森のまもり神さま!
生成AI(Grok)による本文作成を行い、微調整しています。
苦手な方はご注意くださいませ。
近所の山にある祠に、簡単な用があった。
掃除を頼まれただけで、特に深い意味は考えていない。道も整備されていて、昼なら問題ないはずだった。けれど、最近になって、何かが少しずつ違っている気がする。森や山に近づくと、見えないものがこちらを見ているような気配が、以前より濃く感じられる。はっきりとは掴みきれない。ただ、空気の質が変わったような、ぼんやりとした違和感だけが残る。
初めてまりもを見つけた場所の近くまで来たとき、背中に不快な視線を感じた。
振り返る。
誰もいない。
なのに、まとわりつくような、湿った気配だけが離れない。風もないのに、足元の落ち葉が小さく動いた。
「……何だろう」
返事はない。
木々の間を、黒い影がすり抜けるようにちらついた。人の形をしていない。顔もないのに、明らかに「見ている」。
気持ちが悪い。
本能的に、足が動いた。
振り返らずに走り出す。落ち葉を踏みつけ、枝を払い、ただその場から離れようとする。息が上がる。なのに、影は遅れを取らない。むしろ、こちらが速く走るほど、距離を詰めてくるように感じられた。
そのときだった。
「近寄るな」
低く、はっきりとした声が後ろからした。
振り返ると、まりもが立っていた。
淡い緑の長い髪が風に揺れ、濃い緑の葉模様が木漏れ日を受けて静かに光っている。普段のアパートで見るまりもとは違う。背筋が伸び、視線が鋭く、周囲の空気を自然と従えているような、守り神としての佇まいだった。余計な表情はなく、ただ凛として、そこにいる。
「ここはぼくの領域だ」
まりもは一歩前に出ると、静かに、しかし明確に言い放った。
「その者に触れるな」
影が止まった。まりもは手を上げ、周囲の空気を張りつめさせる。淡い緑の光がふわりと集まり、次の瞬間、それは細い矢のように真っ直ぐに放たれた。光の矢は影を射抜き、影は大きくゆがみ、嫌々というように後退した。
「消え失せろ。二度と近づくな」
短い言葉だった。それだけで、影は木々の奥へ消えていった。残り香のような不快な気配だけが、ゆっくりと薄れていく。
私は思わず息を吐いた。
「……助けてくれたの?」
「放っておけば面倒なことになる。仕方なくだ」
まりもはそう言いながら、こちらを一瞥した。
「ここで何をしている」
「あ、ここの祠の掃除。……頼まれて」
まりもは少しだけ目を細めた。
「……あの祠か」
「知ってるの?」
「当然だ。あれは、ぼくに縁のあるものだ」
初めて知った。自分はただ掃除を頼まれただけだと思っていたのに、それがまりもの祠だったとは。
「でも……すごかった、さっきのまりも」
「忘れていたのか? ぼくは森の守り神だぞ」
「うん。知ってる」
それでも、胸の奥が少しだけ温かかった。
助けられた安心感だけではない。光をまとったまりもの姿が、静かに残っている。凛とした横顔が、やさしく目に映ったまま、なかなか消えてくれない。
まりもは道の先を見て言った。
「で、用事は終わったのか。終わっていないなら、早く済ませろ。ぼくがついている間に」
少し間を置いて、まりもは低く、少しだけ柔らかい声で続けた。でも、そこにはどこか申し訳なさを含んで。
「……キミは、ぼくと接したせいで、寄せつける体になってしまった」
「……どういうこと?」
まりもは一瞬だけこちらを見たあと、静かに首を横に振った。
「精霊のことだ。多くを知る必要はない」
そして、短く付け加える。
「だから、そばにいる。安心しろ」
「……わかった。ありがとう」
「礼はいい」
まりもは先に歩き出す。淡い緑の髪が、背中で静かに揺れていた。私はその後ろを追いながら、先ほどまでの恐怖がほとんど残っていないことに気づいた。代わりに残っているのは、まりもの光と、あの短い言葉だけだった。
「助けてくれてありがとう、まりも」
「まりもって呼ぶな」
低い声が、森の空気に溶けていく。
いつもの抗議なのに、今日は少しだけ、ちゃんと届いた気がした。




