まりもじゃらし5
生成AI(Grok)による本文作成を行い、微調整しています。
苦手な方はご注意くださいませ。
休日の午後、私はソファでタブレットを覗いていた。画面の小さな明かりが膝まで落ちて、窓辺より先に視線を持っていく。電子の水面を金魚がただ泳いでいる。赤と白が水を行き来するだけで、特別物語はない。
窓辺のまりもがもそっと動いた。
淡い緑の長い髪が、じわりとこちらへ寄ってくる。濃い緑の葉模様は、画面の光を細い筋に変える。断りなどない。同じ場所に座り、覗き込む角度だけが、私の肩に重なった。
「なにを見てる」
「金魚。泳いでるだけの映像」
説明は、それで足りるはずだった。なのに緑の瞳が、魚の軌道を拾い始める。耳が前へ寄る。尻尾の先はソファの縁を小さく叩いて、赤が左へ切れると顔も左へ傾く。リボンを振ったあの日と同じく。意思の外側で、動きだけが先に出てしまう種類の遅れ。
私は、そんなまりもの動きについ口元を緩める。隣で、誇り高い守り神が金魚に持っていかれている。本物じゃない。水の匂いも感覚もない映像なのに、狩りへ入る前の静止がそこにある。
「ねぇ、面白い?」
「……面白くない。魚が動いているのを見ているだけだ」
「ずっと追ってるよ」
「……見ているだけだ」
大切なことだった。
金魚が石の陰へ潜ると、まりもの息が止まる。出てきた瞬間耳が立つ。私の緩んだ口元にはまだ気づいていないようだ。気づく順番が、金魚より後ろなのだ。
次に金魚がこちらへ向かって来る。まりもの指がすうっと画面の手前で開く。そのまま、赤の背に触れる。まるで「たぷっ」となりそうな小さな音がして、金魚が逃げる軌道を描く。追う。もう一度叩く。ガラスの向こうの水を、本物の水面だと思っている指先だ。画面がわずかに揺れ、金魚だけが方向を変える。しかし取れない。取れないほど、耳が前へ寄る。
その止まり方と、そのタップを、私はじっと見ていた。
肩が急に戻る。
緑の瞳が魚から私の口元へ移って、部屋の空気が変わる。耳が寝る。尻尾が床を一度、強く叩く。あの日より怒りは短い。短いほど、芯が残る。
「見るな」
「触ってたね」
「触っていない。試しただけだ。これはいわゆる映像だ。本物ではない」
「本物じゃなくても、追ってたけど」
まりもは画面を手で隠す。隠した掌の下で、金魚はまだ泳いでいる。葉模様がタブレットの光を受け、耳の先だけが赤を含む。今日は、照明のせいだとは言わなかった。
「その軌道を、ぼくの前で見せるな」
「ただの金魚だよ。ほらほら」
「同じだ」
同じ、と置いたあと、まりもは窓辺へ戻る。淡い緑の長い髪が肩で止まり、画面の方は見ない。見ないようにして、耳だけが水の無い音を探している。
私はタブレットを伏せた。金魚の光が消えて、部屋の小さな明かりが戻ってくる。
「楽しそうだったね? まりも」
「まりもって呼ぶな」
低い声で抗議する。
伏せた画面の位置を、それでも緑の瞳が一つ分だけ測っていた。




