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未来の旦那様(猫)から指令が来ました!?〜やらかし初夜からの奮闘記〜  作者: しぃ太郎


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第03話 ニャン旦那様、未来を救いに来ました

ニャン旦那様の目的とは……。

とにかく男前な猫です。



「わ、私死んじゃうんですか……?旦那様も……?」

「なぜ、クララが!?」


 ニャン旦那様は、しばらく黙ったまま動かない。

 重い空気と、猫ちゃんの伏せた耳。


 ――え。本当なんだ……。


 それはさすがにショックです。

 落ち込む私の隣で、素早く何かが動いた。


 レイナルト様?

 私とは対照的に、レイナルト様が興奮して詰め寄った。


「理由は!?」

『……クララは病気だった』


 ニャン旦那様も、言い辛そうだ。

 病気。

 これから罹るのでしょうか。

 今はまだ健康なので、まったく実感がありません。


「医者だ。明日、すぐに医者を呼ぶぞ」

『落ち着け。クララが体調を崩し始めたのは、今から半年後だ』


 そこでニャン旦那様は、ふいっと視線を外に向けた。

 そちらは窓です。

 何を見ているのかしら。

 いえ、そんな事より――!


「それよりも、刺されるなんて!一体誰が?」


 病気は仕方がない。

 これから気をつければなんとかなるかも……?

 お医者様じゃないから、私にはわかりません。


 でも、レイナルト様は確実に事件に巻き込まれています。

 犯人さえ知っていれば対処ができるかも……!


『わからん。ほぼ即死だ』

「おい。間抜けか」


 レイナルト様、辛辣です!

 それは自虐ですか?

 でも、ニャン旦那様は気にした様子もありませんでした。


『ああ、ただの間抜けだな。俺のことは一度置いておこう』

「それでいい。まずはクララだ。病名は?」


 あれ。

 あの……。


 私が口を挟む隙がない……。

 会話のテンポが速すぎる……。

 よくトロいと言われる私には追いつけない速さで、二人は話し合っていきます。

 私のことよりも、レイナルト様の事件を……!


『……医者は気鬱だと言った。“ひとりになりたい”と、クララは向こうの別棟へ移った』


 それを聞いて、レイナルト様は息を呑んだ。

 そしてそのまま、窓の向こうを見た。

 その視線の先を追うと――。

 ああ。

 あれが、お話に出た『別棟』なんですね。

 ちょっと古くて、どんよりとした雰囲気です。

 あんなところに『一人でいたい』だなんて。


「それ、本当に私ですか??」


 お化けが出ると言われたら、一秒で信じるような建物ですよ?

 私が耐えられるでしょうか。

 夜に一人で?

 無理です。

 絶対に嫌です……。


「クララが気鬱?ありえないだろう!」

『本当にそう思うか?今日、お前は何を言おうとした』


 レイナルト様はぐっと喉を鳴らした。


「大丈夫です。未遂でした」


 それに……。

 やはり、レイナルト様は悪い人じゃないんです。

 今も申し訳なさそうに眉を下げて、こちらをチラチラと伺っているんですから。


「……ニャン旦那様。あまり責めないであげてください」


 私の言葉を無視して、彼らは睨み合っている。

 もう!

 私がもういいって言ってるのに!


『俺たちのせいだ。そう思わないか』

「………」

「違います!はい、これで終わり!」


 私は、パンッと手を叩いた。

 つもりだったけれど、ペチリと間抜けな音になってしまいました。

 でも、張りつめていた二人の空気が少しだけ緩んだ。

 それを感じて、そっと息をつく。

 良かった。


「ニャン旦那様、あのですねぇ……。そんな話よりも、もっと未来のことを教えてください」

『ああ、そのつもりだ。……クララ、お前に隠し財産を用意しよう』

「はい!?」


 我ながら素っ頓狂な声を上げてしまう。

 いきなり過ぎます!

 隠し財産?

 へそくり、ではなく?


『レイナルト。地図を持ってくるんだ。自分に何かあった時のために準備をしておく』

「……ああ。それがいい。待ってろ」


 レイナルト様は一つ頷き、扉の向こうへ消えていった。

 その間、ニャン旦那様はトンと私のお膝に乗ってきた。

 そして私の頬にその肉球を当てた。


 ――意外と痛い。


 でも、本人はちょっと爪が出ているなんて気づいていないはず。

 我慢します。

 だって、肉球ですよ。


「肉球尊い……!土足でも気にしません……!」

『土足……。心配するな。レイナルトは死なせない。君も絶対に守る。そのための保険だ』


 初めて男性から言われたその言葉に、胸がキュッとなりました。

 見た目は猫ちゃんですが。

 声は男性ですもの。


「持ってきたぞ……。って何をやっているんだ、君たちは」

「……ひゃあ!浮気じゃないです!」

「はあ?猫と戯れてるのが浮気になるわけないだろう」


 呆れたような声で我に返る。

 いけない、いけない。

 まずい場面をみられたような気分になってしまいました。

 ニャン旦那様は旦那様!

 猫ちゃんは旦那様です!


 レイナルト様はサイドテーブルに地図を広げた。


『ここの廃鉱山を買え。かなり安く売りに出されているはずだ』

「未来の情報か?」


 猫の手が、ある場所をトントンと叩いた。

 私も地図を覗き込む。

 知らない場所です。

 ですが、レイナルト様は知っているらしい。

 眉を寄せて、渋い顔を作っています。


『ああ。……金が出てくるぞ。二年後では、連日のように新聞を賑わせた』

「……なるほど。すぐに手配しよう」


 だから展開が速すぎますってば。

 え、私の鉱山になるんですか!?

 本気なんですか?

 金鉱山持ちの夫人になっちゃうんですか?

 レイナルト様も、もうちょっと慎重に考えて……!


「いえ、あの、待って……」


『これから、クララの環境改善をする。そして……』


 ニャン旦那様は一度言葉を切った。

 そして、タンっと軽い音を立てて机に乗る。


『そのためには、まずレイナルト。お前が重要だ』


 ああ、地図を破かないか心配です。

 そんな心配をしている私の横で、レイナルト様は無言で頷いていた。


『だから明日の朝から“溺愛”宣言をしろ!』


 胸を反らし、堂々とした貫禄で告げた。


「はあ!?」


 まずはレイナルト様の声が上がり。

 その数秒後。


「ええ!?」


 ようやく、私の驚きの声が上がったのでした。



 

次回、レイナルトの溺愛が来る……かもしれません。


ここまで読んでくださってありがとうございました。

もし少しでも心に残るものがありましたら、★で応援していただけると嬉しいです。

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