

「しない」

 少し考えて。

「たぶん」

 たぶんって言った。

 王様が頭を抱えた。

 だが賢者は笑った。

「安心です」

 俺を指差す。

「このおじさんがいる限り」

 全員が頷いた。

「確かに」

「それはそう」

「むしろ魔王が危ない」


 俺は言った。

「魔王と戦う予定ないんだけど」

 そのとき――空が暗くなった。

 王城の窓の外に巨大な黒い影。

 城の上空に直径数百メートルの魔法陣が浮かんでいた。

 賢者の顔色が変わる。

「まさか……」

 空から声が響く。低く、威圧的な声。

「人間よ」

 王都全体に響く。

「私の将軍を倒したのは誰だ」

 王城が揺れる。

 賢者が震える。

「この魔力……」

 かすれた声で言った。

「魔王……」

 王都に、ついに魔王が現れた。

 俺は空を見上げた。

 そして一言。

「飯、冷めるな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