第11話 正体不明の魔物
田沼と若宮は宿泊施設に手荷物を置いてホログラムパッドをデスクの上に広げた。
惑星間データを確認したあと、田沼は若宮のデータ結果を待つ。
助手の若宮は月データと地震データを比較して無言で整理を続けている。
「先生、データでは、大きなピークが月に四回あるのでーー 惑星次第では状況が大きく変わります」
「マグマへの影響が最小限ならいいんですがーー 」
「海外の大地震が火山噴火の引き金になった例もあるので心配です」
「若宮さん、ここの神聖神社でお祈りをしませんか」
「先生、神頼みしかありませんね」
田沼と若宮は神聖神社を目指し宿をあとにする。
女学園の裏手を抜け芝生の上をショートカット。
神社の小さな赤い鳥居が見えた。
研究者の田沼と若宮の心情は複雑だった。
「先生、時間あるといいですね」
「そうね、若宮さん、祈りましょう」
鈴の音が境内に広がる。
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徳田康代は、生徒会執務室の青いソファで一息付いた。
天女の静女は康代の隣に腰掛け寛いでいる。
窓際の花瓶に夕日が反射して、静女の紫色の髪が妖艶に光って美しい。
「康代、どのくらいでござったか」
『静女、長くて三か月と田沼博士が言ってたわ』
「あまり、時間ないでござるな」
「なんとかしないと・・・・・・ 」
康代は小さなため息をついた。
黒猫の神使セリエが康代の前に現れた。
「どうじゃったかにゃ、康代」
『セリエ様、あまり長くありません』
「苦しいの、なんとか頑張ってくれにゃ」
セリエは消えて光になった。
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「康代、今のは・・・・・・」
静女が目を丸くしている。
『神使のセリエさまですわ』
「まるで忍者でござるな」
『静女の変身も忍者よね』
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神聖女学園の女子高生、中学生が校庭に集まっている。
六月中旬には珍しい、少し早い神聖学園都市のお祭りが始まったからだ。
ショッピングセンターに近い一角が会場になっていた。
一般開放された学園には若い男女の笑い声があった。
神聖神社のお祭りは陰陽師秋野晴美の発案で数年前から開催されていた。
今夜は花火大会が予定され、芝生の上にはレジャーシートが沢山敷かれている。
エリアの中央に盆踊りの櫓があった。
櫓の上では神聖女学園お祭り部の生徒たちが法被姿で太鼓を叩いている。
「すみません。盆踊りはいつから始まりますか」
「もう少しあとですね」
「ありがとうございます」
下駄に浴衣姿の小さな女の子の背中の帯には、朝顔の絵柄の団扇が帯に挟んであった。
しばらくして、若者向けのテンポの速い音楽が流れ始める。
[ヒューどーん!パーン]
花火が南側のサッカーグランドの上で、いくつもの花火が炸裂しては歓声が上がった。
花火の火薬の臭いが風で運ばれていた。
「わー、綺麗」
[ヒューどーん!パーン]
「すご〜い」
[ヒューどーん!パーン]
[ヒューどーん!パーン]
今度は、会津藩の盆踊りが始まった。
踊れる人は見よう見真似で踊りの輪に参加した。
『田沼先生も踊られますか』
「大統領、私は、見る方が楽しいのでやめて起きます」
田沼と若宮は、先日の大統領のご厚意に甘えて学園都市に転居されたばかりだ。
残っている家財などは、神聖グループの自動配送システムが運搬してくれる手筈になっていた。
僅か百五十年の間に皇国の物流システムは変わった。
通称アイと呼ばれるシステムがすべてを処理している。
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学園都市の大型ホログラムディスプレイにニュースが流れた。
「何でしょうか」
[正体不明の魔物が永畑町の立ち入り禁止エリアに出現]
「うそー」
「信じられない」
「死んだクソ議員の化け物か」
「きっと幽霊よ」
ざわめきがしばらく続いた。
会場ざわめきの中で康代はセリエにテレパシーを送る。
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三日月未来




