第3話 大人は嘘をつくのがうまい
カイト伯父さんは照れ臭そうに笑い出した。
「まあ、いいや。さっきの話に戻るけどさ、結婚を考えている彼女はドンくさい女だ。でもな、その不思議な女に似ていて、家族を大切するタイプだ。まあ、俺も40歳超えているから、そろそろ一緒に道を歩める女を選ぶ事にしたよ。なあ、オフクロいいだろ?」
私に似た女を選んだのか? なんか恥ずかしくて嫌だなあ。
キョウコお婆ちゃんはため息をつく。
「まあ、もういい大人だから自由にしなさい。それよりも、今日は見たいテレビあるのよ。ほら、カイトが出ているらしいじゃないの?」
そう言って、テレビのリモコンをつけた。
画面にはバラエティー番組で映画の番宣をしており、色々な俳優や女優が出てきてトークを盛り上げていた。カイト伯父さんや桜井シンジも共演していた。
MCがシンジに色々な質問をした。
「シンジくん、今回の作品は喧嘩シーンとかあるみたいだけど、学生時代は喧嘩とかするタイプだったのかな?」
「ええ、そこそこヤンチャでした。喧嘩も強かった方かな? アハハ、お恥ずかしい思い出です」
「地元の子の情報によると、中学時代は鼻を折るような喧嘩もしたみたいだね。どんな相手と喧嘩したの?」
その質問にシンジは早口で喋りだした。
「えーと……。とっ、当時の彼女が暴走族に絡まれていて、それを助けようとして喧嘩になりました。えっ、えーと、相手も3人いたので大変でした。でっ、でも、なんとか勝ちましたよ」
すると、スタジオから女性の黄色い声が飛び交う。
「シンジ、カッコイイィー」
「シンジ、優しいぃー」
やっぱり、世間の女からは人気があると思った。
しかし、それを見ていたパパとママは鼻で笑っていた。そりゃそうだろう、実際にパパとママに絡んで来たのはシンジなのだから……。あの事件以降、シンジはパパとママに手を出さなくなったらしい。
おそらく、カイト伯父さんが怖いのもあったけど、パパに喧嘩で負けた事を誰にも知られたくなかったのだと思う。みんなに知られたら、学校での地位が底辺まで落ちてしまうからだ。そう、プライドの高い男なのだ。
MCは手に持った紙を見て驚く。
「あれ? シンジくんとカイトさんは地元が一緒ですね。2人はお互いの面識はありましたか? 実は不良同士で喧嘩したとか?」
シンジは恐怖を思い出したのかオドオドと答えていた。
「あっ、ありません」
それを見たカイト伯父さんは鼻で笑っていた。シンジはママを襲った過去があるので、カイト伯父さんには一生頭が上がらないだろう。
それはともかく、カイト伯父さんが結婚出来そうで良かった。あれだけいい加減な男でも、きっかけがあれば変われるものだ。そのきっかけが過去の私だというのも変な気分だ。しかし、大人って嘘つきを鼻で笑って嫌な感じだな。
そうだ、私もたまには鼻で笑ってみたいものだ。
「ねえ、パパとママって、いつファーストキスしたの?」
さて、2人はどう答えるのか? お手並み拝見だ。
すると、2人はお互いの顔を見て苦笑いをした。
「俺の記憶では結婚式の時だったよ。ねえ、リコ」
「うん、結婚してからだね……」
私は両親の嘘を鼻で笑ってやった。2人とも嘘をつきやがって、中学生でファーストキスをしたのを知っているぞ。
しかし、大人は嘘をつくのがうまくないと生きていけないのだ。そのうち、私も嘘をつく大人になっていくのだろう。だけど、それは優しさでもあるのだ。




