小さな袋
生成AI(Grok)による本文作成を行い、微調整しています。
苦手な方はご注意くださいませ。
夕方、私は袋を一つだけ提げて帰った。特別な日というわけではない。店の前を通ったとき、小さな紙袋が目に入っただけだ。中はちょっと可愛いあんこ餅。まりもの好物だと分かっていたから、二個買った。理由は、それ以上ない……。
玄関で靴を脱ぐと、まりもが窓辺から顔を向けた。淡い緑の長い髪が肩に流れ、濃い緑の葉模様が部屋の小さな明かりを返す。まりもには帰宅の空気で、もう分かっているらしい。
「……遅かったな」
「ごめんね。ちょっとお店に寄ってて。これ、まりもにあげる」
小さな紙袋をテーブルへ置く。リボンは店の人が結んだままだ。まりもは怪訝そうに眉を寄せて、袋を見下ろした。日付の意味を探している目だ。祭りの気配もない。礼を言うべき理由も、見当たらないらしい。
「何だ。今日は何か祀る日か?」
「別に何の日でもないよ。美味しそうなのがあったから」
「……それだけか」
「それだけ。はい」
間が落ちる。まりものは袋の口を開き、中の白い餅を一つ取り出した。静かに「ほぅ……」とこぼれたのを私は逃さなかった。香りは薄い。森の甘味のような濃さはない。人間の店のただのあんこ餅。それでも、先に口へ運ぶ。噛んで、止めて、また噛む。好物の形をしているから、文句の置き場が少し遅れる。
「……甘い」
「美味しい?」
「食べられる」
食べられる、の前に違う言葉が出ようとしていたが、すぐに言い直していたまりも。そのまま、二つ目も同じ速度でなくなる。私は隣に座って、その横顔だけを見ていた。特別にするつもりはなかった。特別に見えなければ、それでいい。葉模様が小さな明かりを返して、咀嚼のあいだだけ、守り神の輪郭が緩む。
袋は空になった。まりもはリボンを一度引き、解けかけた端を結び直して、優しく紙の角を整えている。
「袋は、捨てていいよ」
「ああ。あとでする」
「捨ててこようか?」
「あとでする、と言っている」
きつくはない。早いだけ。空の袋を窓辺のそばへ寄せて、クッションの位置を一度直す。高いところが好きな神さまが、低い場所の手前で手を止めている。中身はもう無い。残っているのは、紙とリボンだけだ。
「またあったら買うね」
「……好きにしろ。あるなら食べる」
「ふふ。好きにするね、まりも」
「まりもって呼ぶな」
低い声で抗議する。
でも、空になった小さな袋だけは、まだ手の届く位置に残されていた。




