見張り番の精霊
生成AI(Grok)による本文作成を行い、微調整しています。
苦手な方はご注意くださいませ。
今年のお盆は、帰省しなかった。
特に深い理由はない。仕事の都合と、なんとなく家にいた方がいい気がしただけだ。夜になって、窓を閉めても、外の空気がいつもと違う。薄くて、冷たくて、何かが通りすぎていくような気配がある。
まりもは窓辺に立っていた。淡い緑の長い髪が静かに垂れ、濃い緑の葉模様が部屋の明かりを受けて沈んでいる。彼女の視線は遠い場所へ向いていた。
「……何かいるの?」
「迷っているものがな。放っておけばよい」
「危険なの?」
「今は、そうでもない。ただ寄ってきやすい夜だ」
そう言って、まりもは窓から離れなかった。ソファに座るでもなく、壁に寄りかかるでもなく、ただ立ったまま外を見ている。時々、耳が小さく動く。森の守り神としての気配が、部屋の中に薄く広がっていた。
「一緒に見てるよ」
「必要ない。さっさと眠れ」
「眠れないんだ」
「……そうか」
それ以上、まりもは何も言わなかった。夜が更けるまで、窓辺に立ち続けている。私もソファで目を閉じたり開けたりしながら、その後ろ姿を見ていた。特別な力を使っている様子はない。ただ、軽く見張っているだけだ。それでも、気を張っているのが分かった。
朝方、空が白み始める頃、まりもが短く言った。私はいつの間にか眠っていたらしく、肩にはブランケットがかけられていた。
「もういない」
「……お疲れさま、ずっと起きてたの? ……ありがとう」
「礼はいい」
そう言いながらも、まりもの肩がわずかに落ちている。疲れた様子だった。普段は見せない、静かな疲労が滲んでいる。
「まりも、ソファ、座って」
「必要ない」
「座って」
「必要——」
「座って」
何度か促すと、まりもは面倒そうに息を吐き、ソファに座った。隣にスペースを作ると、彼女は少しだけ身を寄せる。私はそっと手を伸ばし、まりもの頭をなでた。淡い緑の長い髪が指の間をゆっくりと通り、熱を帯びた葉模様が肌に触れる。彼女の体温が、指先からじわりと上がってくるのが分かった。
「……なでるな」
「いいじゃない」
文句を言いながらも、まりもは動かなかった。むしろ、わずかに私の方へ体重を預ける。頭が肩に沈み、柔らかな髪が頬を撫でる。森のような深い香りが、呼吸のたびに近くなる。耳がぴくりと動いたあと、力の抜けた吐息が鎖骨のあたりに落ちた。
規則正しい寝息が、すぐに聞こえてきた。
窓の外は、もう普通の朝の気配に戻っている。迷っていたものは、もういない。隣で眠るまりもの体温と、髪の感触と、静かな吐息だけが、肌に残っていた。
「……おやすみ、まりも」
返事はない。
代わりに、低い寝息だけが、朝の光の中で続いていた。




