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皇子さまは今日も最弱娘に振り回される  作者: こもれびの空


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黒龍さまの依り代とカイト

 ソラは皇子宮で古龍シュヴァルツさまと会っていた。


「名前はカイト。ミゼラブル教団からは神子だとして

 特別待遇を求められています。

 ありがたいことにね。

 おかげで特別室に入ってもらうことができました。

 そして、これが入学式初日のカイトと司教の会話です。」


 ソラは魔石を操作すると、空中に彼らの姿が浮き上がる。


「それと部屋付きのメイドがカイトの髪を入手しています。」


 ソラは全てをシュヴァルツさまに手渡した。


「カイトは完全な被害者のようですが、

 異世界人のようなので番様と血縁があるとは考えずらいのですが?」


 シュヴァルツはカイトの髪を己の手に握りしめて小さく呟いている。

 そうしてシュヴァルツはその血から、何かを知りえたようだ。


「私の番は双子であった。我がそのうちの一人を娶ると片割れが、

 共に行きたいと我に縋りついた。

 我は面倒になり異界にその者を送ってしまった。」


「我はあの時番を得て興奮しており、番しか見えていなかった。

 申し訳ないことをしてしまった。

 だが異界で結婚し子を生していたのだな。

 我が番には甥のような者。フィクトス公爵家の眷属として我が保護しよう」


 ソラはほっとした顔をする。

 あの様子を見た時は、同胞への憐憫と司教への怒りで

 思わず飛び出しそうになった。


 アローから


「黒龍の獲物を横取りする気ですか?」と言われるまでは。


「さすがにミゼラブル教団の法王が関与しているとは、思えません。

 もう少し泳がせますか?

 ただカイトがかなり苦しんでおります。」


 ソラとしては、すぐにでも救ってやりたいのだが、

 この件に関してはシュヴァルツの意向が最優先だ。


「私も龍だぞ。神龍ほどの力はないがの。」


 そう言うと、シュヴァルツは残っていたカイトの髪と

 召喚した魔獣とを融合させた。

 みるみる内にカイトが出来あがった。


 そしていきなりカイトを呼びだす。

 寝ているカイトの首のチョーカーを素早く取り外しそれを、魔獣の首に装着。

 チョーカーを外されて苦しむカイトの呪いを、魔獣に転嫁させた。


 カイトは訳が判らない。

 目覚めると、目の前に自分もどきと、恐ろしく威厳のある老人。

 そしてソラ第一皇子までいるのだ。


 きっと作戦がバレて殺されるのだろう。

 まぁ、いいか。

 闇に飲まれように死んでいくより、余程ましな死に方だろう。


 そう目をつむったのに、死はなかなか訪れない。

 目を開けると自分もどきはいなくなり、老人と皇子が困った顔をしている。


「大丈夫かい?君の呪いは依代に転嫁しているから、もう苦しくはない筈だけど?」


 皇子が心配そうに聞いてくるし、老人にいたっては。


「そなたは妻の甥。良ければフィクトス公爵家の養子となり、

 フィクトス公爵家を継いではくれまいか?

 なに、今のクラウス公子は、娘の2~3人も生めば

 お役御免とばかりにフィクトス公爵家を出ていくから

 後をそなたに託したい」


 などと言い出したのだ。

 カイトが目を白黒させたのも当然だろう。


 ソラ皇子がまぁまぁ、後はお任せください。シュヴァルツさまの意向に沿いますから。

 などと宥めたので、シュヴァルツは消えた。

 大方甥の存在を番に報せ、詫びてでもいるのだろう。


「少し説明が必要だろうね。フィクトス公子。

 あぁ、名前は変えてもらうね。神子と似ているうえに

 名前まで同じはまずいでしょう」


 そう言いながら、この言い方は皇太子そっくりじゃないか!とソラは苦笑した。


 セデスは既に古龍の意向をフィクトス公爵家に伝え、

 カイトの身分を整えるために動いている。

 アローが皇帝と学院に報告して決済を得たらしい。


「殿下。フィクトス公爵家公子。ブルーノ・フォン・フィクトス公子のお部屋を

 殿下の隣にご用意いたしました。

 すぐにフィクトス公爵家から近侍が参ります。」


「そう。クラウスが戻れば喜びそうだね。後継者が決まって」



「何? 何言っているの?クラウスって龍だと聞いているけれど?」


「まぁ、座りなよ。勿論クラウスは龍だよ。さっきの御老人もね。」


「マジか。龍が人化してるのか?」


「マジだね。ブルーノ。ブルーノって長いね。ルーって愛称で呼んでもいい?」


「だから、なんで俺がブルーノなんだよ!」


「ブルーノ・フォン・フィクトス公爵家公子だよ。自分の名前だから憶えてね。

 で、ルーでいいよね」


「好きに呼んでくれ。説明プリーズ」


「オッケー。こういう言葉つかえるのいいよね」


 そこからソラは知っている限りの異世界情報をルーに伝えた。


「情報が多すぎてアップアップだよ。でも助けてくれてサンキュー。」


「どういたしまして。君には兄上。

 レオニス皇太子の側近になって貰わないといけないからね。」


「なんだよ。こっちに来たのは俺と同じだろう?

 随分皇太子に入れ込んでいるんだな?」


「あぁ、尊敬しているよ。会えばルーもわかるさ」


「お前、普通にルー呼び定着させるのな?」


「失礼だったか?ブルーノ・フォン・フィクトス公爵家公子」


「止めてくれ。ルーと呼んでいいよ。呼んで下さい」


 そう言うとふたりで大笑いした。

 なんだかんだ言っても日本を知っているという事実が、

 二人を急速に仲良くさせた。


 

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