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森の底に瀕死のダークエルフが落ちていた件  作者: 積と和〝


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2/14

第2話 王都へ、おじさん門前で止められる

 翌朝、森の霧がまだ残る中、俺とリィゼは歩いていた。

「王都まであとどれくらいだ?」

「半日くらい」

「へえ、意外と近いな」


 リィゼは少し考えてから言った。

「でも問題があるの」

「なんだ?」

「ダークエルフ、王都だと珍しい。たぶん、かなり目立つ」


 そりゃそうだろうな。

 黒い肌に銀髪、長い耳。どう見てもファンタジーのレア種族だ。

「フードとかないのか」

「あるよ」

 リィゼは荷物から黒いローブを取り出した。

 フードをかぶると、耳はほとんど見えない。

「これで大丈夫かな」

「便利だな」

 そのとき――

【スキル《鑑定》が発動しました】

 目の前のリィゼの頭の上に、なぜか文字が見えた。


 リィゼ

 種族:ダークエルフ

 年齢:120

 戦闘力:S

 魔力量:SS

 好感度:78


「……120?」

「どうしたの?」

「いや、なんでもない」

 エルフ系は長命種だったな。

 見た目はどう見ても15歳くらいだが。


 そして最後の表示。

 好感度78。

「これ高いのか?」

「ん、なにが?」

「いや独り言」

 この世界、U(ユーザ)I(インターフェイス)が雑すぎる。


 数時間後。

 森を抜けると、巨大な城壁が見えた。

「おお……」

 思わず声が出る。

 高さ20メートルはありそうな白い壁。

 その向こうに塔や屋根が無数に並んでいる。


「あれが王都グランベル」

 リィゼが言った。

「この国で一番大きい街なんだよ」

 門の前には長蛇の列ができていた。

 商人、旅人、冒険者っぽい連中。


 そして当然――

 門番。

 鎧を着た兵士が一人一人チェックしている。

「身分証を」

「次」

「荷物を見せろ」

 ……嫌な予感しかしない。

 俺はリィゼに小声で聞いた。

「身分証とかある?」

「もちろん、“ない”でしょ」

「……俺もない」

「…うん」

 ああ、終わった。

 順番が近づいてくる。

「次!」

 門番の前に出る。

 兵士は俺たちをじろじろ見た。

「身分証は?」

「ありません」

「出身は?」

「森です」

「ふざけてるのか?」

 怒られた。

 そのとき後ろの兵士がリィゼを見た。


「……待て、フードを取れ」

 リィゼが小さく息を飲む。

 ゆっくりフードを外す。

 銀髪がさらりと落ちた。

 兵士の目が見開く。


「ダークエルフ……!?」

 周囲がざわつく。

「奴隷商人に報告だ!」

「捕まえろ!」

 うわぁ。最悪の展開。

 俺は頭をかいた。


「なあリィゼ」

「なに?」

「これ、殴っていいか?」

 リィゼは真顔で言った。

「ほどほどに、で」

 了解。

 兵士が槍を向けてくる。

「抵抗するな!」

 その瞬間――

【スキル《威圧おじさん》発動】


 ドンッ

 空気が震えた。

 兵士たちが一斉に固まる。

「……え?」

「体が……動かない……」

 俺は普通に歩いて門をくぐった。

 リィゼもついてくる。

 門番たちは全員フリーズしたままだ。


 門の中。巨大な大通り。

 露店、馬車、人の波。

 完全にファンタジーRPGの王都だった。

「入れたな」

「うん」

 リィゼは少し笑った。

「普通は入れないからね」

 だろうな。

 そのときーー遠くの建物から、赤いマントの女性がこちらを見ていた。

 鋭い目。胸には王国の紋章。


 彼女は隣の騎士に言った。

「今の見たか?」

「はい、騎士団長」

「門番十人を気絶させた男」

 騎士団長は興味深そうに笑った。

「面白い」

 彼女は言った。

「捕まえて連れてきなさい」


 その頃俺は。

「まず飯だな」

「賛成」

 完全に観光気分だった。


 そしてこの数時間後。

 王都最強の騎士団が、世界最強のおじさんと出会うことになる…のだが。

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