姪のフィオナと転生者?
結婚式が終わってすぐに、リリアーヌお姉さまが女の子を出産した。
名前は「フィオナ」白をイメージする美しい名前だ。
「フィオナはルーナの姪なのだから、贈り物を考えなければね。
何がいいだろうか?」
「そうですねぇ。フィオナはプロイセン王にとっても初孫ですからね。
きっとプレゼントは沢山貰っているでしょうしねぇ」
リリアーヌお姉さまにもお祝いを送りたい。何が良いかと考えていたら
フィクトス公爵となったクラウスとステラお姉さまがやって来た。
「クラウスお義兄さま、ステラお姉さま。いらっしゃい」
「ルーナ、私たちに姪が生まれたでしょう?
もうプレゼントは考えた?」
「いいえ、考えつかなくて。何かありませんか?」
「宝石ならクラウスがピンクダイヤモンドを用意してくれたから、これに守護の魔法をかけておくわ」
「それは素敵だわ。もう贈り物が決まっているなら、今日はどうしてこちらへ?」
「実はね、漆黒の梟からひとり、フィオナの従者にするのはどうかと思って提案しにきたのよ」
「なるほど。それならレオニスと皇帝陛下の許可を頂かないといけないわね。
漆黒の梟は皇室の諜報も担っているから」
そう言ってレオニスを見る。
プレゼントとしては素晴らしいアイデアではあるけれど、皇国の諜報員を私的利用するのは気が引ける。
「僕から皇帝陛下にお願いしてみよう。
影使いなら完璧な守護者になれるだろうからね」
「もし許されるなら、なるべく若い子がいいわ。
今訓練中で良い子がいないかしら?」
「影使いではないが、転移者なら適任者がいるぞ。
まだ5歳だが魔力が飛びぬけていてね。
ブルーノが引き抜いて、猶子として教育している。
孤児だからな」
「ではブルーノの意向も確認しないと」
ブルーノが現れた。聞いていたらしい。
「あいつは3つで一人前にかっぱらいなんかをやってたので、とっ捕まえて育ててきたんだが」
「ステラ、なぜヴァレンティノ公爵家に影を置きたいんだ?」
「ヴァレンティノ公爵家もフィクトス公爵も、龍の血脈を守る一族でしょう?
私がフィクトス公爵家に来たように、ヴァレンティノ公爵家にも繋ぎがあった方がいいかと思うの」
「成る程な。皇帝陛下もそれならお許しになるだろう。
それでその子の名前は?」
レオニスの問いにブルーノは少しきまり悪そうに答えた。
「カイト。俺の名前を付けたんだ」
「余程気に入っているのね。まさかその子も異世界人なの?」
「転移者ではなく、転生者ではないかと思っている。
カイトには記憶らしい記憶がない。
それなのに魔法だけは、教わらなくても使いこなしていたんだ」
「ソラにしてもブルーノにしても異世界人は魔法を龍みたいに自在にあやつるからな。
それなのに異世界には魔法がないそうだ。
不思議なものだなぁ」
「それじゃぁ、カイトと相談してくれる。
カイトさえ良いなら身分を整えないと」
「俺の養子にするよ。元々そのつもりだったからな」
「フィクトス公爵家の公子なら、従者という訳にはいかないわ」
「それなら猶子として預ける形にすればいいわ。
もしカイトとフィオナが将来結婚するにしても、その方が良いでしょう?」
「生まれたばかりなのに、結婚話はいくら何でも早すぎるだろう?」
「もしも、もしもの場合よ。
一緒に育つのにその可能性も考えておかないと」
「もう、決定みたいだな?」
「そうね。それなら私達皇家からは、カイトに何か持たせてあげましょうよ」
「ダイヤモンド鉱山を一つプレゼントとして付けよう。
カイトも自由になる金がある方が良いだろう」
凄い!
時々私はレオニスとの金銭感覚の違いに眩暈がしそうになるけれど、大切な姪に強力なお守りが出来て安心した。
いつの間に連れてきたのか、ブルーノが黒髪の小さな少年とやって来た。
少年はにっこり笑って礼をした。
「初めまして、カイト・フォン・フィクトスでございます。
フィオナ姫の御身は一命かえてもお守りいたします」
確かに、とても5歳とは思えない。本当に記憶がないのだろうか?
彼の纏う魔力はレオン王の魔力と似ている。
彼の子である、テオドールやラインハルトよりも……。
不思議な子。
私は思わず聞いてしまった。
「あなたは、レオン王を知っているかしら?」
「いいえ、お会いしたことは一度もございません」
彼の言葉には微塵も嘘はなかった。
けれどもしもプロイセン王を知っているかと聞いたらカイトは何と答えただろう?
そんなバカげたことを考えてしまった。
馬鹿げている、先代の国王が亡くなったのは、カイトが生まれるずっと前なのだから。
こうしてカイト・フォン・フィクトス公子は
プロイセン王国のヴァレンティノ城に入ることになった。
美しい白亜の城に、フィオナ姫の守護者として。




