まりもとお買い物
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苦手な方はご注意くださいませ。
夕方、どうしても必要なものがあり、近所の店へ行くことにした。
荷物を持って玄関に向かうと、まりもが低い声で言った。
「ぼくも一緒に行く」
「え? いいの?」
「一人で行かせると、また変なものを引き寄せる可能性がある。仕方なくだ」
そう言いながらも、まりもはすでに靴を履き始めていた。淡い緑の長い髪を軽くまとめ、濃い緑の葉模様が首筋にかかっている。私にはいつものように見えているけど、他の人には彼女の姿は普通の少女に見えているらしい。
店に入った瞬間、まりもは小さく眉を寄せた。蛍光灯の白い光と、人の話し声、カートの音が一度に流れ込んでくる。
「相変わらず、人間の世界は騒がしいな」
「ごめんね。すぐ終わるから」
「早くしろ」
文句を言いながらも、まりもは私の隣を離れなかった。人混みを少し避けながら、黙ってついてくる。時々、照明の光をまぶしそうに目を細めている。それでも、すれ違う人々の様子をじっと観察しているのが分かった。カートを押す手、棚から商品を取る仕草、会計で並ぶ列。森とは全く違うリズムで動く人間たちを、静かに見極めているようだった。
必要なものを棚から取っていると、隣でまりもが足を止めた。和菓子のコーナーだった。小さなあんこ餅が、きれいに並んでいる。まりもはじっとそれを見ていた。丸くて、白い生地にあんこが包まれている形が、どうやら気になったらしい。耳がわずかに前に向いていて、柔らかそうなしっぽがふらふらしていた。
「……これは何だ?」
「あんこ餅だよ。食べたことある?」
「ないな。だが、形が気になる」
「買ってみようか」
「……別に、必要ではない」
「でも、見てるけど?」
「……見ていない」
明らかに見ている。私は笑って、あんこ餅をカゴに入れた。まりもは何も言わなかったが、耳が小さく動いたまま、素直に否定しなかった。
会計を済ませて店を出ると、まりもは少しだけ肩の力を抜いたようだった。家に着いてから、あんこ餅を皿に出して渡す。まりもは少し警戒するように見つめたあと、小さく口に入れた。
次の瞬間、耳がぴくりと動いた。
「……甘い」
「どう? 苦手?」
「……悪くない。いや、かなり良い」
気に入ったらしい。もう一つ手に取り、今度は少しだけ早口で食べた。淡い緑の髪が肩に流れ、葉模様が部屋の明かりを受けて静かに揺れている。満足そうな気配が、隠しきれずに滲んでいた。
「また買ってこようか?」
「……気が向いたらな」
少し間を置いて、まりもは短く付け加えた。
「……嫌ではない」
あんこ餅の空になった包装を、まりもは時々ちらりと見ていた。
「なんか楽しいね、まりも」
「まりもって呼ぶな」
低い声が返ってくる。
でも、その声には、いつもの強さとは違う、ほんの小さな緩みが混じっていた。




