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皇子さまは今日も最弱娘に振り回される  作者: こもれびの空


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ソラ従僕見習いになる

 空がようやく通路の終わりに差し掛かった時、同じ年ぐらいの

 お仕着せを着た少年が出迎えてくれた。

 目の前に扉があるというのに、ずんずん歩きだす。

 ここまでたっぷりと歩いてきた現代人の空はもうへとへとだ。


「さっきの扉は使わないのですか?」


 思わず言ってしまったら、少年は後ろを振り向きもせずに言った。


「あの扉はレーナ姫の寝室に繋がっています。

 死にたいなら僕は御止めしません」


「そんなに怒らないでくださいよ。死にたい訳ないじゃないですか。

 あのお姫様は皇子殿下の婚約者なのですか?」


「レーナ姫はいずれ皇国の皇后となるお方。

 みだりにお名前を口にせぬように。

 あなたが、生きているのは、姫様がそれを望んだからです。」


 空はもう何も言わないことにした。

 ここは、身分差がある世界。

 現代の感覚で話をしたら、不敬罪とやらで殺されるかもしれない。

 もともと聡い空はきちんと自分の立場をわきまえた。


 空が態度を変えたのを察した少年は、少し歩く速度を落としてくれた。

 空がもう限界なのをわかっているらしい。

 最初の扉から30分以上歩いて、ようやく空は建物の中に入ることができた。

 そこは食堂らしく、人々がせわしなく出入りする。


「そこのトレーの上にプレートとカトラリーを置いて、あの列に並べ」


 空は言われた通りにする。

 列が進むと、トレーにスープが入ったボウル、珈琲、パン。

 プレートに卵料理、サラダ、ソーセージ、チーズが入れられた。

 かなり豪勢だ。


 トレーを持ってきょろきょろしていると、

 先ほどの少年が手を挙げて招いてくれた。

 自分もちゃっかり料理を持ってきている。


「ありがとうございます。随分豪華な食事ですね」


「しっかり食べないと働けないからな。俺はアロー。お前は?」


「僕はソラと言います。9歳です」


「そうか、同じ年齢だな。だから殿下は僕を選んだのか。

 僕は従僕。平民出身で貴族に仕えるものだ。身分は貴族に準じる。

 主人の行く場所に供をする必要があるからな。

 ほとんど、平民が入れない場所ばかりだから。」


「つまり準貴族なのですか?」


「そうだな。文官だから。武官なら騎士と呼ばれる。

 従僕から従者、試験を受けて正式な文官になることも、

 側近として秘書官を目指すこともできる」


「どうして僕にそんな説明を?」


「とりあえず、お前は従僕になるらしいからな。

 俺がお前に従僕として必要な技術を教える。

 期間は3カ月。

 合格しなければ、城から放りだされるぞ。」


「どうして俺が従僕に?準貴族なんでしょう?」


「姫様が、義兄上に仕えさせると決められたんだ。」


「その義兄上と言うのは?」


「姫様の一番上の姉の婚約者だ。将来のヴァレンティノ公爵だな」


「凄い出世ですね」


「いや、もとはプロイセン王国の第2王子だからな。

 兄が王太子になったときに公爵家に臣籍降下された方だ」


「もとは王子! あの姫様の縁者って凄い人ばかりですね」


「あぁ、2番目の姉は我が国のフィクトス公爵家公子の婚約者だからな」


 空は仰天した。

 その彼女と間接キスしたなんて知られたら、

 俺は首と胴体が泣き別れになるだろう。

 くわばらくわばら。

 そう呟くと、アローがギロリと睨んだ。


「お前、今よからぬことを考えていないか?」


「まさか!めっそうもない」


 空が首を振るとアローはにやりとした。


「お前、魔法が使いたいんだろう? この後、魔力の検査がある。

 楽しみにしていろ」


「はい!」


 ソラは初めて嬉しそうに笑った。

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