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未来の旦那様(猫)から指令が来ました!?〜やらかし夫の溺愛プロジェクト〜  作者: しぃ太郎


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17/20

第16話 報復? いいえ、社交です。

黒クララは、レイナルトが驚くほど早口です。



「旦那様……。どこのどなたでしょう。もう既に関係が?まさか……もう、お子様が生まれていたり……!?だから私とは白い結婚ですか!?」

「違う!潔白だ!いや、本当になんでだ!?」


 突然の後出し情報に、私はパニックです。

 レイナルト様も混乱して、疑問の声を上げている。


『……あれはエドガーに誘われた酒の席だった』


 ニャン旦那様が語りだした言葉を聞いて、スッと何かが冷えていきました。

 そう来ますか。

 そうですか。


「ああ、はいはい。お酒のせいにするやつですね。卑怯なやり方をするつもりですね。責任の所在を曖昧にする常套手段です。それぞれに少しずつ過失を分配して積み上げ、自分も悪かった……。だが、誘った人がいる。どんどんお酒を勧めた人もいる。断れなかった。そもそも飲み過ぎて記憶が曖昧だ。そうやって謝って誠実さを装うやつですね」


「今のを一息で!?クララ、人格が変わってないか……」


 レイナルト様が目を見開いて私を見ている。

 しかし、そんな些細なことはどうでもいい。


「さあ、ニャン旦那様。続きをどうぞ?」


 先を促す。

 問い詰める、とも言う。


『……いや。勧められて酔い潰れた。……目が覚めたら、ベッドで裸の女性といるところを発見された』

「やっぱりーー!!」


 あまりにも想像通りすぎて、思わず叫んだ。

 ギルティです。

 どう言い訳しても、お仕置きです。


「おい、その状況が怪しすぎるだろう」

『ああ。女性の名誉を傷つけた責任を取れ……とクララに泣かれた。それで愛人を作ることになった』


 しかも、妻(未来の私)にまでバレてるじゃないですか!

 可哀想な未来クララ……。

 自分は白い結婚で、外で愛人まで作られたら、それは落ち込むに決まっています!


「……最低です」


 呟く声が、自分のものとは思えないほど低い。

 でも仕方がない。

 今の気分がどん底なんですから。


『すまない。しかし、レイナルトの言う通りなんだ。もし、本当にそうだとしても、部屋を勝手に開けるなんてあり得ない』


 ふーん。

 なるほど。

 疑問点もある、ということが言いたいみたいです。


「そもそも、俺は酔い潰れた経験がない。そこまで酒に弱くないしな」


 レイナルト様は、ニャン旦那様の言葉に頷いた。

 素晴らしい連携ですね。


「……流れるように自己擁護が続きますね。では次は『嵌められた』ですか?」


 私は腕を組んで、顎を上げました。

 机の上のニャン旦那様を見下ろすような体勢です。


『本来なら従者が止めるはずなんだ。だが、エドガーが勝手に帰していた』


 まあ、一理あるかもしれない。

 爵位持ちの貴族男性ですからね。

 レイナルト様が単独で動き回るとは思えません。

 しかも、従兄弟のエドガー様が勝手に帰していたとは……。


「エドガーに命じられたら、従者も従うしかないな。……おい、言っていいか」

『いや。言いたいことはわかっている』


 往生際が悪いです。

 もし、嵌められたとしても脇が甘すぎる。

 危機管理がなっていません!

 レイナルト様の代わりに、私が続けます。


「間抜けかーー!!ですね」

『……うん』

「ああ、間抜けだな。……クララ、俺は違うからな。な?」


 小さく項垂れる猫は、ついにはボールみたいに丸くなっちゃいました。



 ◇◇◇



 未来の旦那様から衝撃的なことを聞かされても、私のやることは変わりません。


 毎日、執事長から教えを受け、必死に勉強しました。

 敵を知れば百戦錬磨!

