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お預け王子と幸せな娘

後日談というか、翌日の話です。


内容は、まあ、タイトル通りというか(笑)お楽しみいただけると嬉しいです。

ティセが目覚めるとアルノルドが微笑みながらティセを見つめていた。


「お、王子さ」

「アルノルド、だ。ティセ?」


迫力のある笑みに思わずティセは後ずさりしようとしたが、アルノルドがガッチリと捕まえていてそれは叶わなかった。


「お、おはようございます。アルノルド様。」

「ああ、おはよう、ティセ。」


アルノルドは上機嫌でティセに挨拶を返す。それぞれ支度を整え、朝食となったのだが、先程までと違い、アルノルドの表情に少し陰りが見える。ティセは不思議に思ったが、食事の時に話をする習慣がなかったのでアルノルドに理由を聞かなかった。


その後、ティセはアルノルドの様子が気になり、書斎に向かうと側近のコンラッドが扉を開けてくれた。部屋に入るとアルノルドが机に両肘をつき、頭を抱えていた。


「アルノルド様!どうなさったのですか!?もしかして、私の魔力はアルノルド様に合わなかったのでは」

「いや、違う。・・・悪いがティセ、もう片方の封魔具も外してもらえないか。」

「え?はい。それは昨日のお話で伺いましたが。」

「昨日はそんなに急いではいなかったのだがな、今すぐティセの魔力をくれないか。」

「・・・結界ですか?」

「ああ。ティセにもらった魔力、全部ではないが、またかなり取られた。一度ティセの魔力で、四分の一くらいまで満たされたんだがな。そこまで一度に満たされることがなかったから、今、飢餓感が非常に強い。」

「大丈夫ですか?アルノルド様。」

「悪いが大丈夫とは言えん。今すぐくれないか。」


ティセに断る理由はなく、すぐさま、またあの部屋に向かいアルノルドに魔力が渡った。


「ふう。助かった。ありがとう、ティセ。」

「いいえ。アルノルド様が楽になられたなら良かったです。」


微笑むティセの頭を撫で、アルノルドは自分の体の確認をする。シャツのボタンをはずし始めたところで慌ててティセは後ろを向く。真っ赤になっているティセを笑い、一応アルノルドもティセに背中を向けた。顔はまだツギハギのままだが、右半身はティセの色になった。昨日よりも速度も範囲も広い。一通り確認するとアルノルドはティセと二人、ソファに座った。


「昨日よりも二つ目の封魔具を外してもらった今日の方が、魔力の浸透率がいいな。いくらティセの魔力に馴染みやすくなったからと言って、こんなに変わるんだろうか。」

「何か、問題があるのですか?」

「いや、封魔具のことはあまり詳しくないからな。近いうちに封魔具を使っている叔父に会いに行こうと思う。」


顎に手を当てて考えていたアルノルドだったが、ティセの方を見るとニヤリと笑って言った。


「まあ、これで封魔具はなくなったな。今日から夫婦として、もっと先の段階に進めるわけだ。できるなら、ティセに心の準備をさせてやりたかったんだがなあ。」

「いえ、封魔具はまだあります。」

「・・・二つじゃないのか?」

「はい。全部で四つあります。」


アルノルドは多少、いや、ものすごくがっかりしたが、顔には出さずにティセに聞いた。


「そうか、四つもあったのか。本当にティセは苦労をしたんだな。残り二つはどこにあるんだ?」

「あの、その、足首に・・・。」


この世界の女性は足首が見えない長さのロングスカートをはくのが普通で、ティセももちろん同じ服装をしている。足を晒すのは夫の前だけなので、今はコンラッドも同じ部屋にいるので見せられない。


