第41話 パパ vs 桜井シンジ
私の横にいるパパがシンジ向かって走り出し、そのまま右足を掴んでタックルした。2人はバランスを崩して地面に倒れた。
その攻撃にシンジが激動した。
「ふざけやがって、時空院のくせに調子に乗りやがってぇー」
「お前こそ、女に手をあげるなぁー」
「うるせー、ザコ。さっさと、俺の黄金の右足を離せやぁー」
シンジはなんとか振りほどこうと、パパの頭をボコボコと蹴る。しかし、パパはシンジの右足をガッチリと掴んで離さない。
シンジは構わずに蹴りを続ける。
「さっさと放せよ、このザコがぁー」
「うるせー」
あまり、カッコイイ喧嘩ではなく、お互いが地面でバタバタ暴れている感じだ。それでも、パパがママを守りたい気持ちは伝わってきた。
シンジは左足でパパの顔を蹴り上げると、眼鏡は吹っ飛んでいった。パパは掴んでいた右足を離してしまい、顔を両手で抑えて地面にうずくまる。
逆に怒りの形相でシンジは立ち上がった。
「クソ、どいつもこいつも、この俺を舐めやがってぇー。俺はお前らみたいな弱者とは違うんだぞぉー。弱者は素直に強者に従えばいいんだよ、ボケ」
パパも鼻血を垂らしながら立ち上がった。
「シンジ、弱者はお前だよ。さっさと、この場から消えろよ……」
パパは強気であるが、いまにも倒れそうな状態である。
シンジはパパに向かって、素早くパンチを放つ。パパはモロに顔面で受け止めて、フラフラな状態に追い込まれるが、反撃のパンチをシンジに繰り出した。
しかし、眼鏡がないので見えていないせいか、まったく的外れな場所に攻撃をしていた。だから、パパのパンチはかすりもしない。もう、だめだ……。パパが死んじゃうよ。
私はカイトに助けを求めた。
「カイト、助けてよ」
「ハハハ、若いっていいよな。それによ、男には戦わないといけない時があるのさ。テッペイは今がその時だよ。納得がいくまで戦わせてやれ」
何を漫画みたいな事を言っているのか……。大体カッコつけて死んだらどうする? それに死んだら、告白も出来なくなるし、何よりもパパの命の方が大切に決まっている。
もう、私が助けるしかない状態だが、シンジみたいな男子に勝てるわけがない。でも、私もあの2人の子供だから、シンジ相手に向かっていけるはずだ。そうだよ、後は覚悟を決めるだけだ。
何か武器がないか? すると、自分の肩にかけているバッグに気が付く。バッグにはゲーム機や漫画が入っており、これを振り回したら、鉄球のような武器になるはず。
私はバッグを両手で空高くあげて、シンジに向かって走り出した。
「パパとママをいじめるなぁー」
もう、やけくそだった。だけど、この行動が奇跡を起こすのであった。
私はいかにも運動神経が悪いような走りをした。そのままシンジに向かって、バッグを空高く上げて、振り下ろそうとしていた。バッグの中には色々と入っているし、多少のダメージは与えられるはずだ。
私はバカみたいな奇声をあげながら、全力でバックを振り下ろした
「おりゃあー」
しかし、私とシンジの間にパパが入ってきた。おそらく眼鏡がなくて、自分が何処にいるかよく分かってないのだ。
私は勢いを止める事が出来ずに、パパの頭にバッグを振り下ろしてしまった。敵のシンジではなく、パパにダメージを与えてしまって、早くも後悔の念が込み上げてきた。
バカ、バカ、バカ、私って本当にバカ……。だから、いつも何も行動したくなくなるのだ。パパは自分に何が起きたか分からず、バッグのダメージで足元が更にフラフラになる。まるで、タコ踊りのようで、動きの予測がつかないので、シンジも困惑していた。
それから、パパは地面にある小石に躓いて、シンジに向かって勢いよく倒れていく。その結果、パパの頭とシンジの顔面が正面衝突した。いわゆる頭突きであり、凄い衝撃音にビックリしてしまった。
私はシンジの顔を見ると、形の良かった鼻が曲がっており、そこから鼻血がドバドバと流れた。
その状態にシンジがパニックになっていた。
「あっ、あっ……。俺の、俺の鼻が……」
涙と鼻水と鼻血でイケメンが台無しだ。
そして、地面に座ってメソメソと泣き出したのだ。
「なっ、なんで、この俺が……。こんな目に……。うっうう……」
パパはゆっくりと立ち上がって、その光景を見下ろしていた。
どうやら、パパが勝ったみたいだ。




