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皇子さまは今日も最弱娘に振り回される  作者: こもれびの空


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アストラル学院入学式

 プロイセン王国で王太子の結婚式が華やかに行われている頃

 アストラル皇国では、アストラル学院での入学式が行われていた。


 アストラル皇帝・皇后両陛下ご臨席の厳かな入学式。


 入学式で新入生代表として挨拶したのは、ソラ第一皇子。

 養子とはいえ第一皇子、憧れの瞳で見つめる女子生徒も多かった。


 ソラは心を込めて皇帝・皇后に深々と礼をしてそれから生徒たちを見つめた。

 その中に自分を射抜くような目で見つめる少年がいた。

 あいつか。ソラはその少年に一度視線を合わせて、そして全体に目を向ける。


「我々はこのアストラル学院で、

 魔法を極め友と切磋琢磨しながら自身を高めて参ります。

 また、皇子として我が国で学ぶために来られた方々を

 心から歓待する。

 共に友愛の心を育み、

 世界の融和と協調に力を尽くしてくれることを望む者である。」


 そう言うと今度は生徒たちに礼をして壇上をおりた。


 皇子が自分たちに礼をした。

 一瞬ポカンとした生徒たちだが、すぐに立ち上がって拍手を送る。

 皇子が私たちに共に未来を歩もうというのだ。

 型破りだが、面白い皇子だと生徒たちは思った。


 成る程ね。

 黒髪の少年は、吐き捨てるようにそう言った。


「たまたま、落ちるところが違っただけで、あいつは皇子さまって訳か。

 こっちは鎖付きの奴隷扱いだと言うのに」


 少年の首には、美しい銀のチョーカーが付けられている。

 中央には美しい翡翠が煌めいていたのだが……。

 忌々しそうに踵を返すと、自室へと戻っていく。

 寮の自室は豪勢なものだった。


 ミゼラブル教団の神子との触れ込みなのだから、

 本来は皇子が使う部屋が提供されている。

 部屋には神子に使えるという名目の司祭が待っていた。


「どうだったかな。同胞に会った感想は?」


「ただの運がいいお坊ちゃまだろ。あんなの」


「それなら、皇帝が養子にするわけがない。

 お前の仕事は奴の異能を探ることだ。わかっているな。

 カイト。そなたは闇の精霊ジェイド様に捧げられた貢物だ。

 その守りのチョーカーを外せば、あっという間に闇の精霊に食い殺される。

 我らの慈悲で生き延びていることを忘れるな」


 そう言うとポンと通信機らしきものを投げた。


「私はこれで帰る。こんな爬虫類臭い国に長くはいられないからな。

 何かわかれば、それで連絡しろ。

 せいぜい精霊に食い殺される前に、連絡しろよ」


 そう言うと笑いながら出て行った。


 カイトはベッドに身体を投げ出すと、あの日を思い出していた。

 希望の高校に入学できたのはいいが、入ってみたら勉強の出来るやつばかり。

 中学からそのまま上がってきた奴は、既に高2の授業を受けている。

 追いつくために高校からの編入組の授業速度は速い。


 高校の勉強が受験勉強より厳しいなんて思ってもいなかった。

 カイトは疲れ切った身体でやっとベッドに入った。

 ようやく眠れるそう思った時、あれがおきた。


 いきなり身体が何かに引っ張られるようにどんどん落ちていくのだ。

 そこは何かの祭壇らしく、気がつくと蠢く影が自分を食らい始めた。

 命を啜られるような苦痛。悲鳴をあげるとゆっくりと影はカイトから離れた。


 そして満足そうにこういった。


「確かにこいつは神子だ。この神力があれば、

 あの龍の番に呪いをかけることが出来るだろう」


「ジェイドさま。ではこれは依代になるのですね」


「あぁ、そなたが呪えば、呪う程、こいつの神力が吸われていく。

 龍の番の命が尽きるまでこやつが持てばよいがな」


「それは困ります。呪いが成就しなければ呪い返しがおきる。

 ジェイドさま。こやつの神力を少しでも守る方法はございませんか?」


「あるにはあるが……。」


「それでは罪びとを100人ばかり捧げましょう。」


 次の瞬間カイトの首に銀のチョーカーが嵌った。

 不思議なことに、今まで重く苦しかった身体が楽に動けるようになった。


「そのチョーカーが呪いに必要な神力を調整する。

 こいつの神力は膨大だから、番くらいは殺せるだろう」


 こうして今カイトはここにいる。

 皇子の能力を探ろうが探るまいが、どのみちカイトは死ぬ。

 カイトの神力を少しでも長持ちさせるために龍に近い

 アストラル学院に連れてきただけなのだ。


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