↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/52

見張り番の精霊

生成AI(Grok)による本文作成を行い、微調整しています。

苦手な方はご注意くださいませ。

 今年のお盆は、帰省しなかった。

 特に深い理由はない。仕事の都合と、なんとなく家にいた方がいい気がしただけだ。夜になって、窓を閉めても、外の空気がいつもと違う。薄くて、冷たくて、何かが通りすぎていくような気配がある。

 まりもは窓辺に立っていた。淡い緑の長い髪が静かに垂れ、濃い緑の葉模様が部屋の明かりを受けて沈んでいる。彼女の視線は遠い場所へ向いていた。


「……何かいるの?」

「迷っているものがな。放っておけばよい」

「危険なの?」

「今は、そうでもない。ただ寄ってきやすい夜だ」


 そう言って、まりもは窓から離れなかった。ソファに座るでもなく、壁に寄りかかるでもなく、ただ立ったまま外を見ている。時々、耳が小さく動く。森の守り神としての気配が、部屋の中に薄く広がっていた。


「一緒に見てるよ」

「必要ない。さっさと眠れ」

「眠れないんだ」

「……そうか」


 それ以上、まりもは何も言わなかった。夜が更けるまで、窓辺に立ち続けている。私もソファで目を閉じたり開けたりしながら、その後ろ姿を見ていた。特別な力を使っている様子はない。ただ、軽く見張っているだけだ。それでも、気を張っているのが分かった。


 朝方、空が白み始める頃、まりもが短く言った。私はいつの間にか眠っていたらしく、肩にはブランケットがかけられていた。


「もういない」

「……お疲れさま、ずっと起きてたの? ……ありがとう」

「礼はいい」


 そう言いながらも、まりもの肩がわずかに落ちている。疲れた様子だった。普段は見せない、静かな疲労が滲んでいる。


「まりも、ソファ、座って」

「必要ない」

「座って」

「必要——」

「座って」


 何度か促すと、まりもは面倒そうに息を吐き、ソファに座った。隣にスペースを作ると、彼女は少しだけ身を寄せる。私はそっと手を伸ばし、まりもの頭をなでた。淡い緑の長い髪が指の間をゆっくりと通り、熱を帯びた葉模様が肌に触れる。彼女の体温が、指先からじわりと上がってくるのが分かった。


「……なでるな」

「いいじゃない」


 文句を言いながらも、まりもは動かなかった。むしろ、わずかに私の方へ体重を預ける。頭が肩に沈み、柔らかな髪が頬を撫でる。森のような深い香りが、呼吸のたびに近くなる。耳がぴくりと動いたあと、力の抜けた吐息が鎖骨のあたりに落ちた。

 規則正しい寝息が、すぐに聞こえてきた。

 窓の外は、もう普通の朝の気配に戻っている。迷っていたものは、もういない。隣で眠るまりもの体温と、髪の感触と、静かな吐息だけが、肌に残っていた。


「……おやすみ、まりも」


 返事はない。

 代わりに、低い寝息だけが、朝の光の中で続いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。