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勇者殺しの勇者 〜ヤサグレ勇者は青ヘビと旅をする〜  作者: 零壱
第1章

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17/30

幕間・青ヘビの主様観察日記。②




「アクティ」

「ふぉ」


 転移バビュンは目が回ります。

 グルグルふらふらするボクの身体に、主様の手が触ります。指で撫でられてパチパチ瞬きです。


「おぉ、おうちです」


 あっという間に着いたドデカいお城は聖女のおうち。

 魔女と荷物持ちのおうちでもあって、主様とボクのおうちです。

 謁見の間にはいつもたくさんの人間がいます。

 まっ白しろな壁に並んだ兵士たち。ピカピカ石の上に立って話すエラそうなオッサンたち。

 二段高い場所で真ん中の椅子に座った、ヒゲもじゃ。聖女のおとうさんです。主様を見て目ん玉ひん剥いてます。


「アクティ。俺の目は何色だ?」


 いつも通りのお城。

 ワーワー騒いでる周りの人間に、聖女が何か言ってます。ボクは主様の顔を見るです。


「キンキラキラキラ金色です?」


 メガネは地味なのに、目はキンキラ。

 まつ毛もバサバサ。

 主様はチッと舌打ちして、ボクの身体をすっぽり入れるようにフードを引き上げるです。フードの中はちょっとホカホカ。適温です。


「ローラン、これを」

「いらね」

「ローラン」


 近づいて来た魔女が青い小瓶を出してきますが、そっぽ向いた主様は歩き出します。


「どこに行くんだ?魔力をあれだけ使ったんだ、無理をしてはいけない」

「シルフィの言う通りよ。意地張ってないで飲みなさいったら」


 右と左。

 ぐいぐい来る魔女と聖女。

 主様は嫌な顔。

 でも、だんだん、イケメンです。


「主様?」


 茶色の髪が黒になり始めて、ボクはどデカいお部屋の、どデカい窓を見ます。まだ明るいです。


「あん?」


 主様の手がボクの頭を撫でます。

 魔女も聖女も、周りの人間たちにも顔を向けずに、主様が向かう先はまっすぐ部屋の外。


「やっぱり変身魔法、止めるです?」

「…………」

「イケメンがいいですよ」

「…………」


 魔力をたくさん使って、使った以上にキラキラする主様。

 地味メガネには必要だった激マズお薬も、イケメンなら要らないです。


「ローラン」


 走って来た荷物持ちが主様の腕を掴みます。

 ギュッと眉を寄せた主様に背中を向けて、前を歩く荷物持ち。


「こっちだ」

「おい」

「アリア、シルフィ、待っていて」


 ブスッとした主様を引っ張り、ズンズン歩く荷物持ち。

 足を止めた聖女と魔女は置いてけぼり。


「仕方ないわね」

「了解だ。またあとで」


 ズンズン行きます。

 お城の廊下は人だらけ。

 荷物持ちに頭を下げたあと、主様を見て目を丸くしたり、真っ赤っかになったり、口をパカリと開いたり。


「どなた……?」

「さぁ……?」

「あの服に、あの使い魔は……」

「……ローラン殿か?」


 まさか。

 まさかとざわざわ。

 主様は主様です。

 人間はバカです。


「ペッ」

「こら、アクティ」


 ペッペとしたボクに、ほんの少し振り返った荷物持ちが困り顔。

 困ってるのに爽やかです。主様と違ってお得です。主様はイケメンでも爽やかじゃないです。


「紳士は唾を吐いたら駄目だよ」

「ボクは良い子です。紳士じゃないです」

「ローランに似すぎたなぁ」


 笑う荷物持ちは楽しそう。

 大きな扉の前、荷物持ちに気がついた人間二人がゆっくりと開きます。扉係です。お城にはいろんな係がいるです。


「着替えはあるかい?」


 パタンと閉まった部屋の中。

 主様の手を離した荷物持ちが、クローゼットに近づきながら聞くです。

 主様は左手を持ち上げて、毛先を見ます。真っ黒です。

 それからミチミチシャツと、寸足らずのズボンを見て、ほんの少しだけ笑いました。


「いつから知ってたんだ?」

「ずっと前から」

「言えよ」

「みんなそれどころじゃなかったんだよ」

「あぁ……」


 主様が息を吐きます。

 メガネを外して、フードを後ろへ下ろして、夜の姿。


「腕や足が千切れそうな時に、顔や姿なんて目に入らないだろう?……何度言っても、君はよく無茶をしたから」


 綺麗なシャツと、綺麗なズボン。

 困り顔の荷物持ちから受け取って、主様が短く笑います。


「前衛がビビってどーすんだ」

「勇猛と無謀は同じ意味じゃないよ」

「ハッ……」


 諦めたような、嫌になったような笑い方。


「おまえ、さてはバレてんの知ってたな?」


 主様に鼻先をちょんと押されたボクは、パチパチ瞬き。


「バレないわけないです。知らなかった主様がバカです」

「アクティの言う通りだよ、ローラン」


 戦うのは昼間。

 怪我を治すのは、陽が落ちてから。

 お薬で治らない怪我のとき、主様はボクを呼ばないです。パタンと倒れて、真っ赤っか。魔女が戦って、聖女が癒して、荷物持ちが火を熾(おこ)す。ボクは主様にすりすりして、主様を呼ぶです。


「ボクはちゃんと、お肌のためにって歌ってたです。秘密って言わないですよ。聞いてなかったです?」


 頬に頭突きです。

 それから、金ピカ主様をじっと見ます。


「歌詞に意味あったのかよ」

「芸術です」

「芸術が泣くわ」

「バカです」


 芸術は泣かないです。

 泣くのはいつも、聖女とボクです。


「こちらにおいで、アクティ」

「むぅ」

「ローランに着替えをさせてあげよう?」

「仕方ないですね、主様は」

「俺かよ」


 ため息を吐いた主様から、伸びてきた荷物持ちの手ににゅるにゅる移動。

 荷物持ちが背中を向けます。

 主様が着替えます。


「支度が終わったら食事にしようか、アクティ?」

「お肉あるです?」

「あるよ。君が大好きなクコの実もたくさんある」

「クコ!」


 荷物持ちの腕はちょっぴり不安定。

 でも良い子なボクはユラユラ揺れます。


「クーコ、クーコ、ボクのかわいいク~コの実~」

「絶対意味ねーだろ、それ」


 ペッとヤサグレた主様。芸術がわからなくてもいいです。ツヨツヨキンキラなら、ケガしないです。


「キンキラ~キラキラ~でぇ、ツヨツヨ~ツヨツヨ~」

「アクティ」

「はいです!」


 主様の肩に戻ったボクは、ツルスベほっぺたにたっぷり頬擦り。サービスです。




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