「コンラッド、廊下に出ていろ。」

「かしこまりました。」


コンラッドが部屋から出ていくと、アルノルドはソファに座っているティセの足元にしゃがみ込み、スカートを少し持ち上げる。


「腕の封魔具と同じものだな。」

「は、はい。」


アルノルドは真剣に封魔具を見ているのだが、ティセは恥ずかしくて仕方ない。そんなティセに気付かず、アルノルドはその体制のまま考え始める。


多分封魔具に抑えられている魔力で自分の体は全部ティセの色に変わるだろう。その後、ティセと体を繋げてティセから魔力を奪うと、自分の器の8割くらいは魔力で満たされるだろうか?それとも結界が奪う量がさらに増えるだろうか。


「あ、アルノルド様。その、もう、よろしいですか?」


ティセの言葉に、考えに没頭していたアルノルドはふと我に返った。ティセを見上げると、ティセの顔は真っ赤に染まり若干涙目だった。


「ああ、すまん。俺が悪かった。」


そう謝ってスカートを降ろした時に、扉がノックされ、コンラッドが扉の外から話しかけてきた。


「アルノルド様、王弟殿下がいらっしゃいました。」

「叔父上が?」

「はい。アルノルド様と奥方にお会いしたいと。」


外交で国を空けていた王弟ローレンスが帰ってきたようだ。ティセをまだ紹介していなかったと、ティセを連れてアルノルドは応接間に下りた。


**********


「叔父上、ようこそいらっしゃいました。」

「アルノルド、おめでとう。僕は結婚式に参列できなかったから、直接お祝いをしに来たんだ。本当の花嫁を見つけられたんだね。」

「はい。俺の妻のティセです。ティセ、挨拶を。」

「は、初めまして、ティセと申します。」

「ふふ。初々しいね。・・・随分と魔力があるようだね。それでは今まで大変だったろう。」


ローレンスはティセを見るとそう言った。ローレンスは王族の中で一番魔力がある。片腕に封魔具をしているほどだ。そして、ローレンスには魔力を見る力があった。


「アルノルド、彼女は封魔具を?」


アルノルドはローレンスに外した封魔具を見せながら返事をする。ちょうどローレンスに聞こうと思っていたので、持って来ていたのだ。


「はい。二つは外しましたが、あと二つ」

「封魔具を外す時は詳しい人物を近くに置くべきだったね。」


ティセの封魔具を見ると、アルノルドの言葉を遮って厳しい口調でローレンスはアルノルドに言った。


「え?」

「まあ、君たちの相性が良かったおかげで大事には至ってないけれど。僕の封魔具は、僕が無意識に出してしまう魔力を押さえつけるものだけど、この封魔具は僕のと違って蓄積するタイプだよ。彼女はアルノルドと反対なんだ。」

「どういう事ですか?」

「つまり、彼女の魔力に対して器が小さいんだよ。だから、封魔具を器の代わりにして、彼女の中に魔力をとどめておいていたんだ。」


アルノルドはローレンスの物とティセの物は同じだと思っていたので、いまいちよくわからず、聞き返す。


「外してしまったのはよくなかったということですか?」

「いや、外した後の問題だよ。封魔具を外してアルノルドが魔力をもらったよね?」

「はい。」

「その後に、はめていた封魔具を戻さなくちゃいけなかったんだ。そうしないと、彼女の体はなくなった魔力の分をまた作り出す。だけど器はないから魔力があふれ出て暴走するところだった。」


ローレンスの言葉にアルノルドは青くなる。


「俺はティセをそんな危険な目に合わせていたのか。」

「大丈夫です、何ともなかったです!!」


愕然とするアルノルドを見て、ティセはすぐさまローレンスに反論する。


「うん。だから、相性が良くて助かったという話さ。君の体が作ってしまった魔力はそのままアルノルドのところへ行っている。恐らく最初の魔力の受け渡しで魔力の道筋が出来上がったんだね。封魔具の代わりにアルノルドが器になったんだ。」

