アストラル学院で
ヴァレンティノ公爵家の二人の娘とその婚約者
4人の留学が決まった。
アストラル皇国の学院。
この世界で唯一貴族位がある子弟のみが、魔法を学べる場所。
プロイセン王国の王太子とその婚約者も留学する
弟のラインハルトと婚約者のリリアーヌ
彼らの留学期間は1年。
アストラル皇国の公子であるクラウスとその婚約者ステラ達は2年間。
そう決まった。
卒業したら、どんなに若くても一人前とみなされる。
だから3年間しっかり学ばせたかったが……。
まぁ本人たちの希望だ。
羽を伸ばせる最後の機会。楽しんでくるとよい。
末娘だけお留守番させるのも可哀想で
一緒に連れてきたが、ルーナを留学させることはないだろう。
入学式の会場には、皇帝アストラル12世とその息子レオニスも臨席している。
さすがはアストラル学院だ。
世界中の国々から王族や貴族が集まる場所。
警備は万全だ。
だから油断してしまった。
気が緩んでいたのだ、二人とも。
最初はリゼの何気ないつぶやきだった。
「ルーナも婚約者が決まればいいのに」
その時、ルーナがあっけらかんと言い放った。
「ルーナの結婚する人なら、あそこに座っているわよ」
アストラルの皇子を指さして。
「どうして知っているの?」
ニルヴァが思わず聞いてしまった。
ここはアストラル。
この場での出来事は全て皇帝の知るところになるのに。
しかもプロイセン王妃マリーは遠見、遠耳を持つ。
知っていた筈なのに、衝撃が大きすぎた。
ルーナは当たり前のように言った。
「見えるの。お母さまが龍の子を産むのも見えたよ。
100年後に小さな龍の赤ちゃんがお母さまのお腹から、
ふよふよ出てくるの」
ニルヴァが神龍であることは王国の秘匿事項だ。
私たちは貴賓室のブースにいるから、周囲は側近しかいない。
けれど、プロイセン王妃マリーが顔色を変えた。
そして皇帝が皇子を連れてこちらにやってきた。
全部バレた。ルーナが予言の娘であることが。
予想はしていた。あまりにも特異点が多すぎたから。
しかしルーナは今まで一度も予言を口にすることが無かった。
だから……。
知りたくなかったのかもしれない。
予言の異能者はめったに現れない。
現れるとしたら、滅びの予兆があるときのみ。
世界を守るために予言者は予言をする。
予言者の寿命は短い。
滅びの予言とそれを回避する策を与えた時
予言者はその使命を終える。つまりは死んでしまうのだ。
世界を滅びから守るために
ルーナは皇帝の妻 皇后となる運命なのかもしれない。
けれど、運命なんて信じない。
ルーナを守ってみせる。ニルヴァがそう決めた時。
ルーナの前に皇子レオニスが跪いていた。
「ルーナ姫、どうか私レオニス・フォン・アストラルの妻になって下さい」
声になんの感情も入っていない。
おそらく皇帝に命じられたまま求婚したのだ。
その時リゼが止めようと進みだした。
慌ててニルはそれを阻止した。
今はまずい。皇帝の前だ。
だが……
「あなたは、だあれ? 私、あなたを知らないわ」
ルーナがおっとりと言い放った一言に皇子は絶句した。
「なんなんだよ!だってお前が」
皇子は最後まで喋ることが出来ない。
皇帝が息子に軽く触れるだけで皇子が崩れ落ちた。
「ルーナ姫。息子が驚かせて申し訳ない
おわびに御馳走させてくれないか? 可愛いケーキがあるんだが」
「ケーキ? 食べてもいいわよ」
ルーナがにっこりしてこの場は収まった。
しかし皇国の皇子が群集の面前でプロイセンの公女に求婚したことは、
あっという間に広がってしまうだろう。




