再びプロイセン王国へ
レオニスとブルーノは再びプロイセン王国を訪れることになった。
ともかくも魔法使いを魔石に変えるというシステムを詳しく知る必要がある。
先ぶれを出しておいたので、ヴァレンティノ公爵家でも既に事情は承知していた。
王宮でも対応が始まっているとのことで、後ほど王宮に伺候することになる。
「お父様が大変なものを使っていたようで、申し訳なかったわ」
リリアーヌも青い顔をしている。
妹が心配なのだろう。
「兄上に聞いてみたが実物を見たことはないそうだ。
法王がマリー王妃の兄だから、法王を先に訪ねた方がよいだろうね」
ラインハルトも事の重大性を承知している。
これがおおやけになってしまったらプロイセン王国が非難の的になるだろう。
魔法使いをよく思っていない一般市民は喝さいするかも知れないが。
「どうもちぐはぐだねぇ」
そう言うのはカールだ。
「どこがだ?」
「だってこれってただ魔石が欲しいという話でもない筈だろう?
こんな事をすればアストラル皇国を敵にまわすことになる。
魔石ぐらいじゃ割に合わないじゃないか?」
「魔法使いになりたいという事ではないか?」
「今は魔道具が普及している。
これだけの事をするなら、財力はあるはずだ。
今は魔道具が普及しているから、一般人でも魔道具を使うことで、魔法が使えるじゃないか」
「確かにそうだけれどね。
何だか悪意を感じるね。
明確にアストラル皇国を狙っているように見える」
「そうだとするとデルマー商会の線は消えるんじゃないか?
勿論一部取り込まれた奴らはいるにしても、ティラン会頭に旨味は無いだろう?」
「元々、デルマー商会が首魁だとは思っていないよ。
あそこはあくまでも商会だ。
既に経済界の雄なのに犯罪に手を染めるとは思えないからね」
「だがデルマー商会の線から黒幕に辿りつけないか、今探っているところだ」
「とにかくまずは実物を知りたいのだろう?先に法王を訪ねよう。
既に面会申請はだしてあるんだ」
そこにまたしてもカールの面白そうな声がかかる。
「ねぇ、おふたりさんは自分たちの妻を幽閉して安心しているようだけれど、逆に言えばルーナという、かなりのお騒がせ娘に龍という最終兵器を与えたんじゃないのか?」
そういわれて、レオニスとブルーノは愕然とした。
カールの言うことは最もだ。
レオニスはすぐにソラに二人が大人しく塔にいるか確認させることにした。
その頃、塔の中は大変に賑やかだった。
お騒がせ3人娘が勢ぞろいしただけではなく、ミレイア王女の守護者であるアーサーまでもが、作戦会議に参加していたからだ。
「とにかくデルマー商会の誰かが、違法魔石の売買に関わっているなら許せないわ。
徹底的にお父様に調べてもらうから任せて」
「お前馬鹿だろう。そんなことしたらせっかく犯人に繋がる細い糸が切られてしまうぞ」
「じゃぁどうすればいいのよ」
「餅は餅屋と言うだろう?姫、こっちで調べてもいいかな」
「お願いするわ。アーサー。デルマー商会は我が国の稼ぎ頭だからね。
恩を着せておきましょう。
商会長には動かないように言っておくから、糸を探って頂戴。
どれくらいかかるかしら?」
「デルマーには何人か入れているからね。案外もう掴んでいるかもしれない。
フウカ、僕の鳥を飛ばしてくれる?」
「分かったわ」
何といっても結界の張られた塔だ。
ここを自由にする抜けるのはフウカぐらいだ。
フウカが龍で本当に良かったとルーナは思う。
「今回は随分助けてもらって申し訳ないわ」
「気にしないで、対価は貰うから」
アーサーはにっこりとしてそう言う。
対価って何を求められるのだろう?
