夕食会
約束通り夕食にはソラとフウカ。
そしてブルーノとリディア・フォン・エーテル公爵令嬢が同席した。
「フウカ、こちらがレディ、リディア、
明日から暫くあなたをサポートするわ」
「リディア、こちらがソラの奥方となるフウカよ。
公爵夫人となる予定なので、色々教えてあげてね」
「そしてリディアは俺の奥方になることが決まったんだ」
ブルーノが意気揚々と爆弾発言をする。
「まぁ、ブルーノ。とうとう結婚するのね。
リディアも教えてくれたら良かったのに」
「ようやく決めたか?エーテル公をよく説得できたな?」
「あぁ、なかなかの武人で最後は殺されるかと思った。
諦めずに日参して口説き落としたのさ」
ブルーノは少し遠い目をしている。
「いつプロポーズされたのよ。リディア。
全く気がつかなかったわ」
「いつ、ということもありませんわ。
ここ何ヶ月かずっと求婚されていましたし」
「求婚状なら、リディアが側近に選ばれた時に公爵家にだしているんだ。
全く相手にされていなかっただけで」
「まぁ、それなのにリディアはあんなに冷たかったの?」
「お父様を説得できなければ、決まらない話でしたからね」
リディアは余裕の表情でそんな事を言う。
なるほど、ブルーノがてこずったと言うはずだ。
「これで両翼に奥方が決まった。奥方たちにはリーナを助けて欲しい」
「はい、殿下。私どもが妃殿下の両翼になりますわ」
リディアがそう言うとフウカがしょんぼりしてしまった。
「私は役立たずだもの、とても片翼は務まらないわ」
「フウカ、あなたは自分が風龍だと言う事を忘れているのね。
風龍は確かに魔力は少ないかも知れない。
でも番を得た風龍は、巨大な結界を張れる筈。
それこそ国の守りに成る程の力を持っているのよ」
「そうかぁ、ソラの魔力が使えるのだったわ」
「それにフウカは私のお姉さまでしょう?
頼りにしているわ。お姉さま」
「任せて!」
ニコニコしてそう言うフウカには、幻の尻尾が見える気がした。
素直で可愛い子だ。
「それで、ソラの年俸なのだが年に1,000万Gでどうだろう?」
本当にレオニスは太っ腹だ。
年に1000万ゴールドなんて。母国の四半期分の予算に相当する。
「多すぎですよ。そんなに何に使うって言うんですか?」
ソラはそんなフウカの様子をニコニコしながら見ている。
先ほどはあんなに逞しかったのに、実態はこんなものだ。
「フウカ、多すぎて困ることはないよ。
どうせ公爵家の財産は民の為に使うのだから」
「そうよ、フウカ。
貴方たちだってずっと皇城に住むわけにはいかないでしょう?
いずれは城を建てることになるわ。
子供達だって生まれるのよ。
そうなると使用人の給与だって自分たちで払うのよ」
「まぁ、給与も!それは大変だわ」
「そのために側近を選んで、助けて貰えばいいの。ベルみたいな人をね」
「さすがにベルほど優秀な会計士はいないだろうけどな」
「まぁ、ソラがいるから心配するな。
皇子宮にいる間に必要な事を学びなさい」
レオニスの言葉に素直に頷いたフウカは、
自分の責任と向き合い始めたようだ。
「それで、結婚式はどうするの?」
「俺たちは半年後に予定しているんだが、お前たちも一緒にどうだ?」
「ブルーノ、それは助かるよ。今からだったら1年ほどかかるからな。
構わないのか?」
ソラは喜んでそう言った。
確かに今から式場を押えて準備をするのは大変だ。
「あぁ、両翼の結婚式だ。一緒で良いだろう?なぁレオニス」
「良いことだね。半年あれば準備出来るだろう。
ブルーノ、漆黒の梟のほかに、皇都の執政官を務めて欲しいんだ。
兼任してくれるか?」
「執政官なら漆黒の梟の仕事と被る部分も多いからな。いいぜ」
「エーテル公爵が皇太子派の重鎮になってくれたんだ。
勿論内密にだがな。
それで公子のマルスが補佐官になってくれることになった。」
「良かったな。エーテル公爵が後見してくれるのは、ありがたいな」
「あぁ、ずっと中立を保っていたからな。ブルーノのおかげだね」
「さすがに娘をブルーノに嫁がせるのだ。中立を保てるわけがない」
段々と話が政治的になってきたので、私達女性はティールームに移動した。
男性陣はシガールームに行くらしい。
「到着したばかりで、疲れたでしょう?
早めに部屋に戻る?」
「疲れているけれど、でもソラが迎えにくるまでここにいるわ。
一人で部屋にいるのは寂しいもの」
「ソラもすぐに切り上げてくるはずよ」
食後のお茶を飲み終えるころには、男性陣が迎えにきた。
お開きの時間だ。
ゆっくりと風呂にはいりベッドルームに戻ると、レオが先に戻っていた。
「お疲れ様、レオ。お風呂を済ませたのね」
「あぁ、ご苦労様ルナ。ルナも疲れたろう?」
「少しね。でも良かったわ。それぞれ番に会えたのね」
「そうだね。僕が君に初めて会った時は、知らないって言われたけれどね」
「まぁ、レオ。そんな昔の話を蒸し返すなんて!」
「いや、思い出しただけだ。僕のルナに出会った時の事をね」
「フフフ。私を返品するつもりだったくせに」
「ルナこそ、僕をおいて帰るつもりだったでしょう?」
「あら、そんなことないわよ」
「うん、ぼくも君を手放すつもりはないよ。僕のルナ」
「レオはいつもそう言うのね。僕のルナって」
「だって、ルナは僕のものだから。違うの?」
「いいえ、私はあなたのものよ。レオニス」
「愛しているよ。ルナ」
「愛しているわ、レオ」
ただ、黙って側にいるだけでこんなに愛しく思うようになるなんて。
愛って不思議だわ。
降り積もる雪みたいに増えていくのね。




