ソラと皇太子
レオニスがソラとブルーノを呼んで私室でお喋りすることになった。
クラウスとステラも同席する。
茶会とか格式ばったものではなく、兄弟の団欒だ。
お父様とお母さまにはご遠慮して頂く。同じ年ごろ同士のんびりしたいもの。
お茶の用意だけしてもらって、私がお茶をいれる。
お茶が大好きなので、いれるのもかなり上手なの。
「お帰りなさいレオニス」
「兄上、よくやったな。今回もお手柄だ。おかげで助かった」
「そうよ。お兄さま。お兄さまがいなければ結婚式が台無しになりそうだったわ。
クラウスが暴発寸前だったもの」
「ルーナもお帰り。たいした事はしていないよ。部下が優秀なのさ」
「僕からも礼を言うよ。おかげでステラを守れた。ありがとう」
「お帰りなさい。クラウス。ステラ。ご無事で何よりです」
クラウスが大人しく控えていたブルーノに声をかけた。
「君がお父様が認めたブルーノだね。フィクトス家を任せるからよろしくな」
「はじめまして。ブルーノと申します。この度は命を救われました。
ありがとうございました」
「さぁみんな座って。お茶をいれるわ。ステラお姉さまも手伝って」
「嫌よ。私がいれたお茶、美味しくないもの。私は美味しいお茶が飲みたいの」
「もう、お姉さまったら。クラウス、甘やかしすぎよ」
ワイワイと屈託なく話せるのは、やっぱり身内だけだ。
皆にお茶をサーブしながら、私は嬉しかった。
少し心配だったソラも楽しそうだし、ブルーノもすぐに馴染んでくれた。
「レオ、良かったね。両翼が出来て!」
「あぁ、成る程。ソラとブルーノがレオニスの右腕と左腕って訳だ。
両翼というのはいい命名だね。アストラルの両翼として有名になるだろうね」
クラウスが納得したように頷いた。
「あぁ、ありがたいね。これでどんどん仕事を回せそうだ。頼むぞ。二人とも」
レオニスも上機嫌だ。
話題は自然に自分たちの固有魔法の話になった。
クラウスは全員で共有してもよろしいとのお墨付きを与えたので
安心して話せる。
では私からと、レオニスが話す。
「(咆哮・威圧)これは皇位継承権第一位が持つアストラル家の血統魔法だ。
もう一つ私の固有魔法は(コピー)
制約は見たものであること。コピーできるのは1つのみ。
複数保有は出来ない」
異世界出身の二人の為にレオニスは、分かりやすく話す。
クラウスはにっこりと笑って言ってのけた。
「僕は龍だから制約はないよ。そして番であるステラにも制限はない」
「ステラお姉さまはまだ逆鱗を受け入れていないのに?」
「それが番の特徴なのさ。知られていないけどね」
確かに知らなかった。ステラお姉さまが一番上手に魔法を使うのはそのせいだったのね。
じゃぁ次は私ね。
「私の固有魔法は(予知)なの。
この予知は世界が騒乱や破滅に向かっているときに現れるとされていますわ。
そして制約は、世界の破滅とその回避方法を予言した時、
予言者は死ぬというものなの」
みんな辛そうな顏をしている。
私の死を回避しようとして、レオニスが破滅の予兆を潰して回っていることも知っている。
ソラが真っ青な顏をしている。
「なんでそんな事を平気で言うんだよ。死ぬって言われているんだぞ!」
「固有魔法は回避できない。運命なんだ」
レオニスがきっぱりと言った。
「あなたの婚約者なのに!」
「そうだ。ルーナは予知者だから私の婚約者となった」
「レオニス、見損ないましたよ。結局、固有魔法目当てなんだ!
ルーナは予知者だから婚約者にした。俺は魔法の無効化が出来るから皇子にされた。
全部、固有魔法目当てだったんだろ!」
「ソラ、少し頭を冷やせ」
「ソラ、落ち着けって。皇太子が一番苦しんでいる筈だ」
「ブルーノ。大丈夫だ。もうおちついたさ」
「ルーナ。ごめんな」
そう言いながらソラは私に近づいてそっと抱きしめた。
その瞬間、前が見えないくらいの白光が部屋中に広がった。
光が収まった時、ソラとルーナが折り重なるように倒れていた。
「侍医を呼べ!」
二人はすぐに自室に運ばれ、手当てを受けた。
すぐに宮廷魔法医も呼ばれた。
限界を超えた魔法を使った時、そして魔法の被害者の診断などを専門にしている。
皇太子室では結果を待つクラウスやステラの姿があった。
やがて皇太子が魔法医を連れて戻ってきた。
「それで?」
「皇太子妃殿下はソラさまの魔法無効化を最大レベルで受けた為、
固有魔法が使えない状態になっておられます。
しかし、いずれ回復されることもあろうかと……」
「どれくらいだ?回復にどれほどの時間が掛かる?」
「およそ、30年ほどかと」
「そしてソラさまは、固有魔法を限界を超えて使ったため。
魔法が使えない身体になりました。回復の見込みもございません」
皇太子が頷くと魔法医は、部屋を出て行った。
クラウスがボソリと呟いた。
「わざとだろう! お前はソラのメンタルの弱さを知っている筈だ。
あのような言い方をすれば、ソラが暴発することぐらい予見できたはずだ!」
「クラウス、殿下はルーナを守りたかったのよ」
「それで?得た時間は30年だ。30年後にはルーナは予言者に戻る。
必要があったか? 予言は30年後かもしれなかったろう?
こんな真似しなくても……」
「クラウス。お前だって番の為なら何でもするだろう?
その30年。ルーナは間違いなく生きていける。その為なら何でもやる!」
レオニスはきっぱりと言い切った。
つまり、ソラはルーナを守るために使われてしまった。兄だと言っていたのに。
「あぁ、結局アストラル家も龍の一族なんだな」
「それで?ソラはどうするつもりなんだ?無能力者になってしまったわけだが」
「そのためにソラには、ノラロー街を整備させておいた。
あの街の地権も営業権も全てソラの固有財産にしてある。
しかもソラはあの町の救世主だ。民にも慕われている。
あれは貴族をやるには優しすぎる。民の中で民と共に生きる方が
あいつは幸せだ。民を真っすぐに守ることができるからな。」
「お前!最初からそのつもりで!」
「ソラ第一皇子は皇太子妃を攻撃した。皇子位を剝奪し平民に落とす。
しかし功績を鑑み、ノラロー街を貴族の支配下から外し ノラロー自治区とし
初代区長に任命する」
「私は皇太子だよ。今までも、これからも」
そう言ってレオニスはふっと笑った。