 いえ、味方作りなのですけれど、そんな心持ちです。


 そして今日、こうしてお茶会に出席しています。


 席順は妥当です。

 ホストの伯爵夫人から、程よく離れた場所でした。

 事前に伺っていた通り、皆さんそれぞれ近い席の方とお話をしたり、ホストの夫人が話を振ったりして賑やかな雰囲気です。


 気を使ってくださったのか、私の両端は同年代の方でした。

 少し、大人しそうな……?というよりも、気弱そうに見えます。

 彼女は、お茶会が始まってすぐに視線を落としてしまいました。

 これは……もの凄く緊張しているようです。


(まずは、この方に話しかけましょう)


 確か、フォード伯爵夫人ですね。

 予習はバッチリです。


「ごきげんよう。先日は結婚式に出席してくださりありがとうございました。クララ・ヴィセルクです。よろしくお願いしますね」

「あ、あの、メーベル・フォードです……。こちらこそよろしくお願いします」


 挨拶だけで終わってしまうのは勿体ない。

 ここから話を広げなくては。


 しばらく話していて、フォード夫人は動物好きらしいことがわかった。

 猫と犬、どちらも可愛がっているらしい。

 フォード伯爵が犬派、フォード夫人は猫派みたいです。


「うちにも猫がいまして。主人の名前にちなんで『レイ』(ニャン旦那様)と呼んでます」

「ああ、馬車でお見かけしましたわ。なかなかハンサムな猫だと感心しましたもの!」


 着いてくると言って聞かないニャン旦那様を馬車に待たせているのを見られていたようです。

 しかし、お目が高い。

 なにせ、人になったら、貴公子として名を馳せたレイナルト様ですからね。

 猫になってもハンサム……。

 さすがです。


「ですが、馬車の中では退屈しているのでは……?」

「ああ、大丈夫ですよ。賢い子なので、御者と一緒にお散歩でもしているかもしれません」


 でも、フォード夫人は動物好きな優しい方のようですね。

 このまま仲良くなれそうで嬉しくなります。

 そう思った時に、彼女から提案されました。


「実は、うちの猫のお友達を探していまして――。もしよろしければ、猫同士でお見合いとかどうでしょうか」


 わぁー!

 次の約束を取り付けられそうです!

 ここは引く選択肢はありません。


「ええ、是非!そうだ、宜しければヴィセルク家に招待させてください。きっと主人も猫も喜びます」

「……まあ。ありがとうございます。では、楽しみに待っていますわ」


 その後も何人かの夫人と言葉を交わし、終始和やかな空気のまま、お茶会は終わりを告げた。


 そして、私にもお友だちができました。


(伯爵夫人としてのお茶会デビューでしたが、大成功です)


 ――これは、レイナルト様にご報告しなければ!

 少しは褒めてくれるかも……?

 なんて、ちょっとだけ期待してしまいます。


 十分後。

 帰りの馬車のなかで、ニャン旦那様の悲鳴が轟くのでした。




「浮気猫には、優しすぎる罰だ」


 屋敷に帰って猫同士のお見合いのことや、フォード夫人を招待することを報告しました。

 それを聞いたレイナルト様が、口元に手をやり、笑いを噛み殺しています。


「だからあの猫、どこかへ逃走しているのか」

「ええ。ですが猫はお酒を飲みませんもの。間違いなんて冒しませんでしょう?」


 私は首を傾げ、笑顔で答えた。

 それを見たレイナルト様は、一瞬ぴくりと震えました。

 あら、お可愛らしい。

 ちらり、と彼の足元に視線を落とす。


「……クララ。実は、結構怒っていたんだな」


 ふふ。当たり前です。

 自分では気づいていないようですね?

 少しだけつま先が浮いていますよ、レイナルト様。



 

ニャン旦那様の悲鳴は、是非エコー付きで再生してください。



ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

もし物語を楽しんでいただけましたら、

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