ルーナが困っていると、アーサーが教えてくれた。
「アストラル皇帝の玉を持っているんだろう。
その中から一つだけ、欲しいものを貰ってもいいかな」
「これは私のものではないのだけれど」
「大丈夫さ。君に与えたのなら所有者は君さ」
「わかったわ。何でも好きなものを取って頂戴」
「約束だぜ。勿論成功報酬だ。成果も出せないでもらうつもりはないさ」
「そう言っても、確信しているのでしょう?」
「当然、負ける戦はしない主義さ」
「ミリー。本当にミリーの守護者は性格が悪いわ」
「そうなんだけれど。これがうんざりするぐらいに有能なのよね」
「もしかしてアーサーが諜報の長なのかしら?」
「そういう事にはお答えできかねるね」
「ありがとう。アーサーはブルーノの立ち位置にいるのね。
その上多分王配になるのでしょう?」
「どうかなぁ。ミリーが望むならね」
ミリーを振り返ると苦笑いをしている。
「ルーナて思ったままを言葉にするのね。
そんなのでどうやって社交界でやってこれたのかしら。
皇太子殿下は頭を痛めているのではないの?」
「それねー。確かにレオニスはよく頭を抱えているわ。
わたしのせいじゃないと思うけれど」
「それ、100%お前のせいだな。レオニスに同情するよ。
よくこんな破天荒な娘を妻にしたものだ」
「いくらなんでも、そこまでじゃないと思うわ」
「そうよ。ルーナはいい子だもの」
「フウカ。今の論点はルーナが良い子かどうかじゃないんだけどね。
言うだけ無駄だよな。お前ら似た者同士だからな」
「それは無い」
二人の声がハモったので、みんな大笑いしている。
しかもアーサーがとどめをさした。
「今、違うと思ったところが問題点だ。それだけ否定するんだ
身に覚えがあるんだろう?」
ルーナは急いで話題を変えた。
「ところで、私達で今他に出来ることはないかしら?」
その時、フウカが警報を鳴らした。
「ヤバいわ。ソラがこっちにやってくる!」
「ようやくお前らのヤバさを思い出したようだね」
アーサーの憎まれ口を聞き流し、全員を転移させる。
「明日、また同じ時間にね」
アーサーが転移防止魔道具を解除して、こちらに転移したのは、フウカがアーサー達の痕跡を拭い去った後だ。
ギリギリ間に合ったみたい。
「ルナ、問題なく暮らしているか?フウカも?」
「ソラ、来てくれて嬉しいわ」
そう言ってフウカがソラに抱き着いたから、ソラはすっかり警戒心を解いてしまった。
「私は隣の部屋にいくから、後は二人でお話してて」
ルーナがそう言って部屋を出ようとすると、ソラは慌てて引き留めた。
「いや、気にしないでルナ。ちょっと様子を見に来ただけだ。
忙しいので失礼するよ」
「そんなに急がなくても」
「そうよ。ソラ。少しは私といてくれても」
ソラはフウカの頭をポンと叩くと消えてしまった。
二人で顔を見合わせて笑う。
「バレていないよね」
「その筈よ。ソラもすぐに帰ったし」
「そうよね、痕跡はなにもなかった筈だし」
ところが、全くなんの痕跡もない、整った部屋がソラに何かあると伝えてしまった。
人間が生活していれば、なにかしら生活の痕跡があるものだ。
フウカは急ぎ過ぎて、部屋を最初にあった地点に戻してしまった。
ルナとフウカは既に何日もこの部屋で過ごしていたというのに。
その報告は、すぐにレオニスとブルーノに届けられた。
法王のいる神殿にいく途中でブルーノは報告を受け取った。
そして苦い顔でレオニスに告げる。
「さすがにカールだ。ビンゴみたいだぜ。お嬢ちゃんたち、何かやっているようだ」
「参ったな。きちんと考えてたらわかる筈なのに。
どうもこの頃、後手後手にまわってしまう」
「そっちには陰を付けとくよ。一流の影使いで転移も出来る奴をね。
まさか見逃しはしないだろう」
「そうは言っても、部屋に潜むことも出来ないだろう?
部屋から転移されたら、防ぎようがない」
「確かに。それならソラにフウカの監視を頼もう。
もう監視しているとは思うけどな。
フウカはソラから魔力を常時取り入れているのだから、魔力の流れでフウカの位置はつかめる筈さ」
「あぁ、忙しいソラに常にフウカの居所をチェックさせるのは申し訳ないけれど、それしかないだろう。
全く、目を離すとろくなことにならないな」
「そう言いながらご機嫌じゃないか」
「まぁな。泣きながらじっと待たれるよりはずっといいよ。
ルナのそんなところに惚れたんだからな」
「ちぇ、惚気かよ。いい加減にしろよ」
「聞いたのはお前だぜ。ブルーノ」
二人の軽口は神殿の前で止まった。




