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皇子さまは今日も最弱娘に振り回される  作者: こもれびの空


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落ち人の少年

 ルーナは困っていた。

 今回も隠し通路探索中に回収されてしまったからだ。

 どうしても見つけないといけない。

 昼間寝てしまったせいで、眠くない。

 だったら、動くのは今しかない。


 密道は壁にぼんやりと光る魔石が組み込まれているから、

 探索に支障はない。

 枕元には水差しがあるから、これを水筒に入れて持っていけばよい。

 脱水症になると倒れる。


 さすがにルーナだって学習済である。

 早速ルーナの部屋のクローゼットの裏から迷路へ。

 なんども探検と図書館の資料を読み返し

 さすがの方向音痴も、行く先のメドはついていた。

 今回は最短距離で行ける筈。


 上に登る垂直の階段を、しっかりと手すりを握りしめながら登っていく。

 大丈夫。下さえ見なければ怖くない。

 天井に丸い蓋があった。

 ぐっと押し上げると、むわっとした空気と、夜のとばりが降りて来た。


「うわぁー、真っ暗」


 しばらくじっとしていると、月明かりに慣れてきて見えるようになる。

 お月様がいて良かった。

 ルナは少しづつ辺りをみまわした。

 絶対にこのあたりに落ちるはずなのだ。

 昨日、遅くとも今日のお日様が上がる前には……。


 そこに一瞬青い光が辺りを照らす。


「うー、くっそう!一体何なんだよ。ここは?」


 子供の声が聞こえてきた。


「良かった。間に合った」


 ルーナはほっとした。

 ルーナの計算したとおりに異世界から人が落ちて来た。


「大丈夫?」


「大丈夫じゃないかな?真っ暗じゃないか?どこの田舎だよ」


「夜だから暗いのはあたりまえでしょう?それとも異世界では違うの?」


 急に男の子が立ち上がってルーナに掴みかかった。


「おい、まさか異世界転移じゃねえだろうな。お前が召喚でもしやがったのか?」


「痛い!放してよ。違うわ。私は今夜、落ち人が落ちると思って……」


 男の子は手を放してくれた。


「とにかく話ぐらい聞いてやるから、とっとと話やがれ」


 なんだかおっかない男の子だ。

 ルーナはここに来たことを後悔し始めている。


「そんなに偉そうなら、私こそ放といたら良かった。

 落ち人って惨い目にあって落ちてすぐ死ぬ確率が7割だから

 助けてあげなきゃと思ったのに」


「おい、待てよ。怒鳴って悪かったよ。

 見捨てるなよ。俺、もしかして死ぬかも知れないのか?」


「だって、ここは貧民街だもの。

 そんなところに異世界人なんて落ちてきたらまず助からないでしょ?」


「とにかく、ここは危険なの。話がしたいなら私について来て!」


 ルーナは先ほどの穴の前に男の子を連れてきた。


「私から先に降りるから、あなたは、降りたらすぐに蓋を戻すのよ。」


 そう言って。ルーナはおり始めた。

 上の方でなにやら、ガタゴトと蓋と格闘しているらしい音がする。

 ルーナの力では閉められないのだから、仕方がない。

 ガタンと音がして蓋が閉まったようだ。


 一番下まで降りてルーナはひと息つくことにした。

 水を取り出して半分飲むと、残りを男の子に渡す。


「お前、これって間接キス……なんでもない。くっそ!」


 ぶつぶつ言いながら男の子が水を飲んだ。

 ルーナは少年に説明した。

 ここは、アストラル皇国という国で、

 今は皇城の中にある秘密の抜け道にいること。

 

 ルーナはプロイセン王国の公女で、

 今はアストラル皇国の客人として皇城の奥院に住んでいること。

 そして本を読んで秘密を調べるのが好きで、

 今夜落ち人が落ちると思ったこと。

 落ち人は保護者がいないと、

 すぐ死ぬほど虚弱な場合が多いこと。


 「マジかぁー。 魔法とか無いのかよ。定番だろ。

  異世界人が天才的魔法使いというパターン」


 「魔法ならあるよ。あなたも魔法使いなの?」


 「わかんねぇけど。今までの落ち人は魔法使えなかったのか?」


 「魔法が使える人は、生き延びて大魔法使いになっているわよ」


 「やりぃー。やっぱそう来なくっちゃ。そう言えば名前聞いてないな

  俺は守屋 空。守屋が姓で空が名前」


 「本当に、異世界人って、名前の順番が逆なのね。

  私はルーナ・フォン・ヴァレンティノ公女よ」


 「へー公女様ってことは、おとうさんは公爵なのか?

同じ年ぐらいか?俺は12歳 中学に入ったばかりだ」


 「あら、異世界人は幼く見えるって本当なのね。私は6歳よ」


 「いくら何でもありえないだろ、それ。

  一年は何日だ?一日は何時間?」


 「一日は20時間。ひと月は20日。 

  一年は20か月。当たり前でしょう?」


 「当たり前じゃねえよ。1日は24時間。ひと月はバラバラで、

  一年は12か月で365日だ」


 「どうしてそんなにバラバラなの、十進法をしらないの?

  一時間は100分。もしかしてそれも違うの?」


 「こっちじゃ1時間は60分だ。10進法はこっちでもあるんだけど」


 「ちょっとまて計算するから。

  お前の世界なら一年は100×20×20×20は800000分

  俺の世界は60×24×365で525600分

  お前の方が1年で273400分年を取っている

  割合でいうと1:1.5 俺はこの世界なら大まかに9歳。 

  それなら年相応だろう?」


 「計算早いわねー。それじゃ誤解を避けるためにも

  これからは9歳って言った方がいいわ。

  平民の魔力持ちは10歳で学園に通うから」


 「10歳か。俺たちの世界なら15歳で入学だな 卒業は?」


 「卒業は15歳よ」


 「成る程、15で入学22歳ぐらいで卒業。

  つまり高校から大学まで学ぶイメージか?

  高等教育が行き届いているんだな」


 「それは、魔力持ちだけよ。魔力は勉強しないと危険だから。

  魔力の持たない平民は10歳で徒弟として

  親方のところで修行して15で一人前よ」


 「魔力持ちってこの国じゃあ、どれくらいいるんだ?」


 「この国の民は、ほとんど魔力持ちよ。

  魔力を持たない子供は10歳になると

  他国に修行にでることが多いから」


 「良く分からないけど、この国は魔法使いの国で

  魔法を使えない人の国もあるってことか?」

  

 「良く分かってるじゃない。この国では魔法を持たないと暮らせない

  さっきの貧民窟は魔力がない人たちなの

  この国では仕事が少ないから。

  他国の仕事を斡旋してるけど、それでも残る人はいるの」


 「それじゃぁ、お前は……」


 空は痛ましそうにルーナを見た


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