表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/51

第11話〜烽火、危急存亡を告げて〜


―――凍りつく大議場の空気の中、1人ニヤニヤと笑うヒュブリス公爵。


「…それは、お答えできかねますな。」


喉の奥から絞るような声で話すヒュブリス公爵。ディケー侯爵は、やれやれという素振りを見せた後


「―――ヒュブリス公爵、この件を詳しく調査するため、身柄を拘束させていただきます。」


2人の監査官から両脇をガッチリと抑えられたヒュブリス公爵はなおニヤニヤし続け


「気付くのが遅すぎましたね―――王太子殿下も、貴方方も。」


クックック…と笑いが止まらないヒュブリス公爵。そんな彼を監査官たちは連行していった。


「―――監査は終了とします。何点か資料を押収させていただきます。後はしまっていただいて結構です。」


淡々と指示を出すディケー侯爵。残った監査官たちも押収する資料を手早くまとめている。


やっぱり大規模な着服があったのね…。でも、気付くのが遅すぎた、ってどういうことなのかしら。


私は後味の悪い結果に眉をひそめる。


「殿下、ミハイル殿。この件は我々が引き続き調査します。何か分かり次第ご報告致しますので。」


ディケー侯爵は手短にそう言った後、一礼して


「殿下、告発頂きありがとうございました。議会にはずっと良からぬ噂が立っていたことは承知しておりましたが、告発がない以上、我々もこうして手出しすることができませんでした。感謝致します。―――少々驚いてはおりますが。」


そう言って、撤収作業に移ってしまった。


私とミハイルは顔を合わせて


「…私たちは帰りましょうか。」


「…ええ、そうですね。」


これ以上大議場に居てもやれることがなさそうだったので、私とミハイルは先に部屋に戻ることにした。















「…ふぅ、あっという間だったわね。」


「お疲れ様でした姉様。」


執務室に戻ってきた私たちは、ソファに深く腰掛けた。


「それにしても姉様、ディケー侯爵があんな風に言うなんて珍しいですよね。」


テーブルに置いてあったチョコレートをつまみながらミハイルが呟いた。


「そうなのかしら?」


私はディケー侯爵と殆ど面識がなかったので、あまりピンと来なかった。


「そうですよ姉様、ディケー侯爵は中々他人に心を開かないということで有名なんですから!そんな方が一礼して感謝の言葉を述べるなんて、本当に凄いことなんですよ!!」


確かに、ディケー侯爵は冷血漢だということは聞いたことがあるけど…。


「少なくとも、王太子として良い仕事はできたのかしらね。」


そう、()()()としては。これは決して私の実績にはならない。あくまで私はあの日雷に打たれて眠り続けている元婚約者。


ミハイルは、少し俯きながら答えた私を見て思うところがあったのか、一瞬、少し悲しそうな顔をしたが、すぐに元の表情に戻り


「ヒュブリス公爵の処分はどうなるんでしょうね。」


と少し話を逸らしてくれた。


「ヒュブリス公爵ね―――着服した国庫金の行方が分からないと何とも言えないわよね。」


一体、国庫金とヒュブリス公爵の資産はどこへ消えてしまったのかしら。


「監査局の捜査の結果を待ちましょう。」


私はこの後、やることもあるしね。とミハイルに告げると、ミハイルは少し笑ってから、それではまたと部屋を出て行った。


私もミハイルも、この時は最悪の事態が待っていることなんて想像もしていなかった。












数日後。


ディケー侯爵が私の執務室にやってきた。


「殿下、先日のヒュブリス公爵の件でお話があります。」


いつも冷静なディケー侯爵の表情が引き攣っている。


「…話してくれ。」


私もつられて表情が厳しくなる。


「―――着服された国庫金及びヒュブリス公爵の資産は全て、タラクシア公国に流れていたようです。」


私は思わず息を呑んだ。


タラクシア公国。小国ながら軍事国家として知られるこの国は、経済活動や義務教育など、国家のあらゆる活動が軍事力強化のために行われているという。隣国ではマギア帝国に次ぐ軍事力を誇っている。


そんな国が資金を溜め込んでいるなんて、考えられることはただ一つ―――


「戦争か…。」


「―――この件に関しましては既に国王にもお話ししてあります。」


「…分かった。報告ありがとう。」


私は、ディケー侯爵が退出してすぐに国王の元へ向かった。

















「…大変なことになった。」


少しやつれた顔をしている国王。


「父上…。」


無理もない。アレクシスが国王の代わりに議会の議案を承認し、着服を見逃していたのだから。


「―――申し訳ありませんでした。」


私はアレクシスの代わりに謝ることしかできなかった。


国王はアレクシスとミハイルと同じ澄んだ水色の瞳でゆっくりと私を見て、


「いいや…お前は悪くない…私が、お前の教育のためと思って権限を渡していたのだから…私の責任だ…。それにお前は、最近はとてもよくやっていてくれたではないか。」


気が付けば私は


「父上、私が必ず戦争を回避させます。」


と進言していた。


「…随分、逞しくなったではないか、アレクシス。」


すると、国王は玉座から立ち上がり


「戦争危機がある以上、わしは国を離れることはできない。アレクシス…お前はマギア帝国に行き、協力を要請して来るのだ。」


私が…マギア帝国に…。


私はゴクリと唾を飲み込んだ。


この間のクリセオス公爵との交渉とはまた違う。外国の、しかも皇帝との交渉だなんて…。


私にできるかしら…いいえ、やらないと。全ての国民を守るために。


「はい、父上。最善を尽くします。―――コーディカスのために。」


【予告】

いつも読んでくださってありがとうございます。


お陰様で、第11話をもって第3章完結となりました。


12/27〜1/3は毎日更新する予定です。


第4章は、フィーリアの妹、エリザベート中心の物語になります。


年末年始のお供にお付き合いいただけたら嬉しいです。


引き続き応援よろしくお願い致します!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。


ひとつでも「面白い」と感じていただけたら、評価やブックマークをしていただけると嬉しいです。


とても励みになり、執筆続行の支えになります。


これからも読者様に楽しんでいただける展開を届けられるよう頑張ります。


どうぞよろしくお願いいたします!


本作は、毎週 月・木・土の20時に更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