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第3話:カジノの裏側と、マスターのささやかな野心








■第3話:カジノの裏側と、マスターのささやかな野心






side:ダンジョンマスター ヒロユキ






 帰っていく冒険者達をダンジョンスキルの『千里眼』で見送る。


「いやぁ~これは上手く行ったのでは?」


 初めてのお客様に『ボク、悪いスライムじゃないよ』作戦の派生である『ウチ、悪いダンジョンじゃないよ』作戦を決行。

 非常に良い戦果を挙げたのではないだろうか?

 マイクたちは「生態系が狂って裏から支配されている」なんて冷や汗を流して深読みしていたが、ただ俺が初期投資として大量購入しておいたスキルの効果が絶大すぎただけだ。

 周辺の4都市に対して発動した誘導スキル『ダンジョン妖精の導き』によって何となくこっちに来たくなるように仕向け、さらに『妖精の加護』によって道中の強力なモンスターとの遭遇率を大幅に低下させた。

 これがないと、現地人がダンジョンに来るよりも先に俺が死ぬ方が早いからな。

 

 本当は、このカジノの店員代わりにモンスターを召喚して働かせようとも思ったのだ。

 だが、一番安いスライムではまともな意思疎通すら難しく、ゴブリンやスケルトンでは見た目も知能的にも厳しすぎる。

 何より、客である冒険者たちからすればモンスターというだけで即討伐対象だ。

 そんな連中をフロアに置けば、出会い頭に即、剣を抜かれて敵対され、防衛システムで片っ端から出禁になられても困る。

 そのため、今はまだ直接表に出ず裏に引っ込んでいる訳だが……なので万が一何かあれば、ポイントで買ったこの『幽霊騎士』とやらの鎧のコスプレで出ていくことになる。

 一応の身バレ防止と自衛のため、動きにくい恰好だが素顔を晒して外の冒険者に恨まれるリスクの重みを考えればこれしかない。

 ついでにボイチェンも付いてて結構イケボが出せるようになったし、何か言われても交渉くらい何とか出来るだろう。

 即、剣を抜いて襲い掛かって来るようなことだけは無いようにして欲しいものだ。


 周囲から人を呼び寄せるためにスキルを乱発したおかげか、千里眼の画面を見ていると、周辺の都市からもぼちぼちと冒険者達がやってきそうな雰囲気が出てきていた。

 だが、彼らは何気に何度も森の奥へと行こうとしているのだが、リアルな運が無いのか、途中でワイバーンや大蜘蛛といった危ないモンスターに遭遇しては、必死に撤退を繰り返していた。

 俺としては維持費を稼ぎためにも早く店に来て欲しいのだが、現状は無理をせず命大事に引き返してくれている状態だ。

 こちらとしては何とかあの魔物たちの包囲網を突破して、無事にここまで辿り着いて欲しいところである。


 まあ、焦っても仕方がない。

 俺は初のお客様の来店と売上を祝して、通販スキルで日本の『コンビニのハンバーグ弁当』を注文した。

 電子レンジなんて上等なものは無いが、通販の段階でアツアツの状態で呼び出せる親切設計だ。

 食べ慣れたデミグラスソースの味を噛み締めながら、俺は手元の共通財布の残高を確認してポツリと呟いた。


「……今はこれで限界だ。まだ設備投資費も維持費も回収しきれてない。あまりお金を使いすぎるのはヤバいからな。本当ならもっと贅沢に、美味い寿司や焼き肉なんかをタラフク食いたいところだが……。よし、そのためにも、もっと色々なものを食えるように、早く冒険者たちをここに呼び込まねば……!」


 口いっぱいに白米を放り込みながら、俺はニート生活の充実への切実な野心を燃やした。

 スロットの他にも、異世界人たちの度肝を抜くような地球の面白いゲーム機を仕込んで、例えば、本物の銀貨をアームで崩させる『現金タワー崩しキャッチャー』や、既存のゲーセンにあるようなピンポン玉を落として当たりを狙わせる『たこ焼き型の運ゲーキャッチャー』も商品を豪華にすればどうだろうか。

 想像するだけで脳汁が出そうだ。


「どうせならこのままカジノを拡張し続けて、巨大カジノタウンなんてのも悪くないな。不労収入で大金がガッポリとなれば、何の心配もせずニートを堪能できる訳だし」


 そんな将来的なメガタウン構想をぼんやりと独り言ちて、夢を膨らませる。

 ジャンジャンバリバリ稼いでもらうとしよう。

 俺の異世界ニート生活は、まだ始まったばかりなのだから。




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