ルーナのお部屋
お父さまとお母さまが、お帰りになってすぐに
私のお部屋はレオニスのお隣になった。
それはきっと、私が正式にレオニスの婚約者になったからだと思う。
思うけれども、なんだかちょっと変だ。
だってこのお部屋は皇太子妃のお部屋の筈なの。
婚約者はまだ皇室の人間じゃないんだから、使うのは違う。
それで私はレオニスにそう言ったの。
そしたらレオニスからお手紙を渡された。
正式な招待状。
皇后陛下からの……。
「レオニスこの招待状、今日のティーパーティーになってる。」
「そうだけど、何か問題が?」
「私は無いけれど、多分侍女たちは違うと思うよ。
主に衣装とかお仕度の面で」
レオニスは本当に女性の事が、分かっていない。
女性の支度には時間がかかるのだ。
「それじゃ、これでどう?」
レオニスはあっという間に自分と私の衣装を変化させてしまった。
「母上から言われてすぐに衣装を準備したんだ。気に入ってくれた?」
「えっと、ありがとう?」
「なんで疑問形なの?」
「うーん。なんでだろう。わからないわ。」
「そうなの?」
なんだか急にレオニスの距離が近くなった気がする。
これは良くない兆候だ。
「レオニス。呼ばれているのは、私だけだと思うの」
「ねぇ、ルーナ。僕は自分の婚約者を
一人きりで母上に会わせる気は無いんだ」
「皇后さまは、そんなに怖いお方なの?」
「まさか、母上はとても優しいお方だよ。
それでもまぁ、一緒にいた方が安全なんだ」
よくわからない理由で
レオニスにエスコートされることになってしまった。
皇后宮のローズガーデンの東屋に茶会の用意がされていた。
一面の薔薇。色とりどり、花弁の形も様々で、見ているだけで楽しい。
あの方が皇后陛下かしら。
テーブルの中央で侍女たちにかしずかれていらっしゃる。
カティシーをしようとしたのに、
レオニスはずかずかと皇后さまに近づくと
誇らしそうにルーナを紹介した。
「母上。僕の婚約者のルーナ・フォン・ヴァレンティノ公爵令嬢です。
可愛らしい方なので、お手柔らかにお願いしますね」
「まぁ、レオニス。貴方の大切な婚約者を虐めたりしませんよ。
よほど姫が大切なのね。」
「ルーナ、これからは私が貴方の母親になるわ。
レオニスが意地悪したら、私に言いなさいね。懲らしめてあげるから」
「はい、皇后陛下。ありがたきお言葉、痛み入ります」
「ルーナ。違うわよ。おかあさま。おかあさまと呼んで頂戴」
「あ、でも、いえ、はい。お母さま」
「よろしい。素直な方ね。これからはお母さまと呼ぶのよ
誓えるかしら?」
まずい!母上の固有魔法は誓いだ。誓ったことは必ず実現する。
「母上、いきなりではルーナも困りますよ」
レオニスが遮ると皇后はにっこりとレオニスを見た。
「レオニス、あなたも婚約者には愛称で呼んでもらいたくないかしら?」
「それは僕もルーナにはレオと呼んでもらいたいですけれど……」
「そうよねぇー。丁度良い機会だわ。私の事はお母さま。皇帝陛下は
お父様、レオニスはレオ。そして新しく兄になったソラはお兄さま
そう呼ぶことにしましょう。」
「は、はい」
「いいお返事ね。誓えるかしら?」
「はい、誓います。皇后陛下」
今度はレオニスも止めなかった。
にこにこ笑っている。
「どうしたの?レオ」
そう言ってルーナは口を押えた。
レオニスと言おうとしてレオと言ってしまったのだ。
恐るべし母上の能力。
こんなところで使う能力ではない筈なのだが。
「心配しないで、ルナ。僕もこれからルーナのことを
ルナという愛称で呼ぶことにするからね。
これでおあいこでしょう。」
何という事だろう。
レオニスはちゃっかりルーナのことを愛称で呼び始めた。
もしかしたら、これを狙って一緒に来たのかもしれない。
あの誓いが皇后の能力だろうとルーナも察した。
レオニスは皇后の企みを知って、ちゃっかり自分もそれに乗ったに違いない。
ともかくこれでルーナは皇帝一家の一員にされてしまった。




