猫耳じゃないの?
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苦手な方はご注意くださいませ。
なんとなく、まりもと並んでテレビを見ていた。
特に見たい番組があったわけではない。ただ、夕方の情報番組が流れていて、画面には猫耳のカチューシャをつけた若者たちが映っている。コスプレらしい。かわいらしくて、少し大げさな耳が、画面の中でぴこぴこと動いていた。髪に合わせて揺れるたびに、スタジオの笑い声が重なる。
「こういうの、最近流行ってるみたいだね」
隣で、まりもが低い声を出した。
「……なんだ、これは」
「猫耳のコスプレだよ」
「猫……耳? 軟弱そうな耳だ。あんなもので猫を名乗るな」
かなりはっきりとした不快そうな声だった。画面の中の猫耳を、まるで見慣れないものを見るような目で睨んでいる。耳の形も、動き方も、まりもの基準からすると明らかに違うらしい。
「でも、まりもも耳あるよ」
「それは、ぼくの耳だ」
「猫耳だよね」
「耳だ」
「おんなじだよね」
「耳だ」
少し間が空く。
「……そう呼ばれることもあるが、意識したことはない」
まりもはそう言うと、自分の耳に触れるでもなく、テレビから視線を外した。どうやら、自分の耳を「猫耳ファッション」と同じ枠で見られることが、そもそもピンとこないらしい。精霊としての体の一部であって、飾りや流行とは別物だ、という感覚なのだろう。
画面では、別の若い女性が新しい猫耳カチューシャを紹介していた。まりもは再びちらりとそちらを見るが、すぐに顔をしかめる。
「……似ても似つかん」
「分かった。違うね」
「分かっているならいい」
そう言いながらも、まりもは完全に納得した様子ではなかった。時々画面に猫耳が映るたびに、小さく鼻を鳴らし、眉を寄せている。どうしても気に入らないらしい。自分の耳と比べてしまうのか、それともただの違和感なのか。理由は分からないが、まりもは最後まで、あの大げさな耳を認めることはなかった。
しばらくして、思い出したように低い声がした。
「……まりもって呼ぶな」
今日の抗議は、いつものより少しだけ力が入っている気がした。




