森の王
生成AI(Grok)による本文作成を行い、微調整しています。
苦手な方はご注意くださいませ。
ある日の午後、キッチンで小さな音がした。
ぴょん、と軽い音。次にまたぴょん。床の近くを、一匹のバッタが跳ねていた。緑色の体をひらひらと動かし、シンクの縁に止まってはまた跳ねる。
「ひっ……!」
私は思わず声を上げて後ずさった。虫は苦手だ。特に、いきなり跳ねるバッタは余計に無理だった。慌ててリビングへ逃げると、まりもが低い声で応じた。
「何を騒いでいる」
「バッタ……! キッチンにいる……!」
次の瞬間、私はまりもの腕にしがみついていた。淡い緑の長い髪が顔にかかり、濃い緑の葉模様が目の前で揺れる。まりもは一瞬だけ体を硬くした。耳がぴくりと動きわずかに視線が逸れる。恥ずかしそうな気配が、ほんの少しだけ滲んだ。
「……離せよ」
「無理。助けて」
「なんだ、これしきのことで」
呆れたような声だった。それでも、まりもは私を振り払わなかった。しがみつかれたまま、キッチンの方へゆっくりと歩いていく。バッタはまだシンクの近くで時々跳ねていた。
まりもは私を軽く引き剥がすと、堂々と一歩前に出た。背筋を伸ばし、いつもの毅然とした目でバッタを見下ろす。森の守り神としての気配が、静かに広がった。
「帰れ」
短く、明確に言った。
「ここは人間の住処だ。森へ戻れ」
バッタはぴたりと止まった。まるで言葉を理解したように、触角を一度動かしたあと、窓の隙間からすい、と外へ出ていった。あっさりと、抵抗もなく。
私はまだ少し肩をすくめたまま、まりもを見た。
「……すごかった」
「当然だ。ぼくは森の守り神だぞ」
「ありがとう」
「礼はいい。次は、自分で対処しろ」
そう言いながらも、まりもは耳を少し赤くしていた。さっきしがみつかれた感触が、まだ残っているらしい。淡い緑の髪をかき上げて、素早く視線を外す。
「まりも、かっこいいね」
「まりもって呼ぶな」
低い声が返ってくる。
でも、その声にはいつもの強さとは違う、ほんの小さな動揺が混じっていた。