「では、ティセは大丈夫なんですね?」

「ああ。彼女の作った魔力はアルノルドに流れて、アルノルドの魔力と融合して、最終的にアルノルドの物になっているね。」

「良かった。すまなかった、ティセ。」

「いえ。私だってアルノルド様を危険にさらしてしまったのです。自分のことなのに何もわかっていなくて、ごめんなさい。」


謝りあう二人をほほえましい顔で見ていたローレンスは、アルノルドに尋ねた。


「アルノルドは魔力をもらって、いつもと違ったことはなかったかい?」

「そうですね、昨日封魔具一つ分の魔力をもらって、目覚めた時は平気だったんですが、結界にごっそり持っていかれて、今までに味わったことのない飢餓感が襲ってきましたね。」

「それで?」

「すぐにティセにもう片方の封魔具の魔力をもらいました。その時に満たされるのが速かったんですが。」


ローレンスはアルノルドの話を聞いて考えをまとめた。


「なるほどね。もうやってしまったことは仕方がないけど、その封魔具は二つとも彼女につけておいた方がいい。今まで少しづつしか魔力の増減がなかったのに、それがいきなり大量になると、アルノルドの体がついていかないよ。封魔具をつけて、アルノルドへの魔力の流れを一旦止めて、その飢餓感がやってきたら、少しづつ魔力をもらった方がいいね。」


そう言ってアルノルドにティセに封魔具をつけるように促す。アルノルドがローレンスに言われた通り、ティセの腕に封魔具を戻しているのを見ながら、ローレンスは続けた。


「満たされるのが速かったというのは、一つ目の封魔具の魔力がアルノルドに流れていたからだ。外した封魔具の代わりにアルノルドに溜まり始めた魔力と、二つ目の封魔具の分をもらっていたから、前日よりも量が多かったんだと思うよ。」


ローレンスは封魔具を付け終わったティセとアルノルドを見て、アルノルドへの魔力の流れが止まったこと、そして、アルノルドから結界へ奪われている魔力も量が減ったことを確認すると、もう一度よくアルノルドを見た。


「しばらくはそうやって封魔具を付けたり外したりして、アルノルドへの魔力を調節した方がいい。少しずつ増減を繰り返して、段々魔力の量を多くしていって、体が慣らすんだね。そうすればちょっと時間はかかるけど、彼女の封魔具を安全に全て外せるようになるよ。あと、彼女の魔力はアルノルドの体に馴染むのが速いね。だから、一週間もたたないうちにアルノルドの体は全て彼女の色になると思うよ。」


アルノルドは時間がかかるというローレンスの言葉に反応する。


「叔父上、叔父上の予想ではティセの封魔具を全部外せるのはどのくらいかかると思いますか?」

「うーん。封魔具はいくつだっけ?」

「四つです。」

「僕の予想だと・・・1年以上はかかるんじゃないかなあ?」

「そ!そんなに!?」


どうやらアルノルドとティセが本物の夫婦になれるのは当分先のようだ。アルノルドにとってはありがたいけれども嬉しくない助言をしたローレンスは、外交先から直接アルノルドの家に来てしまったので、王宮に帰るという。見送るため玄関に行くと、いきなりローレンスはアルノルドに尋ねた。


「ああ、そうだ、アルノルド。跡継ぎではない、優秀な次男か三男を知らないかい?」

「俺が知っているのはランディですかね。」

「うーん。やっぱり彼が一番かな。」

「叔父上?」

「じゃあ、僕はこれで失礼するよ。封魔具のことは一応アルノルドよりは詳しいからね、また何かあったらすぐに知らせるように。アルノルドが幸せになってくれて、本当に良かった。」


アルノルドの疑問には答えず、ローレンスは笑顔で去っていった。


後日、その時に名前の挙がったランディが予想外の人物と結婚したことで、アルノルドとティセはモートン侯爵家に行くことになる。

ローレンスがランディの名を出した理由、それを次の番外編を書きたいと思っています。ただ、申し訳ありません、遅くなります。

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