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皇子さまは今日も最弱娘に振り回される  作者: こもれびの空


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皇太子妃

 ルーナが目を覚ますと、側にはステラが付き添っていた。


 「お姉さま。どうしてここに?」


 「あら、妹のお見舞いをするのは当たり前だとおもうけれど」


 「そうではなくって、クラウスはよく許しましたね」


 「クラウスはわたしの望みは何でも叶えてくれるのよ。

  知っているでしょう?」


  ルーナは少しづつ違和感が積みあがっていくのを感じていた。


 「お姉さま、私は何日くらい寝ていましたか?」


 「あなたって子は。ぼんやりしているくせに見逃してくれないのね

  そうねぇ、今日で5日目よ。医者が言うよりは早く目覚めたわね。

  リリアーヌがこっちに来ると大騒ぎするから、止めるのが大変だったわ。

  リリアーヌも身ごもっているからね」


 「えっ!早くないですか!」


 「そう言うことは言わないのがお約束よ」


  ステラお姉さまは指で私のひたいをぱちんとはたいた。


 「痛いです。おねえさま」


 「起きたなら、私は帰るわね。扉の前にクラウスが待っているから」


 「クラウス義お兄さまが? 私もご挨拶を……」


 「いいから寝てなさい、どうせすぐにレオニスが飛んでくるでしょうから」


  ステラお姉さまの言う通り、入れ替わりにレオニスがやってきた。

  くるなり、ぎゅっと抱きしめられて窒息しそうになった。

  それで、どれだけ心配をかけたか判ってしまう。


 「レオ、ごめんね、心配かけて」


  いつの間にか私はレオに抱っこされていた。

  レオニスはよほど心配だったのだろう。


 「少し食べた方がいいね。ずっと寝ていたんだから」


 「一人でたべられますわ。降ろしてください」


 「それじゃぁ、ベッドで食べなさい」


  侍女たちがすぐにセッティングしてくれたのだけれど、妙に固い。

  ゆとりがないというか、落ち着きがない。

  私が目覚めたというのに喜びよりも心配がまさっている。


 「レオ、ちゃんと食べるから、言わなければならないことを、

  早く言ってちょうだい」


 レオはじーっと私を見た。


 「どこまで覚えている?」


 「ソラが私に抱き着いて、光が……。ソラは!ソラは無事なの?」


 「今は落ち着いているよ。仕事も始めたしな。

  あいつ俺から逃げられると思っていたんだから笑えるね」


 ???

 「レオ、説明!」


 「短気だねぇ。そのスープ飲んでしまいなさい」


  私はせっせとスープを飲みながら、頭もせっせと動かした。

  久しぶりだ。こんなに頭を働かせたの。


 「ソラは無魔力になったのね」


  ご名答とばかりにレオニスは頷いた。


 「ノラロー街。そこをソラに任せているのね。

  セデスとアローがいればソラは安全だから。」


  レオニスは何も言わない。


 「最初からノラロー街はソラに任されていた。レオが両翼を望んだのは嘘じゃない。

  ブルーノは表の、ソラは裏の右腕なのだわ」


 「レオ、私の能力はどれくらい制限を受けているの?」


 「30年だ。もういいでしょう。父上」


  最初から聞いていたのだろう。皇帝陛下と宰相閣下。

  ほとんど王都にいない辺境伯が一緒だった。

  これはテストだったのだ。

  予言者でなくなった私が皇太子妃にふさわしいかどうかの。


 「これで良いかな?」

 

  皇帝の問いに宰相が頷いた。


 「十分です。失礼いたしました。皇太子妃殿下」


 「いいえ、ご足労頂いて申し訳なかったわ。ご心配をおかけしました。お父様」


 「元気そうで良かった。後で皇后とソラには会ってやりなさい。

  私はこれで、身体を労わりなさい」


  そしてお父様の側近の方々は、皇太子と私にきちんと礼をして帰っていった。


 「すまない。ルナなら乗り越えられると信じていた」


  レオニスが後ろめたそうにそう言った。

  陰で皇帝陛下をはじめ高官方が隠れていたのなら、侍女たちだって緊張するはずだ。

  私はレオニスにもたれ掛かって同じことを言った。


 「説明プリーズ」


  レオニスは、私を抱え上げえると、


 「ソラにも困ったものだ。変な言葉ばかり教えて」


 そしてゆっくりとこれまでの事を教えてくれた。

 大体は私の想像通りだったけれど、想定外に貴族会議が反発した。

 なにしろ私の国プロイセン王国は弱小国だ。しかも王女ですらない公女。


 龍の娘であることは、先ほどの高官たちしか知らない国家機密だ。

 元々はフィクトス公爵から皇后を娶るのが慣例なのだ。

 反発があるのは当たり前だ。それを抑え込んでいたのが、私の異能、予言。

 それが使えないなら、お払い箱になっても仕方がなかった。


 レオニスはこのことを予想して枢機卿に無理を言って結婚したのだろう。

 そして貴族会議は余計に反発した。

 私が無理に既成事実を作った悪女だとされたのだ。


 多分だけれど、ソラの固有魔法が、無効化だと知ったときにレオニスは、

 ここまでのシナリオを描いたのだろう。ソラへの贖罪にノラロー街を用意して。


 だけどソラは有能だった。レオニスが欲しがるほど。

 皇帝が異能抜きで面白いと思う程度には。


 レオニスはそこで一度は計画を変更したはずだ。

 幸いフィクトス公爵家の公爵位が空くはずだったから。


 そこにブルーノが現れたから今回の計画を実行したのだ。

 今回、私を皇太子妃と認めたのは、皇帝とレオニスの力技だ。

 貴族会議は納得していない。私の宮廷生活は厳しいものになるだろう。


 「ルナ。ごめん。」


 「レオは私を守りたかっただけよ。それにソラも守ってくれたわ」


 「そうだけど、そうじゃない」


 「知っているわ、きっとソラもね。許してくれたんでしょう?」


 「無理やりだけどね」


 「ねぇ、ソラはレオよりずっと頑固よ。利では釣れないの」


 「そうだな。思い知ったよ」


 「ソラが兄上のままでいてくれて良かったね」


 「ギリギリだったんだ」


 「そのギリギリに間に合ったんでしょう?」


 「そう、ソラは笑ったんだ。あいつ凄いよなぁ」


 「だから両翼なんでしょう?」


 「あいつ俺を尊敬しているんだってさ」


 「レオが皇太子じゃなかったら?」


 「僕は皇帝になるんだよ。それは変えられない」


 「だったら、ソラのおかげで孤独ではないはずよ」


 「そうだな、古龍さまがブルーノもくれたし」


 「レオには私もいるわ」


  レオは何も言わなかったけれど、瞳が少し揺れていた。

  その瞳はね。皇太子ではないレオの瞳なのよ。

  あなたは時々瞳が揺れるわ。


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