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俺は帰りたいんですが。  作者: 来島ぎれ
第一章 個人召喚
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りんかんのメルヘンランドから気付く事

食べて昼寝を貪り夜に狩りをし森を駆ける。ああ、いいな。

俺はこの森の頂点の黒鉄魔狼だ。


やっと本来の生活に戻り、ささくれた気持ちもなく穏やかな毎日。

プーも元々好きなときに寝て起きる虫らしく自由にしている。


日々、住処前がメルヘンチックな動物園になって来ているのだけは納得いかない。


最初は野うさぎだけだった。

いまや中型以上の獣に食料とされる小獣たちの憩いの場になっていた。

俺にしたら目の前に食料がわらわらオードブルが踊っているわけで、昼寝中の鼻はヒクヒク動き耳は忙しなく動向を探り、口からは涎が出る。


プーはそんな俺の前に座って、笑顔で近くに来た獣にわくわくして手を伸ばし、触れた物なら興奮して叩く。

美味そうだと思って牙をちらと見せてもバンバン叩いてくる。


「なんなのお前。楽しそうだな」


プーはにこっと笑って抱きついて来た。

ぎゅむぎゅむ小さな手でしっかり毛を引っ張るから少しだけ痛かった。


「普通は地下で一生終えるんだろ?目新しい物が見れて面白いのか?お前も俺と一緒だな。変な魔獣というやつだ」


プーはうんうんと頷いた。

肯定かよ。

あれだけ沢山いればイレギュラーなのも出てくるのか?人でいう個性とか性格。ペットでさえ性格持ちだから魔物にもあるのかも知れないな。

俺はプーとの生活が少し気に入っていた。

メルヘンランド集会が無ければもっといい。


なのに十日過ぎた頃からアレだけべったりだったプーは、一人でふらふらと住処から離れて出歩くようになった。


「おい、あまり遠くに行くと危ないぞ。知能のある魔獣は少ない。会話は無理だから食うか食われるかだぞ」


うんうんといつもの如く頷きはするが決して遠出を辞めなかった。


俺は保護者ではない。

家族でもない。

注意はしたしプーも返事したから何かあれば自己責任というヤツだ。


そして今日は何時まで経っても帰って来なかった。

もう日が暮れるし喰われちゃったか。

いや、俺が森に帰ってメルヘンランド集会が始まってからこの界隈の小物生息率が上がっている。あの人の擬態の小さな歩幅で行ける範囲も知れている。匂いもまだ流れて来るから生きているだろう。

あれはスライム系の虫だ。血はないのか?

何かあっても血の匂いはしないか?


ここまで考えて、プーを心配していると自覚した。


「仕方ない、迎えに行くか…」


のそりと起き上がり、魔力を脚にのせた所で遠くから木々をなぎ倒した様な衝撃音と人の声が耳に届く。

なんだ冒険者でも来て討伐か?

プーの匂いの方角を確認しつつ人の声に聞き入る。


「…、…ま、…う様ー、どこですかー、何故かサーチ不能ですー」

「この森は魔力が面白い!あははは!」

「ま、ろ、う、さまー!友達が遊びにきましたよー!」


・・・マジか。


あれはクロウとラズの阿呆な師弟コンビだ。何故この森に…。

ラズが転移術使えば来れるのか。クロウも俺にマーカーしたままだった気もする。

いや、今はプーを優先しよう。


当てずっぽうだろうが段々近づく声を無視して匂いを辿りプーを捜しに向かった。


どこだ。どこだプー。


俺はなんでこんなに自分以外に必死になっているんだ。人だった頃から当たり触らずで生きていたじゃないか。放っておいたって魔物だ。生きて食べて戦って死ぬだけなのに俺は何故捜しているんだ。


この森の頂点の孤高の黒鉄魔狼。

孤高。それはもう過去なのか。

なんでこうなった。

林間を駆け乍ら考えていた。




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