リリアーヌ姉さまの結婚式
リリアーヌお姉さまの結婚式は、なんの憂いもなく厳かに行われた。
ミゼラブル枢機卿は、
その名前が示すように既に法王になることが内定していた。
ただ前回王太子の結婚式に法王が来ていないのに、
公爵家の結婚式に来るわけにもいかず、
今回は枢機卿として祝福を授けにきたらしい。
レオニスが猊下と呼んだのは、
情報は掴んでいるぞ!って意味だったみたい。
情報共有は大事だよねって言ったら、
それ君が言うの?って返された。
白花トリカブトの一件を、まだ根に持っているの。
だって誰かに報告とかしたことなかったのよ。今までは。
まぁ。レオニスがとても面倒な性格だって判ったから、
なるべく相談することにする。
お父様は嬉しそうだけれど、お母さまは目に涙をためていらした。
娘が嫁ぐのは嬉しいけれど、少し寂しいらしい。
お父様とお母さまは少し早いけれど、精霊界に引っ越してしまう。
お義兄さまとお姉さまが短期間で宮廷を掌握したので安心したのだって。
お母さまは龍の息子を産むための準備に入るんだって。
龍の子供が生まれるのは100年先だって教えてあげたのに、
お父様には、余計な事は言わなくていい。と叱られた。
お母さまは真っ赤になってしまう。
何が悪かったのだろう。
レオニスに訴えたら、また自分の頭をぐりぐりしている。
多分私が何か間違えたんだ。きっと。
でも憂いがないのって素晴らしい。
本当は、少しだけ心配なことがある。
あの事件。本当に個人がおこしたことなのか?
裏になんらかの組織があるのじゃないかと思うのだけれど。
でも影の報告書も読ませて貰ったし、
表面上、違和感も問題点も浮上していない。
ただ私の予感が、何かあると訴えてきているだけ。
レオニスに言った方がいいかしら?
何て言うの?
なんか悪い予感がするって?
無理よね。
私は予言の娘なんだから、そんなことを言ったら大騒ぎになってしまう。
「どうした?この頭でまた変な事を考えているんじゃないだろうな?」
「そんな事ないわよ。もうすぐアストラル皇国に帰るのだなぁって思っただけ。
ねぇ、レオ。私の居場所はもうアストラル皇国になってしまったのね」
「違うね。ルナの居場所は、僕の隣だ。ずっと僕の隣はお前のものだ。
ルナだけの場所だ。誰にも奪えない。わかった?」
「ありがとうレオ」
おかしいわね。恋なんて知らない筈なのに。
なんだか胸がぽかぽかしている。
あの白亜のヴァレンティノ城は、お父様が望んだように、お姉さまのお城になった。
お父様とお母さまは人間界を去った。
でも私の隣にはレオニスがいてくれる。
お試しの婚約者候補は、もう妻になった。
レオニスは来年の入学前に、結婚だけはしておきたいと枢機卿に強要したのだ。
枢機卿は結婚式を挙げるまでは白い結婚を誓うなら。という条件で祝福をくれた。
書面も用意されていたから、私は実は皇太子妃なのです。
婚約者という不確かな身分から、正式に皇太子妃になったことも
お父様が隠遁を決めた理由だ。
ステラは龍の番だから心配はいらない。
私だけが頭痛の種だったのだって。
頭痛の種を皇太子が引き受けてくれたとお父様は笑っていた。
最近レオニスが頭をぐりぐりするのは私のせい?
そんな事はないわよね。
明日は皇城に帰る。身内だけのささやかな結婚祝いをするの。
結婚式となると、準備に1年以上かかるし、来年最低1年は学院に行かなきゃいけないから
正式な結婚式は2年後だ。
私は息子を産んで、そして孫が出来る。
それは決定事項だ。
だから安心していい。
安心?おかしいなぁ。
私は不安なんだろうか?




