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1−4 記憶喪失のルシア

 魔術による火球がイーザを襲う。


「下がって!」


 だがすんでのところで、彼の身体はぐっと引っ張られた。入れ変わる様に前に出たエリスは


「はぁ!」


 と、ずっと手にしていた木棒を横一閃に薙ぎ払う。

 すると火球は、それだけで千々に裂けた。


(この火球、なんだ…? 脆い)


「へ、へぇ…私の中級魔術を棒切れでたたっ斬るなんて、アンタ中々やるじゃないの」


 紅蓮の瞳の悪魔が、やや狼狽した様子で言った。


(中級魔術だと? にしては、芯が無さすぎるが)


「マスターイーザ」


 エリスは振り向きもせずに主に告げる。


「おう、なんだ?」


「雑魚かもしれません」


 彼女にしては珍しく、相手を侮る発言をした。

 イーザにしてみれば、エリスが言うくらいだしこりゃあ秒読みかな、といったところだろう。


「だぁれが雑魚だって!? よし、よーし分かったじゃあ手加減はヤメよ!」


 この時点で負け確みたいな雰囲気を漂わせる赤悪魔だったが、背の翼を広げた途端にエリスが目を剥く。

 その変化は人間であるイーザにも感じ取れた。


 手加減はヤメ、の言葉は負け惜しみなどではなかった。

 肌をビリビリと震わせる程の、魔力の奔流が彼女から溢れ出したのだ。

 雑魚、と称した小物のそれでは断じてない。

 魔力の循環が気流を生み、暴風が二人に吹き付ける。


「前言撤回ですね。こちらも本気を出してよろしいですか?」


「ああ。でも殺すなよ」


「…承知しましたが、それはあの小娘次第かと」


 相手に向き直ったエリス・ブラッドは、棒切れを持つ指に力を込めた。

 悪魔の両手の平に、放出された魔力が一転、収束してゆく。

 それは次第に炎へと変じ、サイズは肉体の大きさを優に超えていた。


「どう!? これが私の最強魔術…消し飛びたくなかったら−−」


 その台詞を、悪魔は最後まで言うことは出来なかった。

 刹那、イーザの前に立ち塞がっていたエリスの姿が、消失した。

 悪魔は目を離した訳ではなく、また瞬きをした訳でもない。


 まるで初めからそこに存在していなかったかの様に消えた。

 そして…


「動くな」


 と。

 まるで初めからそこに存在していたかの様に。

 エリスは悪魔の背後に居て。

 木棒を、彼女の背に突き付けていた。


「え、ちょっ、なんで…!?」


 悪魔が驚愕に目を見開いた。

 収束していた魔力は、一瞬で霧散し、辺りに静けさが戻る。


(何が起きたか理解出来ていないのか…やはりコイツは…)


 しかし、今は思案している時ではないと思った有能メイドは主に


「マスターイーザ、制圧しました」


 と、そう告げた。


「うっし、さすがだなエリス! えっとなお前…」


「私にはルシアって名前がある!」


「ああオッケー。ならルシアさんよ、今すぐにここから退去してくれ。この場所は人間の縄張りなんでな」


「フン、イヤだって言ったら?」


 彼女がそう言うや、背中に突きつけられた棒切れが熱を帯び始めた。


「ちょっとォ!? 熱いんだけど何やってんの!? 何やってんのよアンタ!」


「黙れ」


「ま、まあまあ。エリスやめたれ。イヤだってんなら力ずくで排除しねーといけなくなるんだよ。俺としてもそれは望まない。出来れば大人しく着いてきてくれると助かるんだよな」


「ふざけんなよ! なんだってアンタらみたいな怪しさマックスな連中に着いていかなきゃいけな−−熱い熱い熱いって!! それヤメて!!」


「止めて欲しければマスターイーザに従え」


「だから脅しはイカンて。あ〜ちなみにルシアさんは多分、サキュバスでいいよな?」


「私は…多分、そう」


 自信無さ気な物言いに、イーザは思わず「多分?」と聞き返した。


「いやぁ実は私、記憶が無くてさ~自分の名前?的なヤツしか思い出せなくって」


「はぁ? 記憶喪失だぁ? んな悪魔聞いたことねえぞ…」


「嘘じゃないってば! 気が付いたらここに居たんだよ。私見たヤツらがサキュバスって言うから…ね?」


 確かに、ルシアを名乗る女悪魔の出で立ちといえば、上は胸部のみを覆う革製スポーツブラにも似たもののみ。

 下にしてみても、ローウエストのベリーショートパンツのみと、肌の露出が著しい。


 人間を誘惑し、性を啜るサキュバスの一般的な姿に違いない。

 現在、世間を最も騒がせる有名な悪魔でもあるから、ギャンディット氏でなくともそう判断するだろう。


(記憶がない…か。それなら魔力量に対して魔術の練り上げ不足の理由になる)


「ま、記憶やらに関してはウチにエキスパート居るから誤魔化しは出来んしなぁ…ま、そこはいいや。ちなみにルシアさん、俺らに着いてきてくれたらちゃんと衣、住は保証するぞ~性だって吸い放題だしよ」


「へ、へぇ、吸い放題って大きく出たね。でも私とんでもない大食かもよ?」


「お前程度なら百人居たって相手に出来るぜ。俺の精力は無限だからよ」


 イーザは自信満々にこう言った。


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