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未来の旦那様(猫)から指令が来ました!?〜やらかし夫の溺愛プロジェクト〜  作者: しぃ太郎


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第06話 ヴィセルク夫人、出動です

クララ、伯爵夫人として初めてのお仕事です。


リアクション、ブックマーク、評価が本当に励みになっています。 一つひとつの反応に力をいただいています。


 レイナルト様の叔父様と従兄弟が訪れてきました。

 先ほどのキスマーク、効果があるといいのですが。

 口紅だからすぐに消えてしまうかもしれません。


 お客様に対応するために、レイナルト様は先に部屋から出ていった。

 ニャン旦那様は、そのまま部屋に残っているけれど、まあいいか。

 猫ですし。


 残された私は、ベルを鳴らして使用人を呼ぶ。

 ご親戚とはいえ、新婚夫婦の、それも初夜の朝に突撃してくるとは。

 これはなかなか厄介そうなお客様です。

 でも、これから慣れていかなければいけません。


「奥さま、お呼びでしょうか」

「あら?メイド長が来てくれたの?」


 てっきり、昨夜の支度をしてくれた年若いメイドが来ると思っていたのですが。

 しかし、顔を見せたのは意外な人物でした。


 昨日紹介された、メイド長。

 50代くらいの、とても厳しそうな女性です。

 初挨拶の時にも、笑顔はありませんでした。


 実家の使用人はみんな穏やかだったので、実は少しだけ緊張してしまう。

 メイド長と一人のメイドが部屋に入ってきて、私に頭を下げた。


「おはようございます」

「ええ。いい朝ね」


 メイド長は一瞬だけ、ちらりとベッドの方へ視線を向けた気がする……。

 やっぱり私の考えた通りです。

 メイドの噂は一瞬で広まりますからね。

 ベッドを乱しておいて、本当に良かった。


 二人はまだ指示を待っています。

 身支度はメイド長がする仕事じゃないと思うけれど。


 まあ、いいか。

 あまり時間もないですし。


 そのまま、彼女たちに用件を伝える。


「お客様に会うための支度を手伝ってくれる?」

「わかりました。ドレスはどちらに致しましょう」


 メイドがクローゼットを開くと、色とりどりの見覚えのないドレスが並んでいた。

 実家のドレスよりも量が多い。


 あれ……。

 これは、もしかして。


「これは旦那様が用意してくださったのかしら……」

「はい。伯爵夫人として必要不可欠なものですから」


 う……。

 確かに私の手持ちではここまで揃えられない。

 後でお礼を言わなくては。


 レイナルト様は、意外と私を気遣ってくれているようです。


「その黄色いドレスでお願い」


 メイド長は私が頼んだドレスを一瞥して、ゆっくりと別のドレスを手に取った。


「……こちらですか?もう少し落ち着いた色のほうがよろしいかと思います。これはどうでしょう」


 明るい栗色の髪に、青い瞳の私。

 自分では、黄色が一番似合うと思っていたのですが……。


 うーん。

 メイド長が勧めたドレスを見る。

 茶色。

 地味な気がします……。


「いえ、それじゃないわ。黄色いドレスの方にしてくれる?」

「……わかりました」


 ぴりりとした緊張感が漂ってしまった。

 あれれ……。

 駄目でしたでしょうか。

 でも、茶色だと全体的に埋もれてしまうんです。


 あ、そういえば報告しなくては。


「昨日、旦那様が実家からメイドを連れてきていいと許可してくれたわ」


 たぶん、メリーなら快く引き受けてくれるでしょう。

 幼い頃から、姉妹のように育った仲です。

 やはり、見知った人がいると心強い。


「……そうですか」


 メイド長の手が一瞬止まり、鏡の中で目が合った。

 しかし、スッと目を逸らされてしまった。

 数秒後、くしを手に持ったメイド長に質問される。


「奥さま、髪型はどのように致しましょう?」

「あまり待たせるのも失礼だから、簡単に結い上げるだけでいいわ」


 遅くなりすぎるのも印象が悪いはず。

 でも、身なりを整えなければつつかれる。

 本当に面倒です……。


「わかりました」


 年若いメイドが、薄く化粧を施してくれる。

 黙っているのも気まずいので、軽く話題を振ってみました。


「旦那様はお優しい方ですね」

「それは、もう。本当に立派になられました」


 そういえば、メイド長と執事長は旦那様の幼い頃から屋敷にいるのでしたっけ。

 この機会に、レイナルト様の情報収集をしてもいいかもしれない。

 背後でニャン旦那様が、身じろぎした気がするけれど。

 やっぱり、自分の旦那様の事は気になります。


「幼少期の旦那様はどんな感じだったの?」


 鏡越しに、何気なく聞いてみる。

 しかし、その質問にもメイド長は硬い表情を崩さなかった。

 あれ?

 幼い頃は、きっと可愛らしいご様子だと思うのに。

 あまり、世間話をしたくないのかもしれない。


「幼い頃から、とても優秀でした。亡くなられた大旦那様もとても立派な方でしたから。よく似ていらっしゃいます」


 数秒後。

 ようやく答えてくれたのは、当たり障りのない話でした。

 レイナルト様のやんちゃエピソードが聞きたかったのですが……。

 ですが、メイド長からは言いにくいかもしれないですね。


「奥さま。もう少し背筋を伸ばしたほうがよろしいかと。あとでマナー教師の手配を致します」

「………?」


 肩をぐっと掴まれて、姿勢を直される。

 マナー教師?

 レイナルト様から、そんな話は聞いていないです。

 やはり伯爵家の夫人としては、私ではまだまだ足りないのかもしれません。


「わかったわ」


 ――かたん。


 ニャン旦那様が僅かに、花瓶を揺らして音を立てた。

 珍しい。

 どうしたのでしょうか。


 なぜか、尻尾がぼわぼわしています……。


「あの猫は奥さまが?」


 メイド長の眉が寄るのを見て、慌てて言い繕う。

 ニャン旦那様が追い出されたら大変です。


「ええ。旦那様から許可もいただいてるから大丈夫よ」

「……旦那様が。何も聞いておりませんが」


 メイド長は納得できない様子なので、仕方がない。

 レイナルト様から説明してもらおう。


「じゃあ、旦那様から詳しい話を聞いて」

「……はい」


 彼女は、動物が嫌いなのかもしれません。

 これからメイド長と上手くやっていけるでしょうか。

 少し不安になってきました。


「終わりました」


 化粧も終わり、若いメイドが後ろへ下がっていく。

 髪もきっちりと結い上げられている。


「ありがとう。応接室まで案内してくれる?」


 メイド長と仲良くできるか。

 そんな心配よりも前に、ニャン旦那様の問題の方が重要です。


 しかも犯人候補だなんて。

 これは、私も気合いを入れなければ。


 椅子から立ち上がり、鏡で全身を確認する。

 派手すぎず、可愛らしい仕上がりだ。

 自分で選んでよかった。

 やっぱり黄色いドレスで正解だった気がします。


 よし、完璧。

 ぐっと顎を引いて、背筋を伸ばす。


 ――ヴィセルク夫人、出動です。


 

屋敷の中にも、少しずつ違和感が見えてきました。 この先、クララはどう動くのでしょうか。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

もし物語を楽しんでいただけましたら、

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