第3話 おじさん、王都を震撼させる
王都グランベル。
石畳の大通りを歩きながら、俺は感心していた。
「すげえな」
屋台、酒場、武器屋、魔道具店。
完全にファンタジーRPGの街である。
リィゼは隣でキョロキョロしていた。
「人、多い」
「森の何倍だ?」
「百万倍」
それは盛りすぎだろ。
そのとき、俺の腹が鳴った。
グゥゥゥゥ。
「……」
「……」
リィゼが言った。
「まずご飯」
「うん、だな」
だが――
屋台のおっさんが言った。
「お金は?」
「ない」
「帰れ」
秒で追い返された。
「世知辛い」
「世知辛い」
二人で頷く。
そのとき、近くの建物が目に入った。
巨大な看板ーー剣と盾のマーク。
冒険者ギルド。
「……あれだな」
「うん」
だいたい異世界の基本施設である。
ギルドの扉を開けた。
ガヤガヤとした空気。
酒、鎧、怒号、笑い声。
完全にテンプレだ。
受付嬢がこちらを見る。
「ようこそ冒険者ギルドへ。登録ですか?」
「はい」
「二人とも?」
「たぶん」
受付嬢は書類を出した。
「ではまず、魔力測定と簡単な戦闘試験を行います」
水晶玉が置かれる。
「手をかざしてください」
まず俺が手を置く。
ピシッ。
水晶にヒビが入った。
「……え?」
受付嬢が固まる。
「すみません、もう一度」
もう一度。
バキィン。
水晶、爆散。
ギルド内が静まり返った。
「……測定不能」
受付嬢が震えながら言った。
「次、お願いします」
リィゼが手を置く。
次の瞬間――水晶が光った。
ドォォォォン!!
光柱が天井まで突き抜けた。
ギルドの窓が全部震える。
冒険者たちが叫ぶ。
「なんだこれ!?」
奥の部屋から老人が飛び出してきた。
白いローブに長い髭。
どう見ても賢者。
老人は水晶を見て、顔色を変えた。
「ありえん……」
震える声で言う。
「その魔力量……」
リィゼを指差した。
「世界樹級だ……」
ギルドが騒然となる。
「世界樹!?」
「伝説クラスだぞ!」
リィゼは首をかしげた。
「そんなすごい?」
「めちゃくちゃすごい」
俺が答えた。
そのときだった。
ギルドの扉がバンッと開いた。
兵士が飛び込んでくる。
「緊急依頼だ!」
全員が振り向く。
「王女殿下が誘拐された!」
一瞬で空気が凍った。
「犯人は王都外の山に潜伏!」
「しかも護衛に――」
兵士が叫ぶ。
「Sランク魔物、デスオーガ!」
冒険者たちがざわつく。
「無理だろ……」
「騎士団でも危ない」
そのとき、受付嬢が小さく言った。
「……今なら」
全員の視線が俺に集まる。
「この人がいます」
やめろ。
冒険者たちがヒソヒソ言う。
「水晶壊したやつだ」
「怪物だろ」
俺はため息をついた。
「飯代くれる?」
兵士が即答した。
「出します!」
「じゃあまあ、行こうか」
俺は立ち上がった。
リィゼも立ちあがる。
「私も手伝う」
数十分後には王都の外れにある山に来ていた。
洞窟の前。
高さ三メートルの怪物が立っていた。
こいつ、筋肉の塊だ。
それに牙だらけ。
デスオーガだ。
「グオオオオ!!」
リィゼが言う。
「普通はSランクパーティが必要なの」
「なるほど」
俺は拳を握った。
オーガが突っ込んでくる。
「グオオオ!」
俺は――殴った。
ドゴォォォォォン!!!!
衝撃波で地面が割れる。
デスオーガは空へ。
そのまま山の向こうへ消えた。
星になった。
そして沈黙。
見ていた兵士が震える。
「……Sランク魔物を」
「ワンパン……」
リィゼが言った。
「おじさん、加減した?」
「ああ、もちろん“した”」
洞窟の中に縄で縛られた少女がいた。
金髪に豪華なドレス。
どう見ても王族だろ。
少女は目を丸くした。
「え……?」
俺は丁寧に縄をほどく。
「大丈夫か」
少女は呆然と俺を見た。
「助けてくれたの……?」
「たまたま、な」
少女は立ち上がった。
深く頭を下げる。
「私はこの国の王女、エレナです」
そして言った。
「あなたを、王城に招待します」
その頃――王城では。
騎士団長が報告を聞いていた。
「デスオーガが……」
騎士が震えながら言う。
「拳一発で吹き飛びました」
騎士団長は笑った。
「やっぱり面白い」
彼女は言った。
「そのおじさん、絶対に王国に引き入れる」
一方の俺は…。
「腹減ったな」
「うん、私も」
リィゼと王女の三人で、普通に山を下りていた。
この数日後。
王都は、さらに大騒ぎになる。
なぜなら――魔王軍が動き始めるからだ。




