ソラの魔法
今朝のルーナは眠いようだ。
なかなか目を覚まさないが、食事はルーナと食べると決めている。
レオニスの日程はタイトだから、
可哀想でも抱いてモーニングルームまで連れて行く。
「おはよう、お寝坊さん。
お昼寝しても良いから、先に朝食を食べてくれる?」
「おはよう、レオニス。昨日はごめんね」
「おや、少しは反省してくれたの?
危険だからね。もう二度と奥院からは出ないでね。
そうしないと、監禁するかもしれないよ」
冗談めかしてはいるが、目が本気だ。
ヤバいと感じたルーナはにっこりと笑った。
「はい。レオニス。お外に行きたいときはレオニスにお願いするね」
それでレオニスはご機嫌な顔になる。
ちょろい。ちょろすぎる。
ルーナは、自分がにっこりすればレオニスが許すことを学習してしまっている。
今朝はホットケーキ。
ルーナは甘味が好きだから、嬉しそうな顔になる。
「ちゃんとサラダも食べるんだよ。
ホットケーキで糖分をとるから飲み物はミルクだ」
ルーナは聞いてはいない。
嬉々として大量のメープルシロップをホットケーキにかけている。
見ていたレオニスは胸やけしてきた。
ホットケーキがメープルシロップの海に浮かんでいる。
海に浮かぶ孤島みたいだ。
ルーナが食べはじめたのを確認して自分も食事を開始する。
甘味を抑えたパンケーキにベーコンエッグ、サラダに珈琲。
レオニスは珈琲が好きだ。
珈琲をゆっくりと飲むと少しリラックスできる。
香りが好きなのだ。
今日はまだ何も事件は起きていない。
レオニスがしみじみと平和を満喫していると、従僕がやって来た。
かなり青ざめている。
レオニスは覚悟を決めて従僕を近くに呼ぶ。
「報告しろ」
「はい、ご報告いたします。
今朝ソラの魔力覚醒をいたしましたところ
ソラの固有魔法が判明いたしました。
無効化でございます」
聞いたことのない固有魔法にレオニスは怪訝そうな顔になる。
「それねー。魔法を全部キャンセルしちゃうんだよ」
呑気そうな声でルーナが言う。
もしそれが本当なら、
使い方によってはソラはこの魔法大国を揺るがす存在になる。
確認するように従僕を見ると従僕も頷いた。
「既に実験済みです。
私のファイヤーアローも一瞬でキャンセルされて
発動できませんでした。
近くにいた護衛隊長が、緊縛を発動しましたが発動できず。
ソラの力は無効化 キャンセルでございます」
レオニスが青ざめるとルーナは事もなげに言った。
「レオニスの固有魔法でコピーしとくといいよ。
便利でしょう?」
「ルーナ、お前なんで知って……」
言いかけてレオニスは黙った。
ルーナに関しては聞くだけ野暮だ。
「ソラなら大丈夫。
異世界人でも特に平和志向が強い民族だからね。
きちんとした爵位や報酬を与えれば脅威にはならないよ」
「ルーナは彼に爵位を与えろと言うのか?」
「だってどの国も欲しいでしょう?彼の能力。
お父様に頼んで養子にしてもらってもいいけど。」
そう言ってチラリとレオニスを見る。
「レオニスの立場もあるだろうし……」
つまりルーナはソラを俺にくれると言っているのだ。
プロイセン王国では取り込まないと。
「いいのか?」
「だってプロイセン王国がソラを取り込むと
警戒対象になるでしょう?
お義兄さまの従僕って言ったのは、
とりあえず保護してもらうためだし」
アローは目の前で国家機密が話されているので固まっている。
消されるのか俺?
「アローをソラの従僕に下げ渡したらどうかしら?
既にアローを信頼しているはずだし。
来年学院に通うにも従僕はいるでしょう?」
「判った。ソラを父上の養子にしてもらう。ただし皇位継承権は無し。
子供は皇族として扱わない。ソラが結婚するときに臣籍降下させる」
「うん、落とし所はそんなところだと思うわ」
したり顔で頷くルーナにレオニスは言った。
「父上のところにはお前も行ってもらうからな!」




