つやつや髪のまりもさま
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苦手な方はご注意くださいませ。
休日の朝、まりものはいつものように窓辺に座っていた。
淡い緑の長い髪が、ところどころで軽く絡まっている。昨夜の風が残した小さな乱れで、濃い緑の葉模様も少し一緒くたになっていた。普段のまりもなら、すぐに自分で梳かして整えるはずだ。綺麗好きなところがある彼女は、髪が乱れたまま放っておくことを好まない。
なのに今日は、しばらくそのままだった。
「ねぇまりも。髪、直してあげようか?」
「触るな」
すぐに低い声が返ってきた。
「でも、絡まってる。いつもならすぐ直すのに」
「分かっている」
「どうして今日は直さないの?」
まりもは少しだけ沈黙した。窓の外を見たまま、低い声で答える。
「……特に理由はない。今、直すつもりだった」
本当にそれだけなのかは、分からない。ただ、いつものまりもにしては、少しだけ手が遅い気がした。
「じゃあ、今直してあげるね」
「自分でできる」
「じっとしてて」
私は構わず、まりもの後ろに回った。彼女は小さく息を吐き、逃げることはしなかった。つやを出しやすいブラシを取り出し、端の方から慎重に梳かし始める。
「……力を入れすぎるな」
「ごめん」
「痛くはない。ただ、自分でやるつもりだった」
そう言いながらも、まりもはもう拒否しなかった。普段ならすぐに自分で整える髪を、今日は静かに任せてくれている。淡い緑の髪がブラシにすっと通り、絡まりがひとつずつほどけていく。濃い緑の葉模様が、朝の光の中で静かに揺れた。
梳かすたびに、髪が少しずつ光を帯びていく。いつもより明らかに、つやつやと落ち着いた艶が出ていた。
私は黙って作業を続けた。まりもも何も言わなくなった。ただ時々、耳が小さく動くだけだった。
すべてを梳かし終えると、まりもはゆっくりと振り返った。いつもの毅然とした表情に戻っている。なのに、さっきまでの拒否する気配はもうなかった。整えられた髪を指で軽く触れ、そのつやを確かめるように一度だけ撫でた。
「……次は、自分でする」
「わかった」
少し間を置いて、まりもは自分の髪を見ながら低く言った。
「……キミもやるもんだな」
ほんのわずかに、声の端が緩んでいた。
「今日は、たまたま任せただけだ」
「うん」
それ以上、文句は言わなかった。
しばらくして、思い出したように低い声がした。
「……まりもって呼ぶな」
今朝の最初ほどの棘は、もうほとんど残っていなかった。




