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異世界に神様はいらない  作者: 春野 いつき
第2章 猫耳の少女
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第11話 新たな生け贄

 


「はぁ~っ。いろいろあった一日だったな」



 灯籠の明かりに照らされる部屋の中、ベッドの上で薄暗い天井を見つめる勇馬は今日あった事を思い返していた。


 食事を終えた後、ニックは勇馬を寝床へ案内してくれた。

 とはいえ、実際にはマッスルの2階にある一室。

 物置だったその部屋を、勇馬たちが出かけている間にニックが片付けをし、とりあえず寝られるようにベッドを用意してくれてあるだけ。



「こんなとこで悪いが、他に必要なものは追い追いな」



 そうニックは申し訳なさそうにしていたが、勇馬からすれば寝るところがあるだけで十分ありがたかった。

 このまま横になっていると眠ってしまいそうだったので、確認しておきたい事があった勇馬は起き上がりベッドの縁に座り直す。

 胸元から取り出したペンダント――輝録石を握り≪表示≫と頭の中で呟くと目の前に文字が現れる。



 基本情報


 名前 ユウマ        変更

 種族 ヒト族        変更

 年齢 22歳          変更

 職業 商店マッスルの従業員 変更

 →



 昼間気になりつつ、中断していた続きを確認するため右下の矢印を操作する。



「何だこれ?」



 次の項目へ進み、内容を読んだ勇馬はその異様さに顔を(しか)めた。



 ステータス情報


 LV   1→$£§ new

 HP  15→℃&¢§¥$ new

 MP  23→¥&¥℃## new

 STR  3→$%&£% new

 VIT  2→¥¢£#§ new

 INT  8→@&¥@℃ new

 RES  6→#$#℃% new

 DEX  5→%℃¢¥@ new

 AGI  4→¢@℃¢¥ new

 lUK  1→℃¥¥&£ new

 ←            →



 その理由はステータス情報、と記された数値の半分くらいがおかしくなっていたからだった。

 よく見るとレベルアップしているようにも見えるが、変化した先のパラメーターがバグ表示されている。

 しかも何故レベルアップしているのかも勇馬には分からなかった。

 幾つか可能性を考えてはみたが、答えは出ないので勇馬は諦めて次に進むことにした。

 しかし・・・


 魔法一覧

 スキル一覧

 アイテム一覧

 称号一覧


 一つのスキルを除き、残り4項目全ての表示がバグ・・・いや厳密に言えば

 《*****》new

 という表示が大量に記されていた。


 ただ一つ視認可能なスキルは


 《言語翻訳 Lv.∞/ON》new


 このスキルのおかげで、異世界でも言葉が通じているようだ。



「目茶苦茶にも程があるだろ……これ俺の身体大丈夫なのかよ?まあニックさんにでも聞いてみるか」



 しかしスキルのレベル表示が数字ではなく、∞というのにも疑問が残る。

 不安はあったが気にしていても仕方ないと早々に諦め、ベッドへ横になる勇馬。

 バグのせいで分からないことだらけだったが、それでも分かったことはあった。


 それはストラが言っていたように、ここは本当にゲームのような世界だという事。

 レベルやステータスの概念。魔法やスキルの存在。魔物や魔王までもが存在する世界。



「ははっ、こりゃ生きて元の世界に戻る前に死ぬかもな」



 実力至上主義な世界を想像し、勇馬は身震いをしながらも口角が上がってしまう。

 恐怖はあるが、RPGの世界というのが単純に面白そうだと感じてしまったからだ。

 子供のころに遊んだゲームの世界を思い出しながら、勇馬はその夜遅くまで眠ることが出来なかった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ふあ~~~っ」



 勇馬は大きな欠伸をしながら、顔を洗うために店の裏口に向かう。

 水道がないので、井戸で水を汲まなければならないからだ。

 外に出たところで勇馬に声を掛ける人物がいた。



「おうユウマ、おはようさん」



 元気な声で挨拶してきたニックは、こんな朝からなにやらトレーニングしている。しかも上半身裸でだ。


 ニックの自宅はマッスルの裏にある。

 つまりマッスルの裏庭がニックの自宅の裏庭でもある。

 なので何も不思議ではない。

 顔だけ勇馬の方を向けたニックはその間も腕立てし続けている。



「お、おはようございます……」


「なんだ?ずいぶん眠そうじゃねえか。枕が合わなかったか?」



 ニックが筋トレをする姿にヤバイ人を見てしまったという目になる勇馬だったが、ニックは勘違いしてくれたようだった。

 慌てて表情を戻した勇馬は、ニックの横を抜け井戸から水を汲む。



「いえ、そうじゃなくて色々不安になってしまって……」



 そう言ってバシャバシャと顔を洗い、顔を上げた勇馬の前にニックが立っていた。

 そして昨日とは違う優しい笑顔で勇馬の肩を叩く。



「突然知らない場所に来ちまったら誰だってそうなる。でもな、ウジウジしたって始まらねえだろ。安心しろオレが協力してやる」


「ニックさん……ありがとうございます」



 マジでいい人だな――と感動していた勇馬の肩からニックの手が移動した。

 勇馬の二の腕、胸、腹、すね、ふくらはぎを触ったニックは、困惑する勇馬に満面の笑みで告げた。



「うん、やっぱりな。そういう不安は筋肉の鍛え方が足りねえからだ!オレが協力してやるから、これからムッチリ育ててやる。安心しろ、がはははっ」


「えっ、いやだいじょ」


「ほら今日から一緒にやるぞ。まずは腕立てからだ!」



 鍛えがいのある身体を見つけてしまったニックは、やる気満々で勇馬の言葉は耳に入っていないようだ。



「いやぁぁぁぁぁぁぁっ」



 勇馬の魂の叫びが街に響く。

 この日以降『ニックの新たな生け贄』と陰で噂されるようになっているのを、勇馬はまだ知らない。

次回更新日は8/4 0:00予定です

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