第2話 -5人の桜守-
にこめ…‼︎(((o(*゜▽゜*)o)))
登場人物まとめときますね!↓
高池 彩 (たかいけ さい)
istp 男の子
気弱でちょっとひねくれている主人公。絵を描くことが好き。
真田 花望 (さなだ かも)
esfp 女の子
花屋の娘。正義感の強い姉気質。実はツンデレさん。
十六原 伊織 (いざはら いおり)
infj 男の子
穏やかで丁寧。精神年齢診断したら95歳だったらしい。町の伝統工芸である織物の見習い職人でもある。
赤染 乃灯歌 (あかぞめ のどか)
isfj 女の子
思いやりのある優等生。手先が器用。中学では保健委員長を務めていた。
咬谷 粋 (かみや いき)
isfp 男の子
動物病院の少年。場面緘黙を持っており、スマホ入力で会話する。
校長室は、古い紙の匂いと沈黙に包まれていた。
重厚なソファに並んで座らされた僕たちは、まるで処刑を待つ罪人のようだった。
「……で、話って何よ。あたしたち、何か悪いことした?」
耐えきれなくなったように、花望が口火を切った。彼女の隣では、赤染乃灯歌が不安そうに救急箱のストラップを握りしめている。十六原伊織は相変わらず穏やかな顔で目を閉じ、咬谷粋は手元のスマホに『早く帰りたい』と打ち込んでいた。
僕はといえば、ただ足元に落ちた西日の影を見つめていた。
「いや、逆だ。君たちにしか頼めないことがある」
デスクの向こう側で、校長が組んだ指を解いた。その瞳は、教育者というよりは、何か過酷な戦場を見つめる指揮官のような鋭さを帯びている。
「桜井ハルカ先生の命を守ってほしい。」
……は?
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
隣で花望が「はぁ!?」と素っ頓狂な声を出す。
「…守るって、何を? 先生は大人だし、僕たちは元不登校のガキだよ」
「そうだ。だが彼女は――『世界の特異点』だ」
校長は淡々と語り始めた。ハルカ先生が、本人の自覚なしに世界を書き換えるほどの超次元的な力を秘めていること。彼女の父親が亡くなった今、世界中の暗殺組織が彼女を狙って動き出していること。
「冗談なら、もっと面白いやつにしてくれ。……帰るよ」
我慢できず、僕は立ち上がろうとした。
馬鹿馬鹿しい。そんなアニメみたいな設定を、現実に持ち込まないでほしい。
だが、その時。
「待ちなさい、高池くん」
有無を言わせぬ声。決して大きいわけでも、ドスを効かせたものでもないのに、思わず足が止まった。
校長がデスクの引き出しから、古びた銀色のコインを取り出し、机の上に放り出した。
コインは奇妙な光を放ちながら回転し、僕たちの視線を吸い寄せた。
「君たちが彼女を護るための『牙』は、すでに用意してある。君たちの魂の形、つまり趣味や特技を具現化する力だ。――受け取るか、それとも彼女を見捨てるか」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、コインから眩い光の奔流が溢れ出した。
「わっ、何これ!?」
花望の叫びとともに、彼女の周囲に目に見えるほどの鮮やかな粒子が舞い、一瞬にして色とりどりの花へと姿を変えた。
「……きれい」
乃灯歌さんの指先が淡い光を帯び、傷んでいたソファの革が、まるで時間が巻き戻ったかのように修復されていく。
僕は、固まっていた。
手に持っていたスケッチブックが、内側から熱を帯びている。
鉛筆を握る指先が、まるで神経の糸がぴいんと張って、紙の向こう側まで繋がったかのような、奇妙な感覚に支配された。
『描け』
頭の中で、誰かの声がした。
僕は無意識に、スケッチブックの白紙に、そこにはいない「黒い盾」の輪郭を叩きつけた。
シュッ、と空気が切り裂かれるように鳴った。
紙の上に描いたはずの影が、実体を持って目の前に飛び出してきたのだ。
ずしりと重い。金属の冷たさと、確かな質量。
「……うそ、だろ」
自分の手が震えているのがわかった。
描いたものが、本物になる。
今まで逃げ場だった絵が、突然、世界に牙を剥く武器に変わった瞬間だった。
「条件は一つ」
光が収まった静寂の中で、校長の低い声が響く。
「ハルカ先生には、絶対にバレてはならない。彼女には、ただの新任の担任教師のままでいてもらう」
僕は、描き出した盾を見つめた。
あんな眩しいだけの、何も知らない先生を守るために。
不登校で、居場所のなかった僕たちが、影の護衛になる。
「……やっぱり、僕の柄じゃない」
僕はそう悪態をつきながらも、手に残る「現実」の重みを、離すことができなかった。
***
校長室から出た僕たちは、放課後の誰もいない旧校舎の多目的室にいた。
「……ねえ。これ、本当に使うことになるのかな?」
乃灯歌さんが、震える手で自分の救急箱を見つめていた。
彼女が古びた木の机に触れると、指先から淡い光がこぼれ、天板の傷がみるみるうちに消えていく。
「『癒術師』……。傷を治せるのはいいけれど…。自分の血液型を変えて輸血だなんて、なんだか怖い。」
「いいじゃない、校長、『貧血にはならない』って言ってたし。というか、私なんてこれよ?」
花望が投げやりな声で手を振ると、虚空から真っ赤なガーベラが溢れ出した。
能力『花言葉』。
花望がその花を握りつぶすと、部屋の中にいた僕たちの体が、ふっと軽くなった気がした。
「ガーベラの花言葉は『前進』。……身体能力を底上げする効果があるみたい。でも、いつまでもこんなの出してたら、頭がおかしくなりそうだわ」
「私は、むしろ心が静かになりますよ」
十六原が穏やかに言った。彼が指先を動かすと、空中にオーロラのような光の糸が紡がれ、複雑な幾何学模様を描き出す。
能力『オーラ織り』。
その糸が僕の腕に触れた瞬間、心臓の嫌な動悸がピタリと止まった。恐怖を「織り込まれて」消されたような、奇妙な感覚。
「……これがあれば、戦意を喪失させることも、逆に奮い立たせることもできる。私には、ちょうどいい力です」
『俺、こんなの』
咬谷がスマホの画面を突きつけてくる。
次の瞬間、彼の右腕がミキミキと音を立てて膨れ上がり、鋭い鉤爪を持つ狼の腕に変貌した。
能力『獣化』。
「ひっ……!」と僕が声を上げると、咬谷はお茶目な瞳を瞬かせて、楽しそうに首を傾げてみせた。被っているフードについた猫耳も、一緒にくたりと動く。
「……どいつもこいつも、変な力だな」
僕は溜息をつき、自分のクロッキー帳を開いた。
鉛筆を握る。指先から熱が流れ込み、紙の上がまるで湖面のように波打つ感覚。
僕は、今も瞼の裏に焼き付いて離れないハルカ先生の姿――ではなく、護身用の「短いナイフ」の輪郭を叩きつけた。
「『画境幻化』……」
紙の中から、冷たい鉄の質感がせり上がってくる。
実体化したナイフを手に取ると、ずしりと重い。僕が描いた線が、そのまま殺傷能力を持つ「物」としてこの世に産み落とされた。
「……僕の絵は、逃げ場所だった。なのに、これじゃあ……」
「逃げ場所じゃなくて、戦う場所になったのよ、彩」
花望が僕の肩を、痛いくらいに強く叩いた。
彼女の目は、まだ不安と戸惑いに揺れている。それでも、彼女は自分に言い聞かせるように、真っ赤な花を握りしめていた。
「いい? 先生を守るためには、この化け物みたいな力を使いこなすしかないの。……私たちに、やっと『やらなきゃいけないこと』ができたんだから」
「……ハルカ先生は、何も知らないのに」
「そう。先生は、何も知らなくていい。……汚れるのは、私たちだけでいいのです」
十六原の冷徹なまでの言葉が、赤い夕陽に溶けていった。
バラバラの色を持った五人の影が、床の上で一つに重なる。
――その直後だった。
階下から、ハルカ先生の「あ、忘れ物しちゃった!」という暢気な声と、それを追うような、複数の重い足音が響いてきたのは。
ここまでは若干重め!()
次回から明るくギャグ要素も入れる予定ですっ!




