第43話 さようなら、1997年
ママがパパに駆け寄った。
「テッペイ大丈夫か?」
「なんとかね……」
そうは言っても、パパの額からは血が出ていた。
ママはハンカチを取りだして、優しくパパの額を抑えた。
「まったく、無茶しやがって」
「リコ、ありがと……」
「テッペイ、こっちに来いよ。手当してやるよ」
ママはパパの手を引っ張って、賽銭箱前の石段に2人並んで腰を下ろした。お互いに肩が触れ合って、公園のベンチデートのようで良い雰囲気になっている。
私は最後にパパに後押しをした。
「ねえ、テッペイ。リコに言いたい事があるでしょ?」
「うん」
パパはママの顔を見て告白した。
「俺はリコが好きだ」
「アタシもテッペイが好き」
すると、2人は顔が真っ赤になり、お互いの目を見つめ合っていた。なんか、初々しくてカワイイと思った。とにかく、両想いのグッドエンドだし、これで未来へ帰れるはずだ。
それにママにとっては最高の誕生日になっただろう。だから、この幸せな瞬間を一生残してあげたいと思った。
そうだ、写真で残せばいいか……。
「リコ、カップル誕生の記念写真でも撮ってあげるよ。それが私からの誕生日プレゼントだ」
「それはいいけど、カメラ持っているのかよ?」
「あっ……。持っていないや、アハハ」
ママは自分のバッグから、インスタントカメラを取りだして渡してくれた。
「じゃあ、これで撮ってくれよ」
「これってどう使うの?」
「マジかよ、本当に女子中学生かよ?」
ママの説明によると、ボタンを押すだけ撮れるらしいけど、その場で画像の確認が出来ないポンコツカメラみたいだ。この時代の人は写真を撮るのに緊張しただろうな。まあ、適当に撮ってやるとするか……。
そこでママが助言してきた。
「あと、1枚しか撮れないから失敗するなよ」
「ええっ? 変なプレッシャーかけないでよ」
私はレンズを覗くと、画面が小さくて見づらいと思った。
「2人とも笑顔でピースサインをしてよ、3秒後に撮るからね。3・2・1・ハイチーズ」
私はシャッターを切った。ママは笑顔だったように見えたが、パパのダメージは大きいらしく、笑顔ではなかった気がした。まあ、カップルになったからどうでもいいや。
なので、適当に持ち上げておく。
「2人とも笑顔で撮れたよ」
しかし、ママが疑いの目を向けてきた。
「本当かよ? テッペイが痛そうな顔をしていたけど……。これって、私がテッペイをイジメてる写真に見えね?」
まあ、確かにそう見えなくもないけど、本音を言ったら殴られそうだし、適当に褒め殺しでいくしかない。
私はニコニコしながら笑顔を作った。
「いや、最高のカップルに見えるよ。美男美女で羨ましいなあ」
すると、ママは頭を掻きながら、口元を緩めてニヤニヤしている。もはや、単なる恋する乙女でバカになったのかもしれない。
パパはママにミサンガを見せた。
「リコ、ごめんな。プレゼントしてくれたミサンガだけど切れそうだわ。さっきの喧嘩で地面に擦れまくったみたいだ」
「大丈夫、また作ってあげるよ」
「いや、これは一生の宝にするつもりだ」
ママは嬉しそうにパパのミサンガを手で触れた。
すると、お互いの手が触れた状態になり、ママからパパにキスをした。
「テッペイ、ありがとう」
「うっ、うん」
両親のキスを目の前で見たら、こっちの方が恥ずかしくなってきて、この場から消えたくなってきた。
それから、パパはポツリと呟いた。
「あっ、ミサンガが切れちゃった」
その瞬間、パパのミサンガが光に包まれた。未来と共鳴したのか、私が身に着けているミサンガも光りだした。これはタイムスリップした時の光と同じだった。パパとママはこの光景に驚いていた。
そして、同時に言葉を発したのだ。
「トキコが光っている?」
どうやら、私の身体全体が光っているようだ。すると、徐々に景色が光に包まれて白くなっていく。
私は何故か感覚で分かったのだ。そう、2017年の世界へ戻れるのだと……。じゃあね、若い頃のパパとママ、2人で仲良くやるんだよ。それから、私の目の前は真っ暗になった。
第2章完結です。
もう少しだけ続きます




